戻れない
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芭流覇羅との決戦は明日に迫っていた。
千冬とタケミっちは長内が働いている土木工事現場に行き、
稀咲が裏で動いていた事によって
パーの親友も恋人も悲惨な目にあった。
そして愛美愛主との抗争が始まって
ドラケンはキヨマサに刺された。
そのドラケンが死んでいたら
稀咲は副総長の座につこうとしていた。
それが叶わなくても参番隊には入って
またなお裏で動き始めている可能性がある。
それほど稀咲はやばい奴だった。
「いよいよ明日だな!(汗)」
「……その前にちょっと付き合えタケミっち」
「へ?どこに?(汗)」
タケミっちは千冬の後をついて行って
横断歩道橋を上がると
「場地くん!?(汗)」
場地が芭流覇羅の特服を着て立っていた。
「急に呼び出してすいません。」
「千冬ぅーーまだ殴られ足んねーの?」
「……稀咲のシッポ掴めました?」
「あン?」
「東卍の為にスパイやってんスよね?」
「…」
「俺なりに調べて 稀咲がヤベェ奴だって分かりました。
もう芭流覇羅にいる必要ないっスよ!」
「何言ってんだテメー?」
「明日になったら…抗争始まっちまったら、
場地さん 本当に東卍の敵になっちゃいますよ!?」
「……千冬。いつも口酸っぱくして教えてきたろー?
仲間以外信用すんなってよぉー。
俺は芭流覇羅だ!明日東卍を潰す!」
場地の気持ちは揺るがなかった。
「……千冬…場地君と二人で話していいか?」
「!」
タケミっちがそう言うと千冬は
声が聞こえないけど見える程度の距離を離れた。
「オイ…テメーと話す事なんてねぇゾ?」
「俺には場地君が何がしたいのか分かんないっス。
むしろそんな事どうでもいいんです…。
……ただ、どうか明日を乗り切って下さい。」
「は?」
「どうか死なないで……
マイキー君が、悲しむから」
タケミっちは少し涙ぐんで言った。
然し、場地の気持ちは変える事はなかった。
「アイツは敵だ。明日俺が殺す。アイツにそう伝えろ!」
そう言って場地は歩道橋から降りようとしたが、
まだタケミっちに引き止められた。
「それと、瀬里奈さんマイキー君に話してないですよ!」
「…」
「俺らも口止めされて…マイキー君に嘘ついてました…
場地君が戻れなくなるからって…。
だから瀬里奈さんも場地君の事許して、」
「………アイツも敵だ。」
場地はタケミっちの方を振り返る事なく
千冬がいる反対側から歩道橋を降りていった。
マイキーの家の近くの公園。
瀬里奈はジャングルジムに寄り掛かって飴を舐めて
マイキーは特服を着ているのに
迷子のようにフラフラと遊具に乗ったり、
時々立ち止まって考えてはまた遊具に触れて、
まるで子どもの時の時間を思い出しているようだった。
「瀬里奈」
「うん」
「明日 場地とヤり合わなきゃなんねェ」
「うん」
「この公園 二人でよく遊んだんだ。
喧嘩して、でも直ぐ仲直りしてた。
だけど今度は本当に……」
「………仲直りまでの喧嘩が伸びただけだよ」
瀬里奈がそう言うとマイキーは瀬里奈を見た。
豆鉄砲食らったようなまんまるな目をしていて
そんな顔のマイキーが面白くて
瀬里奈は口元がニッコリと笑ってた。
「マイキーは優しくて時々子どもみたいに可愛くて
子どもみたいに我が儘たくさん言う人だよ。」
「瀬里奈…」
「これ悪口じゃないよ?」
「…うん。分かってる。」
そう言ってマイキーは瀬里奈に歩み寄った。
そしてふわりと抱き締めて、
その力はいつもより強くてしっかりと包まれた。
「俺…腹括ったよ。」
「うん…マイキーのしたいようにしな。
東卍はマイキーのモノなんだから。」
瀬里奈はそう言ってマイキーの背中に腕を回して
暖かく包み返した。
マイキーはその日の集会で我が儘を言った。
"俺はダチ(場地)とは戦えねえ"
芭流覇羅を潰して場地を取り戻す事を選んだ。
ーーーーーー…*°
翌日 東卍と芭流覇羅の決戦の日
両者の他に都内の有名な顔役の不良達も
大きなチームの抗争に注目して観客として来ていた。
そして暴走族(チーム)同士の喧嘩として
正式なものでは仕切りという人物がいて
5対5のタイマンか、それとも乱戦か選ぶ。
一虎の前に出たのはマイキーでは無くドラケンだった。
「芭流覇羅の売ってきた喧嘩だ。
そっちが決めろや 一虎。」
「あン?」
「俺らの条件は一つ!場地圭介の奪還!
東卍が勝利した暁には場地を返してもらう。それだけだ!」
「は?場地は自分でウチに来たんだぞ?
返すも何もねーだろーが!!(怒)」
「場地を返してもらう!!それだけだ!!」
ドラケンはその一言しか言わず、
一虎はピキンと神経に苛立ち血管が浮かぶ。
「テメー…上等じゃねェかよ(怒)」
「オイ ここで争う気かー?」
仕切りの池袋のチーム S63で有名な阪泉が顔を覗かせると
一虎は阪泉を殴って鳩尾にも入れて倒した。
「ヌリぃ〜〜〜〜なぁ…
仕切り?条件?テメーらままごとしに来たのか?
俺ら(芭流覇羅)はテメーら(東卍)を嬲り殺しに来たんだよ!」
「おっぱじめるか!!マイキー!」
「行くぞ東卍!!」
東卍と芭流覇羅の抗争が始まった。
瀬里奈は真一郎のバイク屋だった廃墟に来て
また同じ場所で煙草を吸っていた。
【真一郎 このバイクなんて言うの?】
【CB250T 通称バブ】
【バブ?何それ赤ちゃんなの?】
【排気音がバブーって言うんだよ】
【ふぅん。これだけ特別なの?
ポツンと離れて置いてあるし。】
【それは俺の愛機だからな】
【そっか 真一郎のなんだ。カッコいいね。】
【でもそれ もう直ぐ手放すんだ。】
【え?なんで?】
【マイキーにやるから。アイツの誕生日に。】
笑顔で言ってた真一郎は幸せそうだった。
真一郎にそんな顔をさせるマイキーが羨ましくて
ずっと興味が無かったバイクに
自分も乗れたら良かったのになんて思ってた。
マイキーにあげて喜ぶ姿を見て
マイキーの後ろに座って一緒に走って
その時の真一郎はどれほど幸せに感じてるのか
そう思うだけで愛しくて切なくて寂しくて
笑顔を見て自分も幸せに思うんだろうなって
そんな事を思っていた。
あの日の夜までは。
「やっと終わるよ 真一郎…」
瀬里奈はそう言って身体を縮めて顔を伏せて
揺れる煙草の煙にコンクリートに落ちる灰が
ジリジリと瀬里奈の手元に近づいていく。
許した事なんて一度もなかった。
殺したくて仕方がなかった。
それでもマイキーが止めるから
全部どうでも良くなって身を任せた。
場地も許した事なんてない。
マイキーにとっては幼馴染の親友でも
瀬里奈にとっては赤の他人の人殺しだ。
一虎も同じ。
あの虚な目に何かを失っているのは知ってる。
ネジが緩んで外れかけて何かが繋いでいた。
そのネジが外れた時 身体は動かなくなる。
場地が死ねば一虎も廃人になる。
一虎の唯一は場地だったから。
自分の幸せは自分で壊して終わらせる。
その終わりが今日であると信じてる。
瀬里奈は知っていた。
場地も一虎も今日の抗争で死ぬって事。
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