空っぽ
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2月22日 黒龍創設の日
瀬里奈はマイキーとエマと一緒に
真一郎の墓参りに向かっていた。
そして今日 おそらく天竺とやりあう日になる。
弐番隊隊長の三ツ谷と四番隊隊長のスマイリーが
黒龍からバイクで不意打ちにパッドで殴られ
意識不明の重体で入院中 三番隊は不在
伍番隊のムーチョは天竺に寝返っている。
皆が汚いやり方の黒龍への怒りと
隊長のいない不安から自分らも卑怯な手で
天竺を襲おうと声を上げたが、
弐番隊副隊長のペーやんと
総長であるマイキーによって保たれた。
そして東京卍會壱番隊隊長兼黒龍十一代目総長となった
タケミっちはイヌピーと挨拶しに真一郎の墓に来ていると
「黒龍創設の日に十一代目誕生か…
おもしれー。お前が花垣武道か!」
「?(なんだこいつ…)」
「イザナぁ!テメェ!!(怒)」
黒川イザナが一人で現れた。
「テメェ ココをどうするつもりだコラ!!?(怒)」
イヌピーはいきなりイザナの胸ぐらを掴んだ。
「オイオイ。どうするつもりも何も
アイツの方から天竺(うち)に入ってきたんだぜ?」
「ッ……!!」
「……離せよ…俺は兄貴の墓参りに来ただけだ。」
「ちょっと…イヌピー君…(汗)」
「九井が手に入った今…お前にキョーミねぇよ乾。」
「テメェ、」
「やめとけイヌピー」
「!、マイキー君!!」
「え?何なに?」
「……」
マイキーが瀬里奈とエマを連れてやってきた。
「へー。仲良く"兄弟"で墓参り?
彼女まで連れちゃってさ。」
「マイキー」
「あ…」
「……タケミっち。エマと瀬里奈連れて離れてろ。」
「……え…」
タケミっちはマイキーに言われた通り
エマと瀬里奈を連れて
墓参りの敷地から出て道路の端にいた。
イヌピーは残り、イザナとマイキーの3人を見守った。
「……あの人がウチのもう一人のお兄ちゃん
"イザナ"だよね?これから、喧嘩するんでしょ?」
「……多分…」
「…男の子ってなんで喧嘩ばっかするのかな?」
「え?」
「"東京卍會総長"、"無敵のマイキー"。
マイキーは人前で強い所しか見せない。」
「!」
「兄貴が死んだ時も、場地が死んだ時も。
どんな時も弱い顔は見せないのがマイキー。誰にも。」
「……確かに、そうだね。」
「でも、ホントのホントは
今でも使い古したタオルケット握り締めてないと
寝れない弱い男の子。君やウチと一緒。
彼女にベタ惚れで甘えん坊で片時も離れたくない
嫉妬の激しいごく普通の男の子。
だからどっかで張り詰めた糸が切れちゃった時、
その時はウチが絶対マイキーを助けてあげるんだ!
マイキーがそうしてくれたみたいにね!」
エマはそう言って笑顔を向けた。
「ね、瀬里奈」
「……うん。」
「ふふっ ちょっとかっこつけすぎかな?」
「そんな事ないよ。アタシも弱いから
エマがずっと居てくれたらきっと…」
「あれ…?」
瀬里奈とエマが話していると
タケミっちは未来で起きた事を思い出す。
マイキーの一番の理解者で支えているエマ。
此処ではエマも瀬里奈もいるのに
未来のマイキーは苦しみしかない人生と言っていた。
瀬里奈は未来でマイキーに殺されている。
然し、エマは未来で一度も
会ったことがなかった。
「何か飲む?」
「あ、うん。」
「寒いよね、アタシも飲も」
エマと瀬里奈は自販機で飲み物を買った。
年下に出させまいとタケミっちの分は瀬里奈が買った。
歩道を渡っていると猛スピードでバイクの近付く音がした。
「うおぉおおお!!」
「稀咲!!?(汗)」
「エマ…、」
一瞬バッドを持つ稀咲の顔が見えて
瀬里奈は自分の持っていた飲み物を落として
エマの服を掴んで端に逃げようとしたけど
バイクが通り過ぎる風と共に
金属バッドが何かを打った高い音が響き、
掴んでいた手が勢いよく離された。
目の前でエマが倒れて瀬里奈は呆然とする。
稀咲はエマの頭をバッドで殴り、
それを確認して走り去ってしまった。
「エマ……?」
「エマちゃん?(汗)はぁ…はぁ…!!」
タケミっちも混乱していて息が乱れている。
「エマちゃん…?エマちゃん……」
駆け寄る事も出来ず立ち尽くす瀬里奈の横を
ゆっくりとタケミっちが通り過ぎて
エマの前で膝付き優しく抱き上げた。
頭から血が出ていて目は閉じたままだった。
何度もエマの名前を呼んでいた。
そしてタケミっちは気付いた。
ドラケンを救っても、一虎を救っても、
稀咲を東卍から追い出しても、柴大寿を救っても、
結局何も変わらなかったのは
この瞬間 エマを失っていたからだった。
「エマちゃん、目覚ましてよ…エマちゃん、
過去で…こっちで死んじまったら
救えないんだ…っ、エマちゃん!!」
「…過去……?」
タケミっちの意味不明な言葉の目の前のことに
思考が追い付いていない瀬里奈の隣にマイキーが立った。
「エマ?」
呆然と立ち尽くすマイキーも
目の前の光景を直ぐには理解出来なかった。
自分の妹が倒れていることに。
「ゴメン…マイキー君…オレ……」
「何があった?」
「……」
「……バイクが突っ込んできて、
エマちゃんが跳ねられました…」
「……は?」
「稀…稀咲に…」
「タケミっち!」
「!」
「乗せて!」
マイキーはしゃがみ込み
タケミっちは言われるがまま
エマを抱えてマイキーの背中に預けた。
マイキーはエマをおぶって歩き出し、
それにタケミっちはついて行った。
イザナはいつの間にかいなくなっていて
瀬里奈とイヌピーは立ち尽くしていた。
「瀬里奈、俺たちも追うぞ…」
「……」
「瀬里奈、」
「…そうだよね、アタシが死のうが生きようが変わらない…
マイキーの事、怒ってあげられないから…
だから…いてもいなくても変わらない……そうでしょ…?」
「……」
瀬里奈はそう呟くとフラフラとマイキー達について行った。
イヌピーは瀬里奈に声を掛ける事も出来ず、
黙ってその隣を歩いて行った。
ーーーーーー…*°
「安心しろ、エマ。もう直ぐ病院だから。」
マイキーは声をかけながら病院に向かっていた。
「……マイキー?」
「!、エマちゃん!!?」
「…あれ?体が…動かない…、
……そっか…ウチ…バイクに……」
「……覚えてるか?エマ。
お前が5歳の頃 俺の事追っかけて
ジャングルジムから落ちて足追ってさ
あの時以来だな。お前をおんぶするの。」
「……ねェ?」
「ん?」
「ウチにもしもの事があったら、」
「バーカ。もしもの事なんてねぇよ。」
「ドラケンに伝えて。
ケンちゃん愛してる。って」
「……自分で伝えろ。」
「……タケミっち、」
「うん!」
「マイ…キーを、お願い…ね?」
そう言った瞬間、自分の手を掴んでいたエマの腕が
力なくほどけてしまった。
「エマ…ちゃん?」
「エマっ…エマ!?あのさっ
秘密にするってケンチンと約束したけど…
ケンチン、お前の事好きなんだぜ。
両想いなんだ。だから、病院ついたら
すぐ ケンチン呼ぶから。な?エマ!エマ…?」
マイキーが声を掛けても返事はなく
重みだけがのし掛かった。
「……………タケミっち…」
「…はい」
「俺の上着…エマにかけてやってくれ」
「え?」
「エマが、なんか…冷てぇんだ…」
「ッ……マイキー君っ!」
タケミっちは涙が溢れ出した。
「オレの夢は…いつかお前に、子どもが産まれて、
ケンチンが家を建てるんだ。
オレが遊びに行くと、ケンチンはお前の事ほったらかして
酒、飲みながらもう何度も話した昔話で盛り上がる。」
「マイキー君…!」
マイキーは返事のないエマに話し続けた。
「瀬里奈も呼んで、夜中まで居座ってさ、
そのうち三ツ谷とかタケミっちとか呼んじゃって、
もうドンチャン騒ぎでさ、赤ちゃんが起きちゃって…、
お前はオレにブチギレられるんだ…」
マイキーの話にもう聞こえていないはずのエマの表情は
柔らかく目に涙を溜めていた。
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