合流










「恵が心配だからサッサと仕事終わらせました。
ですが……

五条さんが行くなら必要ありませんでしたよね?(怒)」

「いやー、僕も丁度仕事が片付いてねー」

「だったら早く言えば良いじゃないですか」



17時に言われた通りに東京駅に向かうと
指定された席の隣に五条悟が座っていた。

栃木から向かうのでは無く、
態々討伐した呪詛師と呪具を引き渡しに
東京に戻る理由が一致して伊地知を殴ろうと思った。

この五条悟は昔から尊敬の尊文字も出てこない先輩で
七海とよく何であれが先輩なのだろうかと
ポツリと言葉を吐き出す事もある程の面倒臭い人物。
七海も大概だが自分もかなり振り回されており、
教師になり丸くなると思いきや全くだった。

雨寧は溜息を吐いて窓に肘をかけて頬杖をついた。
そして着くまで話さないように居眠りをしようとしたが
今朝の悪夢を思い出して寝る気が起きなかった。



「それに今回のはちょーっと気になるんだよね。
恵は勿論優秀で一年にして二級で入学したんだけど、
最悪なパターンを想像したら何となくね。」

「最悪なパターンって……、それ現実的な事ですか?」



雨寧が考える最も最悪なパターンを浮かべると
あまりにも現実的では無く、あるはずが無いとまで言える
呪術全盛 平安時代に呪いの王と呼ばれていた
両面宿儺の復活。



「うん。千年以上バラバラで封印されてるから
今更どうこう出来るわけでもないんだけど、
僕の直感?が何となく働くんだよね。」

「その最悪のパターンは全世界の最悪ですね。」

「そうならない事を願うよ。」

「………(宿儺か…)」



雨寧はまた頬杖をついて薄暗い中の
田んぼしかない町並みをぼんやりと眺める。

両面宿儺の指の回収は雨寧も半年前に一つしている。
長野県にある奥地の集落で廃れたお蔵に合った。
既に呪符はボロボロで三・四級程度の呪霊が複数
集まっていたが呪符のせいで取り込まずに集まるだけだった。

回収した時 指から感じる呪力に嫌な感じがしたのは
それ程強力な呪物だからだと雨寧は思っている。
然しその嫌な感じというのは
自分の中の呪力の更に深い所にある何かが
絶対的に拒絶している嫌悪感だった。



「(恵 大丈夫かな…)」

「仙台って福島の上なんだね。
僕 青森の下かと思ってた。」

「地理勉強し直して下さい。」



人が後輩の心配をしている中
その後輩の担任である男が脳天気で雨寧は呆れ
顔も見ずに冷たくあしらった。



「えー酷いなあ "サキさん"」

「………」



あぁ出たよと言わんばかりの雨寧の表情。
サキとは雨寧が男と会う時に使っている偽名だが
一つだけでは無い。



「サキにミカにカオリにアヤコ。
よく名前使い分けるよねー 男と会う為に。」

「本名使うと色々と面倒くさいので。
どうせ会うの一度切りなので名前も適当です。
同じ名前を使う事もありますし。私の勝手です。」

「七海に怒られるくせに。」

「七海はもう呆れてます。」

「もっと酷いじゃん(笑)
そんなに溜まってるなら僕でも良いのに。」

「冗談は顔だけにして下さい。」

「ちょっと、僕の顔の何処が冗談なの?」

「その黒い布の下はこっちの目がチカチカする瞳と
無駄に整っている顔立ちですよ。」

「僕のチャーミングポイントを冗談にしないでよ。
僕は割と本気だよ?昔から言ってるじゃん。」



五条はそう言って雨寧の前に腕を出して
窓に手をついて雨寧の顔に自分の顔を接近させた。
然し雨寧は動じず無表情で五条を見つめる。



「貴方こそ七海に怒られますよ。」

「それは確実だね。別に良いけど。」

「職場に手を出すともっと面倒なので遠慮します。」

「七海ともしてないの?」

「完全なセクハラですね。
しませんよ。七海に本当に嫌われますよ。」

「なんだー君ら済みなのかと思ったよー。
それより仙台って僕久々なんだけど
なんか名産とかあったっけー?」



五条はそう言って雨寧から身体を離し、
地方観光雑誌を開き土産特集に目を通す。
雨寧も横目で見るとトンッと一箇所に指を置く。



「コレ、美味しかったですよ。
喜久水庵の喜久福。ずんだ生クリーム味。」

「へー ずんだって何?豆?」

「枝豆です。甘みがあって美味しくて
仙台では有名ですよ。ずんだシェイクとか。」

「へー!じゃあ、此処の買おう!恵と合流前に!」

「え、恵 怒りますよ?」

「だってこの時間じゃお店閉まっちゃうかもでしょ?」

「………(恵にも終わったら殴らせよう。)」



雨寧はこのふざけた男にとことん呆れた。



そして暫く五条の無駄話に耳を傾け
一時間半程で二人は仙台駅に着き、
恵のいる仙台市杉沢第三高校に向かった。

駅近の喜久水庵に立ち寄ってから。






























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