兄弟










バイクを降りてマイキーが先に歩き出す。

瀬里奈もついて行くように歩くと
イザナの背中が見えてその前のタケミっちは
ボロボロなのに目は死んでなくて
マイキーに気付いて力強く拳を上にあげていた。



「オレ…負けなかったっスよ……総長!!!」



全員が唖然として驚いた。
妹を亡くして失意のどん底で
戦える状態じゃないはずなのに。



「少し…タケミっちと話させてくれ。」

「来てくれたんですね…」

「ありがとう タケミっち。」

「マイキー君……でもなんで…?
とても来れる精神状態じゃなかったハズ…」



バイク音がして瀬里奈の横をドラケンが通る。



「ドラケン君!!?なんで二人とも来れるんだよ!?」

「降りなよ ヒナちゃん」

「え!?」



ヒナはバイクから降りてタケミっちの前に立つ。



「ごめん、タケミチ君。来ちゃった。」



ヒナはタイムリープの事をタケミっちに説明をした。
タケミっちはまさかタイムリープの話をして
二人が信じるなんて思いもせず驚いて
そして直ぐにさっきまでの病院での様子が頭をよぎった。
来てくれた事は嬉しいがあの精神状態で戦えるの心配になった。



「どうするよ?マイキー。
天竺はまだ半分くらいは動けそうだぞ。」

「半分か…200対2って事だな。」

「あぁ…」

「ハンデいる?」





       「「「「「!!?」」」」」





マイキーの余裕の挑発に天竺のモブが声を荒げる。
然し、マイキーはそんなのお構いなしだった。



「テメェらこそ馬鹿にしてんじゃねえのか?
俺を誰だと思ってんの?200人?2万人連れてこい!!」

Σ「「「「「2万!!?(汗)」」」」」



マイキーの堂々とした姿に東卍は涙が滲み出る。
戻ってきた総長の姿がかっこよかった。
そんな彼らの方にマイキーが振り向いた。



「どうした?オマエら。楽しめよ!!祭り(喧嘩)だぜ!?」



マイキーの姿を見て瀬里奈は少し
柔らかい表情で見つめていた。
ドラケンも煽りの声をあげて
声がデカいとマイキーに笑われる。

いつものように2人は振る舞っていた。

2人を見つめているとタケミっちがヒナの隣に立つと
ヒナの隣にいた瀬里奈はそっと半歩下がった。



「……ありがとう ヒナ。」

「え?」

「オレじゃぁ二人を立ち直らせる事なんて出来なかった。
ヒナの真っ直ぐな想いが二人の心を動かしたんだ。」

「…違うよ タケミチくん。
想いだけじゃ人は動かない。」

「え?」

「君の必死な姿が皆んなの心を動かしたんだよ。」



ヒナがそう言うと二人は手を繋ぎ握りしめた。
二人の話を聞いても瀬里奈はその想いなんて分からなかった。

東卍と天竺

どちらかといえば自分はイザナや稀咲のような
人の心なんて理解していない人間だ。

あぁ…また浮遊感があってボーッとする。
今すぐマイキーにしがみつきたい程に。
なのにマイキーは自分より遠い場所にいた。
実際の距離よりこの時は遠くに感じた。











ーーーーーー…*°




「嗚呼…耳鳴りが始まった。
どんなトリックを使ったのか知らねぇけど、
計画が狂っちまったなぁ?稀咲。」

「……」



イザナは稀咲にそう言うと一歩を強く踏み出して
一気に距離を縮めてマイキーに蹴りを入れた。
そのスピードに皆んな驚くが、
マイキーはしっかり防御をしていた。



「真一郎を亡くし、エマを亡くし、
どうだ?空虚(カラ)になった気分は?」

「カタつけようぜ 兄貴(イザナ)」

「……どーやって立ち直った?」



マイキーの瞳にイザナは純粋な疑問を抱く。
まさか背中を押してくれたのは
未来から来たタケミっちだとは思わないだろう。
ここで引いたら東卍の未来が悪に染まる。
それを阻止する為に来たなんて誰が思うだろう。

すると、ドラケンがタケミっちの隣に立った。



「"未来から来た"…か。
嘘みてえな話だけど、ずっと必死なお前を見てきたからな…」

「ドラケン君」

「信じるよ。オレとマイキーがお前の両腕になってやる。
お前はやるべき事を成し遂げろ!!」



タケミっちのやるべき事。
ヒナを救う為に稀咲を殴る事。

稀咲に力を与えてしまった私はこの時
ああ、全ての元凶は私だったんだなって
すでに悟っていたんだ。

マイキーはこんな私でも許してくれる。
もう私にはマイキーから離れる事は出来ない。



「うぁお!すげー蹴りだね!!マイキー!!」

「!!」ドッ

「崩した体勢からでもこの威力!?やべーな!!」



イザナは楽しむようにマイキーの蹴りを受けていた。
そして二人の蹴りが混じり合い間合いを取る。
奇しくも二人の戦闘スタイルは同じ蹴りを得意としていた。



「天性のバネとバランス感覚!
"無敵"と謳われるだけあるな。
いーね!久しぶりに気圧(テンション)が上がる!」



するとマイキーが飛び出すとイザナの蹴りが顔に入った。



「でももう見きっちまった。」



マイキーが蹴り倒される姿は全員にとって初めての事だった。
圧倒的戦才(センス)それこそがイザナの魅力(カリスマ)



「"暴力(チカラ)"で全てをねじ伏せてきた。
計画が狂っちまった以上しょうがねえ!殺してやる。」



イザナの目は狂っていた。

マイキーは立ち上がって直ぐにイザナに蹴りにかかる。
然しそれも受け流されて拳が左目に当たる。が、
マイキーは吹き飛ばされず留まる。



「一つ聞かせろ。」

「?」

「なんで妹(エマ)を殺した?」

「…マイキー。オレの秘密を教えてやる。
真一郎はオレの思う"理想の兄"になってくれなかった。
そしてお前の部下が殺しちゃった…だから決めたんだ。
オレはオマエを灰にして、真一郎(お兄ちゃん)にする!
だから早く空っぽになれよ。」

「……そんなんエマを殺した理由になんねぇだろ?」



そう言うとイザナはマイキーを蹴り飛ばした。



「オマエが全て奪ったんだよ!万次郎!!
だからオレは…オマエも殺す。」



イザナは続けてマイキーを殴りにかかる。



「マイキー君!!」

「バケモンか!?黒川イザナ!!」

「どーしたマイキー!!?
テメーの本気はこんなもんか!?」

「…マイキー君 まさか…
手ェ抜いてるってことはないっスよね?」

「………マイキーは全力だ。
それだけ黒川イザナが強えーんだよ。」



黒川イザナの強さは孤独と右腕の鶴蝶は話した。

12の時 集団に襲われて重症を負ったイザナは、
回復後一人ずつお礼参りをして全員再起不能。
そして最後に襲った集団のリーダーをツメて
自分だけでなく仲間や家族にも手を出すと脅され
追い詰められたリーダーは首を吊って自殺した。

ここにいる集団の中に喧嘩で人を殺したいなんて
口には出しても実際に殺したいとは思っていない。
然し、イザナはそうではなかった。
他人に興味のないイザナはこれ以上やったら殺してしまう
そういうリミッターがなく、殴り続ける。
人を殺す拳だから強い。



「オイ!マイキー!!マジかよ!?
これがオマエの実力か!?本当に殺しちまうぞ!?」

「…他人に興味がねー…か」



殴られ続けてもマイキーは立ち上がり、
口に溜まった血を唾を吐くように吐き捨てると、
蹴りがイザナの顔まで上がり寸前で止めた。



「オマエの為に戦った仲間もか?」

「オレの為に戦った!?ハハ ちげーよ。
オレが怖ぇーから戦ったんだ。
東卍(テメーら)のガキのママゴトと一緒にするな!
天竺にあるのは恐怖と利害のみ!!
信頼や友情なんて実のない幻想だ!!」



イザナはそう言いながら蹴りを回すが、
マイキーは受け身を取ったり交わしたり出来ていた。



「!?、なんか…さっきまでと違う
イザナの動きが悪くなってる…?」

「ああ。…マイキーの蹴りをあれだけ受けたんだ…
イザナの手足は、おそらくボロボロ。」

「………え?」



戦況が変わる。



「オマエは…どこまで自分を孤独(ひとり)だと決めつける?」

「、真一郎もエマも死んだ。オマエも孤独だろうが!!」

「違うよイザナ。オマエにはまだ弟(オレ)がいて、
オレには兄(オマエ)がいる。
兄貴(イザナ)…オレはオマエを救いたいんだ。」



マイキーはまだ知らない。
イザナの秘密を。