襲撃
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ツーリングで来る工場が見えるいつもの場所、
マイキーは塀に座っていて瀬里奈は寄り掛かり、
ボーッとしているマイキーの時間を過ごしていた。
「瀬里奈 たい焼き食べたい。」
「はい。」
瀬里奈はマイキーと会う前に買ったたい焼きを渡すと
マイキーはそれをジッと見て眺めていて
瀬里奈もたい焼きを頭からかじった。
すると、人が来る気配がしてその方向を見ると
黒川イザナが特服では無く私服で現れ、
パチッと目が合うと何も言わずマイキーの隣に座った。
マイキーは気付いていないのか、
たい焼きを目線に上げてジッと見ている。
「………お前も海に逃げてェのか?
"ウン" スイ…スイスイ…」
「たい焼き君ってさ、最後どうなるんだっけ?」
イザナが話し掛けるとマイキーはやっと気付く。
「…さァ?忘れた。誰?」
そう言うとイザナは塀からトンッと降りた。
背はマイキーより少し高いくらいで細身。
どこか柔らかい表情なのか瀬里奈のようだった。
「俺は黒川イザナ。
いいバイク…乗ってるね。」
「……」
マイキーは質問に答えず、
瀬里奈も話す事なくたい焼きを食べながら見つめていた。
「…また会おう。」
「?」
イザナはそう言って立ち去った。
「……なんだろね 今の。」
「さあ?」
「マイキー 携帯鳴ってる。」
「ん」
マイキーはたい焼きを食べながら携帯に出ると
相手はドラケンだった。
「どうした ドラケン」
『マイキー マズい事になった。』
電話に出るとマイキーは一度目を見開き、
その後は真剣にドラケンの話を聞いている様だった。
そして通話を切ると、
「瀬里奈」
「何?」
「また抗争が起きる。」
さっきまでたい焼きを泳がせてたマイキーでは無く、
東京卍會総長の顔になっていた。
翌日の夜 東京卍會は緊急集会を開いていた。
「昨日ウチのメンバーが東京各所で襲撃に遭った!
横浜の"天竺"ってチームの仕業だ!
天竺は最近になって出来たチームだ!
どんなチームかまだ分かんねェ!
お前らの持ってる情報が欲しい!
まず最初に揉めたのは壱番隊!前へ出ろ!」
ドラケンに言われてタケミっちと千冬は前に出て
千冬が代わりに状況を伝えた。
「俺らを襲ってきたのは"望月隊"と名乗っていました。」
「望月隊?」
「呪華武(じゅげむ)元総長 望月莞爾が率いてる部隊だ。
恐らく"天竺"の主力部隊。」
肆番隊隊長のスマイリーが続けて言うと周りが騒つく。
S62世代とタケミっちが聞き慣れないワードも出た。
三ツ谷を襲った六本木を仕切ってた灰谷兄弟もその世代。
さらに他のやられた連中からは
元黒龍九代目総長の斑目もその一人だった。
その斑目もS62世代だった。
「つまり天竺は纏まるはずのない"S62世代"の連中が
一つになったチームって事か…」
「東卍との因縁も深そうだな」
「…………なんにしてもやられっぱなしは気に入らねェ!!
次は俺らから横浜に攻め込む!!」
「え!!!?(汗)」
「そうこなくっちゃなー」
「東卍総動員で天竺と抗争だ!!!」
「「「「オオオォオオォオオ!!!!」」」」
また抗争が始まる。
タケミっちはこれが駄目な方向なのではと思うと
千冬が未来で確かめて来いと助言した。
稀咲の思惑通りに進んではいないか。
未来のナオトの知恵も借りたくて
タケミっちは未来にもう一度行く事にした。
そこで知るのはマイキーが闇落ちしたきっかけの
イザナという男の存在だった。
ーーーーーー…*°
学校のチャイムが鳴り
使い込んだ痕がない綺麗な教科書を片付けて
教室の後ろにある個人ロッカーに閉まった。
中はどれも新入生のように綺麗に教科書が並んで
必要最低限のものしか入っていなかった。
「瀬里奈」
ロッカーを閉じて帰ろうと教室を出ると
自分が仲介をして高級キャバクラで働いている愛菜が
珍しく自分から瀬里奈に声を掛けて、
その後ろにいつもつるんでる女子達もいた。
「…何?皆んなして。」
「学校(ここ)じゃ言えない話があるから来てほしい」
いつも怯えた顔を自分に向けていたくせに
今日は柔らかい表情だった愛菜に対して
後ろで余裕の笑みを浮かべる女子達を見て
馬鹿でも気付く、何か裏がある誘いに
瀬里奈は断れば良いものをそれを受けて
誘われるがまま 歩かされると一台の黒い車が停まっていた。
それも見覚えのあるナンバーだった。
「アタシに何の用?三途。」
「……」
自分と似たでも違う柔らかい金髪よりの白髪に
女性のようなフサフサの睫毛に黒いマクスが特徴の
東京卍會五番隊の副隊長が車の前に立っていた。
そして無言のまま窓をコンコンと鳴らすと
窓が空き、中には五番隊隊長のムーチョこと武藤がいた。
「乗れ、瀬里奈。」
「これからマイキーと約束あるって言ったら?」
「また日を改めたいところだが、
こっちも暇じゃ無いんだ。強引にでも連れて行く。」
「……穏便に済ませたい気持ちはあるんだね」
瀬里奈がそう言うとチラリと愛菜達を見ると
何故か勝ち誇ったような余裕のある顔をしていて
それが馬鹿な子達だなと思いつつ
三途が開けた車の後部座席に座って武藤の隣に座った。
そして三途は助手席に座って車が走り出すと
少しして車は高速道路に乗った。
「一応聞くけど、どこ行くの?」
「……横浜だ。」
一応聞いたけど分かっていた。
今東卍が抗争起こしているのも天竺という
横浜のチームだ。マイキーの女だからとか
そういうものでも無いのも分かっている。
自分を呼び出すのに利用したのが
愛菜達だった事から彼らが求めているもの。
「ココや稀咲じゃ足りなかった?」
「………イザナがお前と話したいそうだ。」
「……」
それ以上聞いたところで何も生まれない事を理解して
ただ高速道路を走る車の窓の外を眺めて
意外と渋谷と横浜は近くて高速道路を降りると
あるビルの地下駐車場で降ろされて
エレベーターで一気に高い所まで行くと
さらに螺旋階段を登らされて屋上まで来た。
冬の風は生足にはキツくて
嫌だなぁと思いながら案内されると
屋上のフェンスが無いにも関わらず
建物のギリギリの所でしゃがむ男に見覚えがあった。
「連れていたぞ。イザナ。」
黒川イザナ そういえばこの間
わざわざマイキーに会いに来た男だった。
黒龍八代目総長で黒龍を壊した男。
カランと耳元のピアスが鳴って
すくっと立ち上がると身体の線は細く
背丈もマイキーとあまり変わらなかった。
「下がっていいぞ ムーチョ。」
そう言うと武蔵は身を引いて出で行った。
屋上は自分とイザナだけが向かい合う。
風がよく通って寒いし何よりこんなに高い場所に来ると
気圧で体調を崩しやすい瀬里奈には最悪の場所だった。
「………気圧が重いなぁ…」
瀬里奈はそう言うとポケットから煙草を取り出して
火をつけて吸い始めた。
その瀬里奈の行動にイザナはキョトンとしたが
直ぐに柔らかい表情に戻って歩み寄ってきた。
「俺も弱いんだよね 気圧。
態々横浜に来てくれてありがとう 瀬里奈。」
「君も態々会いに来ていたもんね。
これでおあいこ。用事は何?
抗争中マイキーと連絡取れないと直ぐに疑われ、」
瀬里奈が言いかけるとイザナ背丈の割に長い足を伸ばして
煙草を持つ手を蹴り飛ばして煙草が落ちた。
ジリジリと熱く痛い手を変わらない表情で見つめて
そしてフッと笑って再びイザナを見た。
「煙草は嫌いだった?
君も知ってる匂いだと思ったけど」
「……知ってるさ セブンスターは
真一郎が吸ってた煙草の銘柄だ。」
二人は会うのは2度目だがお互いよく知ってる。
佐野真一郎に今もなお心酔している者同士だ。
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