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「……(あれは…宿儺と目が合ったと言えるだろうか…)」
巻き込まれた高校生も入院している杉沢病院の受付で
恵の付き添いで来ていた雨寧はあの時の事を考えていた。
五条を狙い放った宿儺の攻撃は雨寧と恵も
巻き込む形で放たれたのだが五条によって守られた。
その時 背を向けた五条の僅かにズレた場所から
宿儺を見ると彼とハッキリ目が合った。
自分の攻撃を制した事へと驚きとは別に。
然し偶々目に写っただけかもしれないと
胸もモヤを消し去る理由をつける事にした。
記述によると宿儺は女・子供を好んで殺したという。
女がいたと思っただけというのもある。
まぁ、呪力を計ったら恵より自分の方が強いのだが。
「大丈夫っすか?」
雨寧は思考をピタッと止めて、
下げていた目線を上に上げる。
「…恵がでしょ。」
伏黒は頭部に包帯がぐるりと巻かれ、
頬や口元にはガーゼや絆創膏が貼られていた。
怪我人から無傷の自分へ心配されるとは
雨寧も思ってもない。
足を組んで自分の膝に立て肘をつき顎を乗せ、
リラックスした状態で座っていた雨寧の隣に
恵はスッと座った。
「いや…なんか難しい顔してたんで…」
「んー?どーするのかなーって思って…あの器の子?」
「安曇さんは反対ですか?虎杖の事…」
「虎杖って言うんだ…。
まぁ、私は規定とかそういうのは気にしないけど
宿儺自体は苦手で…さっさと消えて欲しいかな。
指全部取り込んで綺麗さっぱりも良いけど。」
「苦手、ですか?」
「うん。私も指の回収した事あるけど
呪力の圧が凄くてさ。なんて言うか胸がムカムカ?
するんだよねー 生理的に無理みたいな。」
「安曇さんでもそういうのあるんですね…」
「あるよ。嫌いな物沢山。
揚げ物でしょー御三家でしょー任務でしょーそれとー」
嫌いなものを次々と言っていく雨寧に
恵の表情は少し柔らかくなった。
「あと安曇。恵 まだ私の事苗字で呼ぶでしょ?」
「それは…まぁ…」
「雨寧。呼んでみて?」
「え…今ですか?」
「なんで後日なのよ(笑)」
「ぁ…雨寧…さん…」
「うん。良し。じゃぁ、私は帰るね。
何しに来たんだって感じだけど。」
「ありがとうございました。」
「あ、そうだ。忘れる所だった。」
「?」
雨寧はポケットから取り出して恵に投げた。
手に取った物を見ると喜久福だった。
「恵の分。」
雨寧はそう笑って最終の新幹線で東京に帰った。
ーーーー…*°
特級呪物を取り込んだ罪として
死刑が確定されている虎杖悠仁は、
五条の交渉により、執行猶予が許された。
ただその執行猶予というのは
両面宿儺の指を全て取り込むまでだ。
すぐ死ぬか、呪物を取り込み続けて
役目を終えて死ぬか。
祖父が亡くなった日、色々あったが、
火葬場にて五条と悠仁はもう一度話す事に。
「で、どうするかは決まった?」
「………こういうさ、呪いの被害って結構あんの?」
「今回はかなり特殊なケースだけど、
被害の規模だけでいったらザラにあるかな。
呪いに遭遇して普通に死ねたら御の字。
ぐちゃぐちゃにされても死体が見つかれば
まだましってもんだ。
宿儺の捜索をするとなれば
凄惨な現場も見る事もあるだろうし、
君がそうならないとは言ってあげられない。
ま、好きな地獄を選んでよ。」
五条がそう言うと悠仁は被害にあった
恵とオカルト研究部の先輩達を思い浮かべた。
「宿儺が全部消えれば、
呪いに殺される人も少しは減るかな。」
「勿論。」
「あの指まだある?」
「ん。」
「改めて見ると気色悪いなぁ。」
そう言いながらも悠仁は呪物を
口へ放り込み飲み込んだ。
飲み込むと両面宿儺の痣が浮かび上がるも
直ぐに痣は消え、悠仁へと戻る。
五条はニヤリと笑みを浮かべる。
肉体の耐性だけでなく自我も難なく保てる。
千年生まれてこなかった逸材 正真正銘 両面宿儺の器だ。
「どったの?」
「クックック なんでもない。
覚悟は出来た。って事で良いのかな?」
「……全然。なんで俺が死刑なんだって思ってるよ。
でも、呪いは放っとけねえ。
本当、めんどくせえ遺言だよ。
宿儺は全部食ってやる。後は知らん。
自分の死に様は、もう決まってんだわ。」
「いいね、君みたいなのは嫌いじゃない。
楽しい地獄になりそうだ。
今日中に荷物まとめておいで。」
「?、どっかいくの?」
「東京」
Σ「伏黒!!」
恵は悠仁の隣に立っていた。
「元気そうじゃん!」
「包帯見てそう思うか?
お前はこれから俺と同じ
呪術師の学校に転入するんだ。」
東京都立呪術高等専門学校へ。
「ちなみに一年生は君で三人目。」
Σ「少なっ!!(汗)
っていうか、昨日いた女の人は?」
「安曇さんなら別の任務に向かった。」
Σ「早っ」
「本当は安曇さんの任務を五条先生が取ったからだ。」
「………そんなんあり?」
「てへ。」
五条はうっかりというようなリアクションで
こつんと自分の頭に拳を置くが、全然可愛くはない。
「あの人も学生なの?」
「高専のOB。五条先生の後輩だ。」
「今度紹介するよ。」
「東京かーちょっと楽しみかも!」
これにて虎杖悠仁は呪術師として
両面宿儺の指を集める為、
無期限の執行猶予付き死刑を確定させた。
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