二人の妹
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ゴリゴリゴリ… ザラザラ…ガンガンッ
ユィは薬剤師として職場を一室貰い 頼んでいたアジア支部からの荷物が届いて 漢方薬を製造していた。届けられた荷物からはバクからの手紙が巻物で送られてきて いつ読めるだろうかと悩まされた。そしてすぐに医者としての力を見せつけ 探索班や科学班から信頼を得ていた。薬剤師として勤務しているものの 針治療や科学分野でも活躍しており、助けを求める科学班がやってくる。
トントンッ
「ユィ」
「?、リーバー班長 漢方薬ですか?」
「いや 頼みたい仕事があって頼めないか?今 こっち手ェいっぱいなんだよ(汗)」
「今調合している薬 終わらせたいので 10分貰えませんか?」
「ああ 勿論 10分後 フロアに来てくれ」
「はい」
リーバーはそう言うとついでに睡眠打破の飲み薬を貰って部屋を出て行った。
ユィはゴリゴリとすり鉢で漢方薬を調合し 錠剤へと形を精製させて 乾燥させる為に 一つ一つ窓際に並べて行った。そして科学班フロアに移動する。桃色の中国服の上に白衣を纏って歩いていると比較的目立ち キラキラと揺れる左耳のピアスが光に反射して輝いていた。
科学班フロアに行くと 皆んな疲れ切った様子で でも慌ただしく作業していた。
「リーバー班長」
「あ、きたきた!悪いな!」
「いえ、何を調べれば…」
「これ頼む!」バサッ
「分かりました」
「悪いけど 頼んだ」
「いえ、自分の職場でやって大丈夫ですか?」
「勿論」
「期限とかは…」
「きょ、今日中に頼む…(汗)」
「分かりました」
ユィが渡されたのは物理学の計算式数種類と考古学の解読と中国語の巻物の英訳だった。これを今日1日で終わらさなくてはならないのかと思うとゾッとした。アジア支部でのお手伝いは本当にお手伝い程度だったのにここでは丸々渡された。
「……(よし!)」グッ
ユィはグッと拳を握り締めて 自分の職場に戻った。
ガリガリガリ…
ガリガリガリガリ…
ガリガリガリガリガリ……
ユィは取り敢えず 英訳から進めていた。たった1人の部屋で集中して下を向いて作業をしている為 周りからはシャットダウンの状態だった。そんな部屋の外からノックオンが鳴り ユィ専用のノックライトが点灯したが ユィは気付いていなかった。
ガチャッ
「失礼しまーす…、あ!いた」
部屋に入ってきたのは身体に包帯を巻かれたコムイの妹のリナリーだった。サラサラの黒髪にツインテールが特徴的な数少ない女性エクソシストだ。任務から帰って来た後 コムイからユィの話を聞き 挨拶しに来たのだろう。
トントンッ
「ユィ?」
「ひやあ!!!(汗)」バサガタドテッ!
「ゆ、ユィ!!?(汗)」
不意打ちに背中から話しかけられ 2回の合図でさえも驚き ユィは書類をばら撒き 椅子から滑り落ちた。あまりのリアクションの大きさにリナリーまでも驚いて心臓がばくばく鳴っていた。
「ご、ごめんなさい…!驚きましたよね…!(汗)」
「ゅ、ユィこそ大丈夫?ごめんね 声をかける時肩を叩くように兄さんに言われてたからそうしたんだけど…」
「?」
「あ、ごめんね 私 リナリー・リー。室長の妹なの。エクソシストよ」
「エクソシスト…貴女も…?」
「ええ アジア支部のバク支部長の妹さんのユィでしょ?さっき任務から帰ってきて 兄さんから聞いたの すぐ会いたくなっちゃって来ちゃった♪」
「あ、ありがとうございます… ユィ・メイ・チャンです」
「宜しく ユィっ!ね、敬語やめよう たぶん年齢変わらないから」
「あ、よ、よろしく…// (そういえば兄様がリナリーの名前よく寝ぼけて言ってたような…(汗))」
ユィはニコニコと笑うリナリーに手を差し伸べられ 立ち上がり 自分より背の高くて綺麗なリナリーに笑いかけられると照れくさくなってしまった。だが リナリーの姿を見ると所々包帯が巻かれている事に気がつく。
「リナリー 怪我… 包帯変える?痛い?」
「少し痛むけど大丈夫よ 包帯は変えてもらおっかな」
「うん」
ユィはリナリーの腕と足に巻かれた包帯を変える事にして散らばった書物を机に置いた。
「もしかして仕事中だった?」
「?」
「あ、仕事中だった?(タイミング気をつけなきゃ//)」
「うん リーバー班長のお手伝いで… でも今日中までまだ時間あるし大丈夫だよ」
「科学班のお手伝いもしてるんだものね 凄いなあ」
「エクソシスト以上に凄い人いないと思うよ」
「え?」
「わたしと年齢変わらない人たちがAKUMAと命掛けて戦って…こんなに怪我して…わたし達は仕事し続けても医療班がすぐ近くにいるから死ぬ恐怖はないもの」
「ユィ…」
「こんなに必死になってる人たちが沢山いるのにわたしはアジア支部を離れるのが凄く嫌で 兄様から飛び出して国宝の壺割っちゃったんだ」
「こ、国宝…(汗)」
「だからリナリーはわたしより全然強いよ。わたしはアジア支部で甘えてたんだからこれからは大人にならなくちゃ」
「ユィ…」
ユィはどこか寂しげに包帯を撒き続けた。そしてリナリーはその寂しい思いを一番理解する事が出来た。だって自分も離れたくないのに離れなくてはならない状況でここに来たのだから。でも自分の人生を語るにはユィには重すぎると グッと言葉を飲んだ。
「はい 出来たよ。出血まだ止まってなかったから 鉄分が含まれてる漢方薬と軽めの鎮痛剤渡すね」
「ありがとう」
ユィはリナリーに背を向けて 薬棚からガサガサと漢方薬を取り出し 透明の小袋に入れた。一般的な白い錠剤とは違って 黒い錠剤で飲むのが躊躇う色合いだが 中国出身のリナリーは慣れっこだから 問題は無いだろう。
「お大事に」
「うん 科学班の皆んなにコーヒー入れたりするんだけどユィもいる?」
「あ、ごめんね…珈琲苦手で…お茶ばっかなの」
「そう また来るね お仕事頑張って」
「うん リナリーもちゃんと休んでね」
「ありがとう」
リナリーはユィに笑って 部屋を出て行った。あまりの綺麗な笑顔に兄が惚れるのも当然かと思ったが歳の事を考えると妹と近い人を好きになるのかと 少し兄が心配になったが これを自慢するのは止めておこうと思った。
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