豪雨









「え!マイキー来れなくなったの!?」

「うん。用事らしい。」

「せっかく瀬里奈の浴衣姿見れるのに!」



8月3日お祭り当日
待ち合わせの場所に向かう途中
ペーから呼び出されて
そっち行くからお祭りはいけなくなったと
マイキーから連絡があった。

瀬里奈はエマとヒナの3人で浴衣を来て
ドラケンとタケミっちの元へ向かっていた。

白地に水色と紺の繊細な菊模様の浴衣に
帯も柄と同色の水色と青色で下駄を履いて
髪は珍しくアップにしていた。
三つ編みやらお団子やらエマに好き勝手やられた。



「カップルの邪魔しちゃアレだし、やっぱり帰るよ」

「えーせっかく綺麗にしたのにっ」



エマが不機嫌そうにプクーっと頬を膨らますと
瀬里奈はクスッと笑って長い爪をエマの頬に突き刺す。
エマは痛いって言ってまた怒るけど
その反応が面白くて瀬里奈は笑ってた。



「じゃあ、一人で一周して途中合流するよ。
せっかくエマが可愛くしてくれたもんね。」

「ナンパされたらどーすんのさ!」

「大丈夫でしょ。」

「あ!ちょっと!瀬里奈!」



瀬里奈はエマが引き止めるのをかわして
人混みの中へ消えて行ってしまった。



「瀬里奈ちゃんって自由だね…(汗)」

「マイキー以外興味が無いんだよもうっ」

「愛されてるんだねマイキー君」

「……それはタケミっちにも言える事でしょ?
ドラケンも!今からこんな浴衣美人が会いに行くんだから!」

「アハハ!そうだね」



エマ達はそう言ってドラケンとタケミっちの元に向かった。













瀬里奈は一人で路面店を見ながら
適当に歩いてさっき買ったリンゴ飴を齧る。
今にでも虫歯になりそうな甘さが広がり
一個を一人で食べるのが無理そうになった。



「マイキーがいたら分け合えるのになぁ…」



そんな事をポツリと言うと
頭に水滴が落ちて空を見上げると
雨が一気に降り始めた。

急な豪雨に周りが騒がしく慌てる中
瀬里奈は冷静に、いや呆然と立ち尽くした。

しっかり纏められた髪と浴衣に雨が染み込み重く
まだ半分も食べていない飽き始めたリンゴ飴は
雨水で周りがコーティングされてしまった。
あまりにも理不尽な天候にもう諦めていた。



「飴…300円もしたんだけど…」

ピリリリリ!!



携帯が鳴り、エマに買わされた巾着から取り出すと
マイキーからの着信で直ぐに出た。



「マイキー どうした?」

『瀬里奈 ドラケンいる?』

「ドラケンならエマとデートだよ」

『ペーに呼び出されたんだけど来なくて、
もしかしたらドラケンのトコかと思ったんだ』

「アタシもドラケン探してみるよ。
エマやヒナが巻き込まれてたら危ないし」

『分かった。俺もすぐそっち向かう』

「うん。」

『瀬里奈 無茶すんなよ』

「マイキーにはドラケンが必要なんでしょ?
なら、アタシも守るよ。」

『せ、』


瀬里奈はそう言ってマイキーが何か言おうとしたが、
通話を切ってリンゴ飴を捨てて下駄で走り出した。













ーーーーーー…*°





「ドラケン!!」



ドラケンはエマと傘を差して帰ろうとしていた。
然し、特服を着てタスキまでかけたペーに呼び止められると
深刻な表情をしている彼にドラケンは察して
傘をエマに渡して離れてろと伝えた。



「ペー お前はやっぱ納得いかねえか…」

「……」

「俺が気に入らねえんだろ?タイマンか?買ってやるよ。」

「ドラケン!!」

「!?」



ドラケンは背後から現れた愛美愛主の残党に
バットで頭を殴られて流血したが、
襲って来る愛美愛主の奴らを相手にした。

エマは離れたところで見ている事しか出来ず
泣きそうな目をしていた。
血を流しているから反応が鈍る。
ボーッとしてフラついて立つのがやっと。
疲れてきた。そんな時に



「ドラケン君!」



タケミっちと三ツ谷が合流した。



「おう 三ツ谷…タケミっち」

「タケミっち!三ツ谷!!」

「エマちゃん」

「ペーやん!テメェ!!
何愛美愛主とつるんでんだよ!」

「うっせえ三ツ谷 てめェも殺すゾ」

「ペーやん卑怯だよ!!
後ろからバットでいきなり殴って!
こんなに大勢連れてきて それでも男!?」

「あーーー疲れたぁ」

「ドラケン君!大丈夫っスか!?」

「流石に20人が限界か…あとは頼むぞ…三ツ谷」

「おう。」

「てめェら二人で敵うと思ってんの?」

「ウッセェボケ」

「三人まとめて やっちまえ」



タケミっちがゴクリとツバを飲み込むと
バブーッとバイクの音がする。
特徴的なこの排気音は、



「マイキーの"CB250T(バブ)"だ。」



ペーと愛美愛主がどよめくと
排気音がさらに大きくなり
水飛沫を散らしてマイキーが現れた。



「マイキー君!!」

「マイキー…!!」

「(瀬里奈がいない…)…なるほどね。
俺を別のとこに呼び出したのは ケンチン襲う為ね。」

「え?」

「で、俺のせいにして"東卍"真っ二つに割っちまおう…と」

「俺はただパーちんを!!」

「これはお前のやり方じゃねえ!
誰に。そそのかされた?」



ペーは答えず黙っていると、



「へー意外。マイキーって頭もキレるんだね。だりぃ。」



後ろから煙草を吸いながら190cmはあるだろう
手の甲に罪と書かれたタトゥーを彫った長身の男が現れた。



「誰?」

「オレが誰とかどーでもいいけど、
一応今 "仮"で愛美愛主仕切ってる半間だ。」

「お前が裏でネチネチしてるキモ男?」

「面倒クセェなぁマイキーちゃ、ん」



マイキーの蹴りを半間は受け止めた。
それが滅多にない事だから
ドラケンや三ツ谷も驚く。



「そんなに急ぐなよマイキー 痛ってー
俺の目的は"東卍潰し"。かったりぃから内部抗争っしょ。
でも結果オーライかな。
これで無敵のマイキーをこの手で、
ぶっ殺せるからな!!愛美愛主総勢100人!!
東卍4人相手だ!前みたいにヒヨんじゃねえぞテメェら!!
俺は長内みたいに甘くねェからよ!」

「「「「「ウッス!!」」」」」

「逃げたら追い込みかけて
歯ぁ全部なくなるまでボコるからな!?」

「「「「「………ッ!ウッス!!(汗)」」」」」

「マイキーもドラケンも、まとめて皆殺しだあ♡」



するとまたバイク音がして東京卍會も集う。



「内輪揉めは気乗りしなかったけどよぉ」

「愛美愛主相手なら思いっきり暴れられんじゃねーかよ!?」

「結果 今日が決戦になっただけの話」

「お前ら…」

「東京卍會勢揃いだバカヤロウ」

「どいつから死にてえ!?」

「ペー!てめェはまず殺す!」

「くっ…!(汗)」

「楽しくなってきたじゃんかよ。」



タケミっちは未来から未来を変えに過去に来た。
でも結果 未来で聞いた話とは違った形で
東京卍會は抗争を起こしてしまう。
その事に混乱して焦っていると
頭からの血が雨によって流れ落ちるドラケンも立ち上がる。



「祭りの日に大乱闘…血が踊るじゃねえかよ」

「ダメだ…」

「なあ?マイキー!!」

「ハハ 行くぞオラァ!!!」

「やっちまえ!!」













ウォオオオ!!!

「………マイキーのバブが聞こえた。
愛美愛主との抗争も始まった…」



瀬里奈は神社の屋根で煙草を吸っていた。
目の前には褐色の肌に金髪の男が立っており
雨に打たれて仁王立ちで構えている。



「君がやりたい事は分かったよ。
でもゴメンね。ドラケンは守らなくちゃ。
マイキーがそうしたいらしいから。」

「……マイキーはこの先絶対必要な男になる。
ただの暴走族で終わるような人じゃない。
ドラケンは邪魔だった。半端もんにさせるから。
俺が影となって輝かせる事でマイキーは月になる。」

「…………何様?」



瀬里奈はカンに触ったのか冷たく見つめる。
然しまた直ぐ柔らかい表情に戻る。
その温度変化が不気味なくらいなのに
目の前の男は動じなかった。



「……そこまで言うなら、
君が求める影を濃くしてあげてもいいよ。
態々話したのはそれが理由だと思うけど。
君 アタシの周り沢山調べたでしょ?」



瀬里奈は携帯を取り出して
ある番号を向かいの男に伝えた。



「君がこの先どうなるのか知らないけど、安心して。
君がいなくてもマイキーは輝くよ。
その先に君がいるかいないか、それだけ。」



瀬里奈はそう笑って男の横を通り過ぎた。