灯火










今宵は東京卍會にとって大事な集会だった。



        "血のハロウィンの総決算"



タケミっちは三ツ谷が東卍創設メンバーしか
見繕わなかった特攻服を直々に刺繍を縫ってもらい
それを着ては初めての集会だった。

ドラケンはタケミっちの特服を見て
「似合ってねーな」と笑うと
タケミっちも着せられてる感があると笑って返し
血のハロウィンでの活躍もあり
改めて東卍への入隊を歓迎した。



「お前にとって大事な集会だ。覚悟しとけ。」



ドラケンがそう言うとタケミっちはゴクンと唾を飲み込む。
いつもの小上がりの階段の上にマイキーが出て来て
その両隣には芭流覇羅の半間と壱番隊副隊長の千冬が現れ、
周囲はざわついていた。そしてマイキーが話し出す。



「………"血のハロウィン"。
芭流覇羅約300対東卍約150
この圧倒的に不利な状況の中
お前ら一人一人の頑張りで勝利を掴み取った。
負けた芭流覇羅の副総長 半間修二から挨拶がある。」



マイキーがそう言うと、
一際背が高い半間が前に出る。
然し、壱番隊隊長の場地の死のきっかけである
芭流覇羅の奴に皆が睨みを効かせていた。



「芭流覇羅の半間修二だ。
芭流覇羅はずっと頭がいなかった。
だから…この戦いに負けて、東卍の下につく事にした。
芭流覇羅は東京卍會の傘下に降る!!!」



芭流覇羅総勢300人が東卍の傘下に降るという事は
ジシツ東京卍會が450人と大きなチームとなる。
そんな事は誰もが大歓迎だったのだが、
一人 花垣武道だけ焦っていた。
傘下に降るという事は合体するのと同じ。
唯一違うのは一虎が生きている事だった。



「今回俺とマイキーを繋いでくれた奴がいる!!
そいつのおかげでこの話は成立した!
前に出てきてくれ!稀咲鉄太!!」



稀咲が前に出て3人で手を重ねる姿を見て
タケミっちは絶望しかなかったのだが、
まだ集会は大事な話が残っていた。



「話がもう一つある。
"血のハロウィン"で得たモノもあれば、失ったモノもある。
…壱番隊隊長 場地圭介が死んだ。」



さっきまで歓迎で騒がしかった連中も静まり、
しっかりとマイキーの言葉を聞く。



「俺らはこの事実を深く反省し、
重く受け止めなきゃいけない。
………後はお前から言ってくれ。
壱番隊副隊長 松野千冬。」



マイキーに言われて千冬は一歩前に出る。
場地の墓の前でペヤングを半分コして
昔の事を思い出して泣いた涙は出し切った。



「………東卍を辞めようと思ってた俺を、
総長はこう言って引き留めた。

"壱番隊の灯を、お前が消すのか?"

壱番隊を引っ張っていくのは俺にはやっぱり荷が重い。
総長と話し合った。何日も何日も。
そしてこういう形に辿り着いた。」



千冬は俯いていた顔をバッと上げて
タケミっちの方を向いた。



「テメェ(自分)のついて行きたい奴ぁ
テメェ(自分)が指名する!!!
花垣武道!!俺はお前を壱番隊隊長に命じる!!!」

「え?……お前…何…?」



千冬の言葉を聞いてタケミっちは唖然とした。
然し、続く千冬の言葉が救いになる。



「タケミっち。これが場地さんの遺志だと俺は思ってる!」

「!」

「場地さんがお前に託し、俺と総長が決めた事だ!」



東卍と芭流覇羅が稀咲によって一つにされ、
未来が変えられず皆んなが死ぬ未来になると思った。
それでも自分が変えられるチャンスはまだある。

昔の自分では絶対になれなかった。
なれるわけなかった東卍のトップに近付ける。
場地に託された思いを繋ぐ事が出来る。



「花垣武道!!顔 上げて 皆んなに挨拶しろ!!」



タケミっちは思わず涙が溢れ出た。
まだ、東卍は変えられる。



「よろしくお願いしますっ!!!」



タケミっちは大きく天を仰いで挨拶をした。















集会が終わって、ゾロゾロと東卍が降りてくる中
瀬里奈は階段の下で煙草を吸って待っていると
稀咲と半間も降りてきてバチっと目が合うが
二人とも瀬里奈から目を逸らした。

そんな二人を見て、瀬里奈は変わらず
ふんわりとした優しい表情で目線を追い掛けると
ドラケンや三ツ谷、タケミっち達も降りて来た。



「瀬里奈さん 来てたんスね!」

「うん。マイキーに誘われたから。
タケミっち大出世だね。
おめでとうなのか分からないけど。」

「……はい」



タケミっちは瀬里奈の言葉を理解して気持ちだけ受け取った。



「次のワンちゃんの飼い主はタケミっちだ。」

「ワンちゃん?」

「やめて下さい 瀬里奈さん(汗)」

「あ、ワンちゃん。」

Σ「ワンちゃんって千冬の事か!(汗)」

「場地に懐いて従順で何かあれば吠えてたから。」

「犬も好きっスけど、猫派なんで俺。」

「そこかよ!」

「千冬は犬っぽいと思うけど」

「瀬里奈」

「あ、マイキー」



瀬里奈が千冬達に笑い掛けていると
階段の途中でマイキーが立っていた。
瀬里奈は煙草を携帯灰皿に捨てる。

マイキーは瀬里奈に近付くと腰に手を回し、
直ぐに自分の方のバイクへと足を進めた。
瀬里奈はマイキーに押されながらも
タケミっち達に軽く手を振った。

そしてCB250Tまで来るとマイキーは
ヘルメットを瀬里奈に渡してそれを首にかけ
マイキーが跨った後ろに座って走り出す。

少しバイクを走らせると
川崎の工場が見える海沿いまで来て
此処はマイキーと真一郎がよく来ていた場所で
マイキーの思い出でお気に入りの場所だ。



「夜だと綺麗だね 此処。」



でも冬は寒いとふわりと笑いかけるが、
マイキーの表情は真剣だった。



「今日 芭流覇羅を東卍の傘下に入れた。」

「うん」

「東卍は450人のチームになった。」

「うん 凄いね。初めは6人だったのに。」

「………俺、夢に近付けてるかな。」

「なんでそんな事聞くの?」



瀬里奈は不思議に思った事を正直に伝えた。
でもマイキーはその質問に答える事はなくて
ただジッと瀬里奈の事を見つめていた。



「マイキーは間違ってないよ。」



そういう瀬里奈は穏やかな表情で、
冷たい風が通り抜けさらりと流れる髪を梳かした。
そんな姿だけでも月に映える白髪は綺麗だった。



「……瀬里奈、瀬里奈は俺が道を踏み間違えた時、
お前は俺の事 正しい方へ向き直してくれる?」

「……」

「時々分からなくなるんだ…
これが良い事なのか駄目な事なのか、
そんな自分が怖くなる時があって…
瀬里奈ならどうするかなって、」

「……アタシはマイキーが選んだ道は
全部正しいと思ってるよ。
それが人によっては良くない事なのか知らないけど
そんなの関係無いって思ってる。
こんなアタシじゃダメかな?」



瀬里奈が平然と言うとマイキーは歩み寄って抱き寄せて
小柄な瀬里奈はスッポリ胸の中に収まった。



「ダメなんかじゃない。
俺には瀬里奈が必要だから。
どこも行かないで。俺の側にいて。」

「うん 勿論マイキーが望むなら側にいるよ。
どんな道歩くマイキーでもアタシは隣で一緒に歩くから。」














ーーーーーー…*°





過去を変えた。

タケミっちは一虎をマイキーが殺さなかった
ミッションだけ成立させて未来に戻る事にした。

目を覚ました時には自分がバイトしていた
レンタルビデオ店にいて、
自分を冷たく嫌味たらしく怒っていた店長は
ニコニコと愛想笑いをしながら謝ってきて
自分が求めたとされるビデオは無かったと聞かされる。

がっちりと固められた黒髪のオールバックに
黒いジャージに札束が入ってそうな黒いポーチ。
そして高そうな腕時計をしていて状況が読めず、
レンタルビデオ店を出ると
中学の同級生も東卍に入っていて
ガラが悪いコワモテな姿になっていた。

そして高そうな車に乗り
自分が降りた先は高級タワーマンション。
そこには千冬が待っていて、

自分が壱番隊隊長になった事により
未来は自分が東卍幹部にいる状況だった。



タケミっちの未来は成功だと思った。



然し、幹部会にはマイキーはおらず
三ツ谷もドラケンもいなくて、
パーとペーそして四番隊隊長のスマイリーと
伍番隊隊長のムーチョ以外は知らない奴らと半間。

そして後から現れた稀咲は
自分と千冬を呼び出し全ての悪を明かして
目の前で千冬を撃ち殺した。

自分をヒーローと言って一筋の涙を流して
殺そうとした稀咲の部屋は真っ暗になり、
一虎によって助けられたが、
今の東卍が信じられなかったのは一虎だった。

千冬と協力して証拠を掴もうと動いていた。
マイキーの創りたかった時代はこんなのではなく、
もっとずっとキラキラと輝いていた。



タケミっちは、
まだ未来を変える事は出来なかった。



一虎と千冬に協力していたナオトと会い、
自分が逮捕をされた理由は、
稀咲に誰を殺すと聞かされないまま
ただ邪魔だからという理由で
あっくんに車で突撃するよう指示したのは
タケミっちだった。

あの目の前で車がヒナに衝突して
あっくんは衝撃で倒れて
運転席で下半身を潰されたヒナ
二人ともガスの爆発で見た燃え盛る炎。
それを仕向けたのは自分だった。

その絶望がタケミっちの心をズタボロにする。
然し、その中でも助かった命はあった。
その事実は確かなモノで
タケミっちはナオトによって立ち上がり、
また過去へ行く事が出来た。




タケミっちが見た未来では、
マイキーに会う事は出来なかった。