リミッター








ドラケンが病院に着く頃には心配停止の状態だった。

エマはヒナに泣きついて瀬里奈もエマの背中をさする。
タケミっちやあっくん達も不安で立ち尽くしていると
三ツ谷とペーも駆けつけてきた。

そして状況を説明していると、



「タケミっち」

「マイキー君 ドラケン君が!」

「聞こえてたよ 待合室どこ?」

「マイキぃぃ(泣)」

「マイキーっ!」

「マイキー!!俺……!!(汗)」

「皆んなうるせえよ。病院なんだから静かにしろ。」



そう言ってマイキーは椅子に座った。



「……ケンチンはさ、
昔っから言った事は絶っ対ぇ守る奴なんだ。
こんなトコでくたばんねぇよ。
そんな不義理絶っ対ぇしねえ。
アイツ 俺と天下取るって約束したからな。
だからエマ。三ツ谷。ペーやん。タケミっち。
ケンチンを信じろ。」



マイキーがそう言うと皆んなが自信を取り戻し
静かに手術が終わるのを待った。

しばらくジッとして瀬里奈もエマに寄り添った。
そして手術中の点灯が消えて一斉に立ち上がる。



「……一命は取り留めました」

「へ?」

「手術は成功です。」



皆んな大声で喜び、
外にいる東卍メンバーにも知らせにいく。
然しペーは足が止まる。



「ペーやん君?」

「俺…は…皆んなには会えねえ……」

「……ペーやん。お前がパーちん思って
やっちまったって事は皆んな分かってくれるよ…」

「三ツ谷…」

「でもな!ペーやん。
一番パーちんの事考えてたのはドラケンだかんな。
ドラケンはあれから毎日
パーちんの親と一緒に面会行ってんだ。
親族しか会えねえのに差し入れ持って
面会中はずーっと一人で外で待ってさ!
そんなドラケンをお前はハメたんだ!」

「ドラケン…(汗)」

「ちゃんと謝れよ。ドラケンにもパーちんにも皆んなにも…」

「……うん…!」

「おかえり ペーやん」



三ツ谷や東京卍會はペーやんを見捨てなかった。



外に出ると雨が上がって8月4日に日付が変わっていた。
これでタケミっちのミッションは成功する。
三ツ谷が皆んなに知らせて皆んなが喜ぶ中
タケミっちはマイキーがいない事に気づいて
探し回ると何もない建物の影にマイキーがいた。



「マイーー…」



声を掛けようとすると、
マイキーはズルズルと地べたに尻をつき、
顔を手で覆って涙を流してホッとしていた。

本当は不安でいっぱいで怖かった。
それでも総長だから気丈に振る舞った。
そんなマイキーの強さと弱さをタケミっちは知った。



「心配させやがって…」



タケミっちが話しかけられず隠れていると
瀬里奈がタケミっちの肩を掴んで身を引かせ
マイキーの元へ歩み寄った。

そしてしゃがんでマイキーに抱き付くと
マイキーも縋るように抱き締めた。



「ごめん マイキー アタシ守るの遅かった……」

「……」

「でも、仕返ししたから」

「!」



瀬里奈がそう言うとマイキーは瀬里奈を引き離した。
驚いたような顔をしているのに
瀬里奈は何とも思っていないようないつもの顔だった。



「大丈夫 殺してないよ。腕に刺しただけ。
ドラケンとタケミっちの手も刺されてたから同じ痛みを…」

「刃物なんて使うな。」

「……」



さっきまで泣いていたのに冷たく言い放つマイキーに
瀬里奈の思考が止まって固まり
その状況にタケミっちは出る事も出来ず
その場で立ち聞きするしかなかった。



「俺はお前に無茶して欲しくなかった。
なんでそんなボロボロなんだよ。
裸足で血まで出てたじゃねえか。
なんで俺の言うこと聞かなかった?」

「…雨の中走ってて…下駄邪魔で……
浴衣なんか着なきゃ良かったんだけど、
マイキーが見てくれたら喜ぶかなってエマと話して…
ドラケン守らなくちゃって思って………」



瀬里奈はポツリポツリと話すと
マイキーはギュッと瀬里奈を抱き締めた。

時々 心が不安定になる。
必死になるとそれだけになる。
だからパーが長内を刺した事がきっかけで
ドラケンが狙われたのに
刃物を使ってしまった事も気にならない。

やられたのにどうしてやら返さない。
死んだのにどうして殺さない。

そんな単純な平等を求める瀬里奈は
マイキーは知っていて、ブレーキを掛けさせるべきだった。
心がちょっとした事で壊れそうになる程
繊細でどうしようもなくなる時がある。
そんな瀬里奈を理解出来るのはマイキーだった。




「ごめん…マイキー……嫌だった…?」

「うん。俺はお前に傷付いて欲しくない。
だからもう、お前は俺の側にいるだけにしろ。
一人で勝手に何処も行くな。」

「………うん。分かった…ありがとうマイキー…」



そう言い合う二人を見て
タケミっちはマイキーにとっても瀬里奈にとっても
お互いがお互いを必要としている関係だと思った。














ーーーーーー…*°





意識が戻ったドラケンにマイキーとがお見舞いに来た。



「よ ドラケン。」

「おう。」

「もう全然元気そうじゃん」

「来週には退院出来るってさ」

「さすが頑丈だな(笑)」

「一回死んだけどな」



マイキーは笑いながら椅子に座り
クルクルと回っていると
ドラケンはあの時を思い出して真剣な表情になる。



「マイキー、瀬里奈の事なんだけどよ」

「うん。ちゃんと叱った。」

「そうじゃねえよ。あの時、
刺した時の顔…普段と何も変わんなかった……
赤石を蹴り飛ばして振り向いた時は
初めてお前と会ったあの時みたいに
カッコよく見えた…でも、違え。
アイツは一歩間違えれば人を殺れる。
そんな奴にしか見えなかった……」

「…ケンチンの言いたい事は分かる。
でも俺も人の事言えねえし、
俺はケンチンがいるから良いけど
アイツは俺しかいねえんだよ。
だから、アイツは俺が守る。」



マイキーはそう言って頑なに
ドラケンが言いたい事を言わせなかった。

瀬里奈と付き合うのは危険だなんて
そんな事 ドラケンから言わせたくなかった。
そうなれば自分はまたドラケンと喧嘩する。
それくらい瀬里奈が大事だった。












いつもの河川敷で煙草を吸ってた。
この間買ったばかりの浴衣は帰って直ぐ捨てた。
綺麗に整えてもらった髪よりも
こうやって風が通り抜けるストレートが一番好きだ。

そんな事を考えてボーッとしていると、



「瀬里奈さん」

「………だれ?」

Σ「ええ!?タケミチですよ!花垣武道!(汗)」

「アタシの知ってるタケミっちじゃない。
いつもよりも増してダサすぎて隣歩きたくない。」

「なんすか皆んなしてダサいとか!」

「だって事実だもん」



たまたま通りがかったところに瀬里奈がいて
タケミっちはおもわず声を掛けた。
振り向いて気さくに話してくれる瀬里奈は
あの時目の前にいた瀬里奈と同じで
驚くくらい表情が変わらなかった。



「お祭りの日はごめんね」

「え?(汗)」

「怖かったでしょ?アタシ」

「…びっくりは、しました」

「うん。マイキーにも怒られた。
アタシちょっとおかしいんだ。
多寡が外れるっていうのかな…
やられたらやり返さなきゃが強くて
ついやり過ぎちゃう所があるんだ。
皆んなよりお姉さんなのにおかしいな。」

「え?瀬里奈さんマイキー君達のタメじゃないんスか?」

「一個上だよ?高校生。」

Σ「ええ!?(汗)」

「え?今?この辺で有名のバカ高だけど…」

「い、いや…俺高校行ってないから詳しくなくて…」

「当たり前じゃん 中二が。」

Σ「いや!そ、そりゃそうっスよ!!
兄弟もいないからって意味で…!(汗)」



慌てて言うタケミっちに瀬里奈は意味わからず
やっぱ変な奴だと認定する事になった。
そしてタケミっちは間隔を空けて瀬里奈の隣に座る。



「あの、マイキー君とは付き合い長いんですか?」

「……2年だよ」

「仲良いんスね」

「うん。マイキーは優しいから。」

「へえ…!」

「こんなアタシでも好きでいてくれるよ。」

「こんなって…っ」

「だからアタシも大切にしたいんだ。」



タケミっちは昨日の事もあって
瀬里奈がやばい人だと思っていたが
会話をしていて笑顔を見て
それが一気に吹き飛んでいった。



その後 タケミっちはヒナの弟でタイムスリップの
キーでもあるナオトと握手をして過去に戻った。

然し、ドラケンを救って変わった未来は
ヒナとナオトは生きていて、ヒナと話せた。
自分が知っている未来はフラれた未来なのに
戻ってきた未来は自分がヒナをフッていた。
どうしてフッたのかわからないくらい
自分はヒナの事が好きだったのに。

告白してまたやり直そうとヒナの元へ戻った時
美容師という夢を叶えたあっくんが車で突っ込み
前に戻った時の未来と同じ台詞を言って死んで
車が突っ込んだ衝撃で動けなくなったヒナは
車の爆発で死んだ。タケミっちの目の前で。

ドラケンは死刑囚になるし稀咲を殺すというし、
まだ過去では稀咲に会えていないタケミっちは
自分が東卍トップになる事で最悪を食い止める。

そう決意して過去に戻った。