追悼
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「この度は妹 エマの…」
数日後 エマの葬式があった。
祖父の代わりにマイキーが喪主として参列者に挨拶をする中、
普段着崩している不良達も今日だけはボタンをピシッと留めて
きちんと背筋を伸ばし、正座をして一点を見つめていた。
参列者の中にはエマと同級生も混ざっていて
彼女たちは現実を受け止めきれない程、涙を泣き鼻をすすっていた。
瀬里奈は下を向いていてサラリと白い髪も流れて表情が読めなかった。
一人一人お香をあげにエマの前に座る中、
ドラケンがエマの前に座り、お香をあげると
向きを変え、マイキーとエマの祖父の方へ体を向ける。
「エマさんを好きでした。」
そう言ってドラケンは頭を下げた。
「申し訳ありません。彼女を守れなかった。」
土下座をするドラケンを前に表情を変えないマイキーに対して
祖父は、
「そうか…オマエも好いとったか…
アイツもきっと浮かばれる」
そう言って微笑んだ祖父にドラケンは涙をこぼし
こらえるように漏れた嗚咽が静かに響いた。
葬式が終わり、エマは火葬された。
マイキーはずっと静かで葬式の片付けを瀬里奈は手伝ったが
その間も話す事なく慣れない片付けをして
全てが終わった時に声をかけられた。
「瀬里奈、今日はありがとう」
「ううん。お爺ちゃん腰悪いし、
マイキー1人じゃ大変でしょ?
喪主までやって、しっかりして見えたよ。」
「………今日は俺…」
「うん。お爺ちゃんと一緒にいてあげて。
私なら大丈夫だから。」
「…ありがとう」
マイキーは少し申し訳なさそうにお礼を言った。
今日は彼の新鮮な姿が見れた日だった。
葬式なんて初めて出たがあんなにも
居心地の悪いものなんだと知った。
自分を取り囲む啜り泣く音が耳障りで仕方なかった。
悲しみで溢れる空間の中に自分だけ取り残されていた。
あの時掴んだエマの服の感触なんて忘れてしまった。
あんなに良くしてくれた彼女に対しても
自分の感情はそんなものなのだろう。
「…イヌピー」
瀬里奈が自分の家に帰ると
アパートの階段下でイヌピーが立っていた。
お互い葬式に出た後だからイヌピーはスーツ
瀬里奈は久々にブレザーに腕を通して
ネクタイは帰りながら少し緩めたから乱れていた。
今日は寒いから正直早く中へ入りたい。
「今度は何の用?」
「さっきココと会った。
俺たちは別々の道を歩く事にした。
だからお前ともこれで最後にする。」
「そっか。大人になったんだね。」
「お前はいつまでしがみつくつもりだ?」
イヌピーの言葉に煙草に火をつけようとした手が
ピタリと止まった。
「………何?自分がスッキリしたからって
今度は私のお節介?」
「違う。……お前が心配なんだ。
他に方法はないのか?お前が親父の尻拭いしなくても
下っ端なんて駒同然でムショから出た所で
ろくな生き方出来ねえようなヤツ
さっさと縁切っちまえば……」
イヌピーは瀬里奈の視線で言葉を言い切れなかった。
冬の夜のような冷たく刺さるような目に
これ以上言うなと直ぐに分かったからだ。
「イヌピー…イヌピーが私を心配してくれるのは
ホントに私のことを心配してるだけ?」
「え…」
「気付いてないとでも思った?」
瀬里奈が言うソレはイヌピーがずっと
思ってたとしても決して口に出来ない感情だ。
「……お前はマイキーのモノだから
言わないつもりだった。俺は裏切るつもりはない。」
「ふふ…健気だね。」
「誤魔化すなよ。俺がお前をどう思ってようが
心配してるのには変わりはないし、
お前の今の生き方は真一郎もマイキーも
望んじゃいねえはずだろ。
お前が大事にしてる2人を裏切ってまでする事か?」
「…真一郎の悲しみはマイキーで埋められた。
でも、私の始まりは殺さないと終われないんだよ。」
「なっ…」
「尻拭い?笑わせないで。
アイツと同じ世界に入ったのは力が欲しかったから。
懇願して命を乞うぐらい何もかも後悔するくらい
ボロ雑巾のように痛めつけて最後は捨てるの。
愛で埋まるものとは別物なんだよ。」
「……それにマイキーを巻き込むのか?」
「出来れば巻き込みたくないよ?
でもマイキーは私を必要としてくれるし、
私もマイキーを必要としてる。」
瀬里奈はいつもの台詞を吐いて笑顔を見せた。
その表情にイヌピーは何も言えなかった。
この時に自分が代わりにやってやるなんて、
そんな事言えなかったからだ。
「矛盾してるでしょ?」
「ああ、イカレてる…」
「常識だった頃なんて一度もないよ。
寒くなって来たしそろそろ部屋入るね。
今日で最後なんだっけ?」
「ああ」
「そっか それは寂しくなるね。」
「思ってもない事を言うな。」
「ホントだよ?イヌピーの事 大好きだから。」
「……そうかよ。元気でな 瀬里奈。」
イヌピーはそう言って背を向けて去って行った。
刺さるような冷たい空気が瀬里奈の髪を揺らした。
嘘はついてない。
むしろ全てを話したのはイヌピーだけだろう。
そうだとしても彼では代わりにはならない。
自分を満たしてくれるのはマイキーだけだ。
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