本当の自由










ベポ達の方から大きな崩れるような音がした。
アメリもいるから心配だが、アイツらを信じるしかねえ。
俺は目の前のコイツを倒すだけだ。
早くガラクタ屋の手当てもしてやりてえ。



「ほお〜う……まだ随分と元気じゃねェか。だったら、
てめえにさらなる絶望ってやつを教えてやるよ」



そう言うと、バッカは大きく息を吸いこんだ。
俺はやつの棍棒が届く範囲の外にいる。
攻撃は届かないはずだ。



「Wデロデロの実Wの能力を舐めるなよ、小僧!
こいつで死ねい!Wすべてを溶かす愛(メルティラブ)W!!」



瞬間、バッカの口から青白い光線が放たれた。



「くっ!」



身体を強引にねじるようにして、光線をかわした。
 背後を見ると、壁には大きな穴が空き、
石材の部分がジュウジュウと音を立てている。



「ゲッパッパア!俺のWすべてを溶かす愛Wは、
強酸を吐き出しすべてを溶かす光線だあ!
はあ……てめえは、いつまでこれをかわせるかな……?
Wすべてを溶かす愛W!!」



もう一度バッカは息を吸いこんで、光線を吐いた。 
俺に向かって一直線に飛んでくるそれを、
横に跳ねることでよける。



「Wすべてを溶かす愛W!Wすべてを溶かす愛W!Wすべてを溶かす愛W!!」



連続で放たれる光線。俺の方はよけるだけで精一杯だ。



だから──「終わりだ」
──バッカが接近していることにも、気づけなかった。



「ゲパアアアアアッ!!」



棍棒で横殴りにされ、
そのまま俺は壁際まで吹っ飛ばされた。



「がっ……は……」



思いっきり、胸を殴られた。
まともに呼吸ができない。手足にも力が入らない。
ああ、こうやって寝転がってると、
心臓の音がうるさいくらいに聞こえてくる。
心臓の鼓動、血液が流れる音、呼吸音、
身体を流れるかすかな電気。 ……電気?



「ぜはあ……ぜはあ……おしまいだなあ、小僧!
所詮、お前とは踏んできた場数も覚悟も違うのさ!
ここからだ!潜水艦を大金に換え俺は偉大な海賊となる!
くだらねェ愛やら正義やらを、
こうやって踏みにじりながらなあっ!!」

「……よお」



ささやくような声で、俺バッカに問いかけた。



「それが、お前が目指す海賊なのか……?」

「あん?そうさ!奪い、殺し、支配する!
それこそが海賊の在り方だ!自由に生き!
自由に殺す!最高じゃねえか!!」

「それが、お前にとっての自由なんだな」

「あん?当たり前のことを訊くんじゃねえよ。
欲望のままに生き!欲望のままに食らう!
これが自由でなくてなんだ?おれは強い!
強いからこそ、欲望をすべて実現させることができる!
偉大な海賊ってのはそういうもんさ!」

「そうか」



不思議と、おれの心は凪いでいた。
殺されることへの恐怖も、バッカに負けることへの不安も、
今はまったく感じない。
ああ、おれは勘違いしていたらしい。
たしかにこいつには、覚悟がある。
「今」抱えている欲望を
何がなんでも叶えようとする覚悟がある。
そのことに、おれは気圧されていた。
コラさんの本懐も、自分のやりたいことも、
全部を「いつか」と後回しにしていた自分が
バッカに劣っていると感じていた。

けど、そうじゃねェ。

「今」だろうが「いつか」だろうが、
そこにW本当の自由Wがなければ、なんの意味もないんだ。
俺はまだ、自由が何かを知らない。
はっきりとした理想を持ってるわけじゃない。
それでも。コラさんが俺に祈った自由が、
バッカの言うようなくだらないものじゃないことを
知っている。人を踏み潰して、
自分の欲望のおもむくままに動くような真似が、
W本当の自由Wに繋がらないことを知っている。
ようやく、俺は覚悟を決めることができた。

──目の前の敵が口にする薄汚い自由を、
ぶっ潰すっていう覚悟が。
呼吸を落ち着かせ、俺は立ち上がった。



「おお〜う?最後の悪あがきかあ……いいぜ!
てめえの望み通り!完全なとどめを刺してやるさ! 
ゲッパッパアッ!!」



俺はバッカの方に身体を向けた。
相手はすでに攻撃体勢に入っている。



「神様にでも祈っておきな!Wすべてを溶かす愛W!!」



バッカの口から光線が放たれた。
けれど恐れる必要はない。
この場所はまだ、おれのWROOMWの範囲内だ。














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