持ち主
▽
「あれ?ケンチンは?」
帰ってきたマイキーは瀬里奈しかいない事に
キョトンとした顔で戻ってきた。
「エマを学校まで送りに行ってタケミっちは帰ったよ。
手紙はエマに返したけど良かった?」
「うん」
ソファに座っていた瀬里奈は吸っていた煙草を消すと
マイキーは隣に深く座った。
「瀬里奈はイザナの事、元々知ってたの?」
「知らないよ。マイキーと一緒に会ったあの時が初対面。」
「でも瀬里奈の秘密を知ってた。」
「稀咲がアタシについて調べてたから聞いたんだと思う。」
「稀咲とはいつから?」
「…去年のお祭りの日、アタシの事探ってたのは
この時から知ってたから紹介目当てなのは分かってた。
だから仕事を斡旋する人の電話番号を教えた。
ドラケン助けるの遅くなったのはそのせい。」
「……ココとは?」
「…一年前、イヌピーが少年院に入ってた時
ココから紹介してほしいって言ってきた。
そこから黒龍が再建してココがお金を造った…」
「他には?」
「お金に困ってる同級生に水商売を紹介した。
その子達が働いてる店の集金役をしたりした。
…ごめんね、マイキー…アタシ酷いことしてるよね。
でも、これしか方法がなかった。
親父に復讐したかった…空っぽになりたかった…。
でもこれはアタシがやってる事だから
マイキーには言わなかった…邪魔したくなかった…
東卍とは関係ないようにしたかった。」
「………親父が死ななきゃ瀬里奈は自由になれねえのか?」
「……そうだよ。悪い事してるって分かってる。
だからマイキーにいつ捨てられてもおかしくないって
そう思ってたけど、どうして?
アタシ嫌いなこと全部してるのに裏切ってたのに、
どうしてマイキーは許してくれようとするの…?」
瀬里奈はそう言ってマイキーを見つめると
マイキーの表情は変わらずというより読めない。
瞳の中に黒が映る吸い込まれるような目をしていた。
「…俺がムカついてるのは
頼ったのが俺じゃなくて
知らない男だった事にムカついてる。」
「……」
「俺の知らない瀬里奈を稀咲達が知ってるのも、
その同級生達が知ってるのも、
全部ムカつく。瀬里奈は俺のなのに、
俺の知らない瀬里奈がいた事にムカついてる。」
マイキーは瀬里奈に迫って
ソファに座る瀬里奈の足の間に自分の右足を置き
被さるように前屈みになって
ソファの背もたれに両手を置き顔に近付く。
「だから瀬里奈は俺がいつか捨てると思ってたのか?
何回も俺のモノだって言ってるのに俺に隠し事して、
バレたら捨てられると思ってたんだよな?」
「……だって、マイキーが嫌いな事でしょ?」
「嫌いだ。でもそれ以上に俺は、
瀬里奈が好きだから手放したくない。
お前が逃げたくても逃がさない。
ずっと俺のそばにいさせる。
それともお前は俺に捨てられたいとでも思ってんの?」
マイキーはだんだん空気が冷たく重く
恐怖さえも感じるほどの気迫に変わり
瀬里奈の首に手を押さえられてヒヤリとした。
「お前は俺のだろ?」
黒い瞳に吸い込まれそうになる。
「………そうだよ。
マイキーがそれを望むならずっと側にいる。
でもそうしたらね…マイキーはダメになるの…」
「それをお前が決めるなよ。決めるのは俺だ。」
「……前に聞いてくれたよね?
自分がダメになったらどうするって…
マイキーは全部無くしてアタシの側にいてくれる?
一緒に堕ちてくれるの…?全部捨てて…」
「……」
堕ちるのはアタシの方。
というより、アタシの所為なんだよ マイキー。
ーーーーーー…*°
その日の夜 ムーチョはイザナの指示で
ココを天竺に引き入れた。
タケミっちとイヌピーをボコボコにして取引をした。
ココは2人を死なせないように取引に応じた。
ボロボロになった2人はゴミ捨て場に捨てられ、
気が付いたタケミっちはイヌピーを背負って歩き出す。
「待っててイヌピー君。もうすぐ病院だから…」
「花垣…すまねぇ…何も出来なかった。
ココを…守れなかった…」
「大丈夫っスよ イヌピー君!」
「え?」
「ココ君は殺されるわけじゃない…
天竺はココ君を利用したいだけだ。
最悪の犯罪組織を創るためにね。
イヌピー君…俺は…アンタら2人を誤解してた。
天竺の連中と同じ…救いようのねぇクソヤローだと思ってた。
けど、アンタは俺に加勢してくれた。
ココ君は自分を犠牲に俺らを救ってくれた。
2人とも…良い奴だ。俺の仲間だ。
ココ君は天竺なんかに渡さねえ。絶ッ対ェ連れ戻す!
だから大丈夫っスよ。イヌピー君。」
「連れ戻すって…どうやって…」
「……それは…これから…考えます」
「ふっ…なんだソレ…」
「ちゃんと考えますよ!!(汗)
何笑ってんスか!?俺本気っスよ!!?」
「降ろしてくれ 花垣。」
「全然信用してないっスよね!?」
「ついてこいよ」
降ろされたイヌピーはタケミっちをあの場所へ連れて行った。
「ここは…」
「俺とココのアジトだ。」
「アジトってゆーか廃墟…」
「入れよ。傷の手当てぐれぇは出来る…、!」
「?、イヌピー君?」
バンッ!!
Σ「イヌピー君!?」
鍵を開けようとしたイヌピーは先客に気付き
荒々しくドアを開けて入り、タケミっちは驚いた。
然し中に入るとさらに驚く。
イヌピーとココのアジトに瀬里奈がいたから。
「瀬里奈テメェ!!」
「イヌピー君!?」
中に入るや否や、煙草を吸っていた瀬里奈に
イヌピーは胸ぐらを掴んで瀬里奈は煙草を落とす。
何故ここに瀬里奈がいるのが分からないが、
それ以上に取り乱すイヌピーにタケミっちは戸惑った。
「……ボロボロだね、イヌピー。
手当てしてあげよっか?」
「テメェがいつ迄もココを…」
「ココがどうしたの?」
「ココは金目当てで天竺に連れてかれた!
最悪の犯罪組織を作るために!
五番隊の武藤が東卍を裏切って!!」
「……そっか、ココとバラバラになったんだ。
可哀想だね、ずっと2人でいたのに…」
瀬里奈はソッとイヌピーの火傷の痕をなぞった。
「瀬里奈さん…どうして瀬里奈がここに…
勝手に外出たらまたマイキー君が心配して…」
「うん…少しここの空気吸いたかったから。」
「?、それってどういう…」
「イヌピー。ココの事は残念だけど、
それはアタシの所為なの?
黒龍でも散々頼って使ってたのはイヌピーでしょ?」
「ッ……!」
「アタシはココが頼ってきたから手伝っただけ。
そうだよね?イヌピーが少年院にいる間も
ココはお金を集めてくれてた。
そのおかげで黒龍の再建は直ぐに出来たんだから。」
「そ、れは…!!」
「真一郎のこの場所も、黒龍も、
イヌピーが勝手に何かしてもアタシ黙ってたよね?
それなのにイヌピーは全部アタシの所為にするの?」
「真一郎くんの…?」
「ここは真一郎のバイク屋だった場所…
場地と一虎が真一郎を殺した場所だよ。」
Σ「ぇえ!?(汗)」
「イヌピーが何しようと許してあげる。
だってイヌピーも辛かったもんね、
アタシ達ずっと支え合ってきたよね?」
「瀬里奈さん…?」
「でもそれももう終わり…全部バレちゃったから…
全部空っぽになりたいのに…まだ駄目なのかな…」
「瀬里奈さん…何言って…」
「…マイキーに知られたのか?」
「………終わると思ってたけど、ダメだった。
ダメなのに嬉しいんだ アタシ…」
「瀬里奈…」
「だから私から終わらせたいけど…
私はマイキーのモノだから側にいるの。
勝手にいなくなっちゃダメだから…」
「モノってなんだよ…分かってるならお前から切れよ!
終わる終わんねえどっちなんだよ!!
マイキーの為ならその為にしろよ!!」
「イヌピーには分かんないよ。
アタシにはそうするしか気持ちが埋められない…」
「なんで…!他に方法はあるだろ!?」
「タケミっち」
「は、はい…!」
「マイキーの事、よろしくね。
君は真一郎に似てるらしいから…
アタシには分からないけど。」
「え…」
「どこ行くんだよ瀬里奈!」
「マイキーのとこ帰らないと。
アタシがいないとダメなんだ マイキーは。」
瀬里奈はそう言って笑顔を向けて部屋を出て行った。
その後タケミっちはイヌピーから瀬里奈の話を聞いた。
2人は真一郎繋がりでバイク屋にいたらしい。
瀬里奈がココに裏の仕事を斡旋していた事に
タケミっちは信じられなかった。
ココと瀬里奈が未来の犯罪組織に繋がっていた。
イヌピーにとってココがどれだけ大切なのか
それは瀬里奈に対してもイヌピーは大切だった。
ずっとマイキーだけで自分を見てはくれなかった。
こうやって言い合う事しか出来ない自分が情けなかった。
黒龍を再建するって言って頼る事しか出来なくて
結局は悪い方向に進んでいく自分が嫌いだった。
2人を救いたいのがイヌピーの願いだ。
それをタケミっちはしっかりと受け止めて
黒龍十一代目総長になる事にした。
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