呪い









「羽宮少年 面会だ。」



部屋でぼーっとしていた一虎は名前を呼ばれて顔を上げる。
そして連れられて面会室に入ると
驚きと焦りで動揺して立ち止まった。



「なんで…」

「こんにちは 一虎」



一虎は椅子に座ると芭流覇羅のアジトに連れて行った以来
面識のなかった瀬里奈が来ていることに動揺した。

マイキーの女ってだけで
マイキーの親友を殺した奴のところに
態々来るのかと疑って警戒していた。

そんな緊張感のある一虎を他所に
瀬里奈はリラックスした状態で
両肘を机において頬杖をついて見上げる。

アジトに連れて行った時も
ただの女じゃない事は分かってはいたが
それ以上の何か異質なものを感じて
吸い込まれそうな黒い瞳から目が離せなかった。



「そりゃ驚くよね 君と話すのは2回目だ。」

「……」

「でも、会うのは3回目だよ。」

「?」

「というより一方的にアタシが君を見た。
それが正しいかもしれない……。
あの時君は黒いパーカーを着てフードを被っていて、
君は柔らかいタオル隠されて手首を拘束されてた。」

「それっ……て…」

「あの日の夜 アタシは真一郎の部屋で帰りを待ってた。」



ガタンッ

瀬里奈がそう言うと一虎は思わず立ち上がって
その勢いで椅子が倒れると監視員が座らせた。



「真一郎と約束してた。2年後の今年
アタシが高校生になったら真一郎のモノにしてくれるって。」

「ぁ……」

「アタシは今マイキーのモノになってる。」

「……」

「マイキーが許したのは東卍のメンバーだからだけど、
アタシは東卍のメンバーじゃない。」



一虎の息が荒くなるが瀬里奈は続ける。



「だからアタシが君を許す事は一生無いよ。」

「………俺…」

「親に恵まれなかったのは同情するよ」

「!」

「DVを受けてる母親は可哀想だったろうね」

「……やめろよ…」

「ただ泣いて君に縋っていつも怯えてて」

「やめろ………」

「とても高層マンションで裕福な家庭とは思えないくらい
可哀想な家庭環境だったんだね」

「やめろよ!!」

「静かにしなさい!君も煽るような事はやめなさい!」



一虎はまた席を立ち ガラスに拳を叩きつける。
さすがに分厚く造られていてゴンッと低い音が鳴った。
監視員は一虎を取り押さえて
瀬里奈にも止めるよう声を掛ける。

然し瀬里奈の表情はいつもと変わらず穏やかで
自分を見下ろす一虎を優しく見上げていた。



「でも、カビ臭いワンルームの部屋に酒と煙草しか無くて
母と子供殴るしか脳が無かった奴と比べてたら
君のは綺麗なものだったんじゃない?」

「……何言ってんだ…?」

「父親は東京の大手IT企業に働いてるエリートだ。
そして母親は神奈川の実家に戻っていて
今は飲食店にパートで働いているけど知ってた?」

「親は関係ねェだろ……!」

「関係無い?君を創った張本人達だよ?」

「マイキーが許すはずがない…」

「うん。マイキーは知らないから。」



そう言って瀬里奈は席を立った。



「君が出てきた時 何が変わったか楽しみにしててね?」



瀬里奈はそう言って席を立ち面会室を出て行った。
一虎は言葉にならなくて立ち尽くして
同じく監視員も何も言えず唖然とした。

マイキーのただの彼女だと思ってた。
でも実は真一郎の事が好きだった女で
真一郎の代わりにマイキーを選んでる。
そして自分の親を調べ上げていて
殺すような言い回しを平然と言ってきて
一虎はヤバい奴だと冷や汗をかき
止めようにしても誰にも助けを求められなかった。













ーーーーーー…*°




タケミっちはドラケンの家に来ていた。

ドラケンの家は渋谷の中心部にある風俗店
部屋もプレイルームを自室仕様にしたものだから
部屋にシャワールームがあって
薄い壁からは卑猥な音や声が昼からも聞こえる。

そんな家に招かれてタケミっちは客と間違えられ
危うく童貞を失うところだったがドラケンに回収されて
今は部屋に飾られた写真を眺めている。



「すげー写真!あ!マイキー君だ!
エマちゃんもいる!なんやかんや大事にしてんスね」

「ウッセェ!(怒)」

「場地君…」

「……みんな俺の大事な奴らだ。
こいつらになんかあったら…オレも、一虎を殺したかった。
よくねえ事は分かってる。それでもだ。
マイキーを止めてくれてありがとな。
俺には止められなかった。」



そう言うドラケンにタケミっちは
その気持ちが分かる気がした。
自分も殺される運命のヒナを助ける為に過去に来た。
大切な人の為ならダメな事もやる
そういう気持ちは分かってても
本当はやっちゃいけない事だ。



「お前 瀬里奈の事どう思ってる?」

「え、マイキー君の彼女で…キレイな人…(汗)」

「そうじゃねえよ。
瀬里奈もマイキーを止められない奴の一人って事」

「!」

「祭りの時お前も見てただろ?
アイツはやっちゃいけない事も平気でやるし、
マイキーがしたい事ならなんでも許す。
ダメな事を指摘しないで受け入れちまうんだ。」

「……本人も言ってました…
分かっててもタカが外れてやっちゃうって…
でも、マイキー君がいるし本人も分かってるから
それを直せば無茶なことなんて……」

「………マイキーには瀬里奈が必要だ。
今回の事も瀬里奈がマイキーを支えたから
マイキーは一虎を許す事が出来た。
心配なだけなんだ二人が。」

「ドラケン君…」



タケミっちはマイキーだけじゃなく
マイキーの彼女の瀬里奈まで気にかけてる事に
仲間思いを感じて感動した。

でも自分が河川敷で見た瀬里奈は本心で
あの優しい綺麗な顔も本物だと思っている。



「大丈夫っスよ。ドラケン君。
瀬里奈さんが言ってました。
マイキーは優しいから付き合ってくれていて
そんなマイキーが大切なんだって。
あの二人は相思相愛で素敵なカップルですよ!」



タケミっちが笑顔で言うと
ドラケンも安心したようだった。

そしてドラケンの実家から出て
のんびり帰り道を歩いていると
相思相愛でドラケンとエマの事を思い出す。

ドラケンの事が大好きなエマと
素っ気ないけどなんやかんや大切にしているドラケン
二人も並んでいるところを見るとお似合いだと思った。
そんな事を考えていると目の前にエマが通り掛かった。



「あれ?エマちゃん……!?
おーい 待ってよー今さー え!?(汗)」



タケミっちが追い掛けて見た先
それは、



「大好き マイキー。ぎゅってして?」



そう言われて片手だったマイキーの腕が
両腕エマの腰に抱き締める。
エマは幸せそうな表情をしていて
タケミっちは思わず草陰に隠れた。



「(嘘だろ…エマちゃん!?
よりにもよってマイキー君に乗り換えって!
万が一にもドラケン君と瀬里奈さんがこれを見たら…(汗))」



睨み合うマイキーとドラケン
そして浮気したマイキーを殺しかねない
刃物を持った瀬里奈が思い浮かんで
とんでもない修羅場だった。
今度こそ東卍の最終戦争が勃発して
マイキーは瀬里奈に刺されて死んでしまう。



「ハルマゲドンや…!!(泣)」

「うむっ。これは事件の匂いがしますね ワトソン君!」

「え?」

「最近連絡ないなーって思ったらこんな事してんだ?」

「ヒナ!?(汗)」



ヒナは弟のナオトと買い物をしていたらしい。
探偵にどハマりしているヒナは二人の尾行を開始した。

浮気調査の始まりだ。











「美味い。」

「へへへー でしょ!?」



渋谷のカフェで二人は生クリームたっぷりのパンケーキと
フレンチトーストを食べていて
エマがマイキーにあーんをして食べさせていた。

そんなエマを見てヒナは恋をしている女の顔だと言うと
タケミっちは確かにというが
じっくりと見ていた視線の先はヒナにお見通しだった。



「あれ?タケミっちじゃん」

「山岸」



タケミっちは偶然通り掛かった山岸に事情を説明した。



「へー それは事件だな!(汗)」

「だろ!だから真相を確かめる為に
後をつけてんだけど…」

「決定的な証拠は掴めてない!」

「エマという女の聞いた事がある…」

Σ「え!?(汗)」

「ああ…その女 マイキー君の家から
二人仲良く出てきたとの噂だ。
然もお泊まりからの翌朝だ。」

「それって…(汗)」ゴク…

「非常に残念ですが…謎は全て解けてしまいました。
これはもう完全なる二股です!!(汗)」

「そんなっ!?(汗)」

「一緒に来てタケミチ君」

「へ?(汗)」

「あと必要なのは本人達の自供よ!」

「え?え?乗り込む気?
それは良くないんじゃないかなぁー!?
やめよーよヒナ 相手はマイキー君だよ!?(汗)」

「だって瀬里奈さんとドラケン君が可哀想!」

「(確かにドラケン君がこれを見たらヤバい…!(汗))」



そう思ってすぐ人影が出て振り返ると
ある意味ベストタイミングでドラケンがいた。



「誰が可哀想だって?」

Σ「ウソォ!なんでここいるの!?(泣)」



バットタイミングでタケミっちは気を失いそうだった。