もう一つの家族









トントンッ
「ユィ殿 着きました」

「!」







アジア支部を出発してから 13日が経過して 船を乗り ようやく 黒の教団総本部に辿り着いた。崖の上に聳え立つ姿は悪の教団のようでユィは思わず ゴクリと息を飲んだ。

船を降りるとバク支部長のような白いローズクロスのマークがある白い服を着た ニコニコと笑う男性と科学班であろう白衣を着た男が数人いた。



「「「「ようこそ!黒の教団 総本部へ!!」」」」



全員がニコニコと笑ってユィを迎えて ユィは真ん中にいた白いローズクロスの男を見て 迎えてくれたのだろうと思った。



「俺は戻るぞ コムイ」

「うん!神田くんありがとうね!」

「ワンもテクも休んでくれ」

「「ありがとうございます」」



ユィ以外の3人は先にスタスタと歩いて行った。



「初めまして ユィちゃん 黒の教団本部室長のコムイ・リーですっ よろしくねー」

「…よろしくお願いします」

「じゃあ とりあえず室長室に行こっか リーバー君 荷物持ってあげて」

「うす 科学班班長のリーバー・ウエンハムだ よろしく」

「?、あ…荷物…」

「室長室まで持ってくよ」

「あ、ありがとうございます…」



ユィは班長のリーバーに荷物を持ってもらい 3人で室長室に向かった。ユィはキョロキョロと教団の中を見ていた。そこでコムイはリーバーに先にユィの部屋に荷物を運ばせ 一箇所一箇所立ち止まってユィに科学班フロアや食堂などを案内した。

そして室長室に着くと あまりの書類の散らかりように戸惑った。頑張って紙を踏まないようにしようとしてもどう考えても無理で コムイの踏んだ後を辿るように歩いた。が、



ズルッ ドテ!!
「ふひゃ!!」バサァア!!

「ユィちゃん!!?(汗)」



ユィは紙を滑らせて お尻を打った。紙がバラバラと宙を舞い ユィは痛そうにお尻から腰を押さえた。



「(痛い…(汗))」

「バクちゃんが言った通り 少しドジッ子なんだね(笑)怪我はないかな?」

「な…いです」


コムイに手を差し出され ユィは手をとってスッと立ち上がった。コムイはニッコリとユィに笑いかけるが どこかユィは戸惑っていた。今までは子どもの頃からいたアジア支部だから感じなかったが 実は人見知りだった。しかも難聴だと自分の声が聞こえないから初めての人と話すと変な声じゃないかとか不安がよぎってしまう。



「そこのソファ掛けてね さっそくバクちゃんに到着連絡するからっ」

「はい…」



コムイはガチャガチャと黒電話にナンバーを押して アジア支部に連絡をかけた。



『もしもし!コムイか!』

「あ!バクちゃーん ユィちゃん無事に教団ついたよー」

『そ、そうか!良かった!怪我などはしてないか!!(汗)』

「大丈夫みたいだよ 長旅だから少し疲れているようだけれど 今日はゆっくり休んでもらうから安心してね」

『当然だ!そっちの科学班みたいに何日も風呂入らず働かすような事はやめろよ!!(怒)』

「そうだ 良かったら電話する?僕通訳するけど」

『い、いいのか?』

「うん ユィちゃんおいでー」コイコイッ

「?」



コムイに呼ばれ ユィは席を立つと受話器を渡された。



「わたし 電話は…」

「僕が通訳するから大丈夫だよ」

「!、……バク兄様…?」

『!、ユィ お疲れ様 無事で何よりだよ』

「お疲れ様 無事で良かったって」

「うん… 大丈夫」

『かなり疲れてるようだな?ちゃんと寝たか?』

「結構疲れてるみたいだけど ちゃんと寝れたかだって」

「電車慣れてないからあんまり…」

『何!?す、すぐ寝ろ!睡眠は大事だ!(汗)』

「睡眠は大事だからすぐ寝なって」

「うん 分かった」

『コムイ しっかり休める部屋を頼んだぞ!ユィ!何かあったらすぐ連絡がするように!』

「何かあったらすぐ連絡してってさ」

「うん ありがとう」

『……コムイ もう大丈夫だ。疲れてるのに長電話させるわけにはいかないからな』

「いいの?5分も話してないよ?」

『無事なら何よりだ』

「そっか ユィちゃん バクちゃんもう切るって」

「ありがとうございます コムイ室長」

「そんな硬くなくていいよ じゃ バクちゃんまたねーばいばーい」

『バクちゃんと呼ぶな!!(怒)』ガチャン!



ユィはバクの声を聞けて少し顔が柔らかくなった。


そして一つ気になる事を聞く。



「あの…どうして バク兄様にはフルネームなのですか?」

「ん?ああ!バク"ちゃん"ね!フルネームじゃなくてユィちゃんとかのちゃん付けの愛称さ!」

「そうでしたか…」

「しばらく慣れないかもしれないけど 難聴の事は君が働く医療班の婦長とドクター 科学班のリーバー班長が伝達していると思うから安心してね」

「はい ありがとうございます」

「仕事は明日からで良いから 自室に案内するね!」

「はい」



その後ユィはコムイに自室を案内され すでにリーバーが運んだ自分の荷物があった。現在の時刻はAM 9:30で十分時間があり コムイに浴室も案内してもらい 身体を清めてから朝食を取り 自分の荷物解きをして 部屋で漢方薬を作っていた。



ユィの部屋の内側にはノック音が聞こえないユィの為に科学班が作ってくれたライトが付いてあり ノックをし 扉の振動で明かりが点く仕組みとなっていた。これで部屋を閉めてても安心に入れる。











今日から始まる黒の教団 総本部勤務。








ここでユィは様々な事を経験し悩み学んでいく。







それは喜び怒り哀し楽し全ての事。








愛までも。