居場所


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「全く、何を考えているんだ、花房」

「申し訳ありません」

十三番隊隊舎へ戻ると、浮竹も既に戻っていた。

ルキアを逃がそうと旅禍に手を貸したこと。
そして、朽木白哉に対して刀を向けたこと。

どちらも本来ならば、
決して軽く済ませられる行為ではない。

しかし、夜一と一護の出現によって
現場は大きく混乱し、
今回の一件について紫乃が正式に
処罰を受けることはなかった。

白哉もまた、紫乃の行動について殊更に
問題を大きくすることはしなかったらしい。

それが、紫乃には少し意外だった。

「しかし……四楓院夜一が生きていたなんてな」

浮竹は湯呑みを手にしながら、
先ほどの出来事を思い返す。

「紫乃でも追いつけないとは…
身体も鈍ってはいなかったようだ。
それに、あの旅禍……」

浮竹はそう呟き、一口茶を飲んだ。

紫乃は何も答えなかった。

脳裏に浮かぶのは、夜一の姿。

そして、自分の問いに答えず、

――すまないの、紫乃。

そう言って去っていった背中だった。

表情が自然と曇る。

そんな紫乃を見て、浮竹は小さく肩を落とした。

「……とにかく、あまり無茶をしないでくれ」

優しい声だった。

「今の尸魂界は、十一番隊が壊滅状態。
藍染隊長は何者かに暗殺され、
雛森副隊長と吉良副隊長は収監。
阿散井副隊長も重傷……
俺が寝込んでいる間に、色々あり過ぎだよ」

「浮竹隊長、お身体はもう……?」

紫乃が心配そうに尋ねる。

「ああ。だいぶ良くなったよ」

浮竹は笑って答えた。

そして、ふと表情を曇らせる。

「それにしても…朽木が極刑になるとはな。
俺も驚いたよ」

その言葉に、紫乃は黙り込んだ。

浮竹もまた、ルキアの処刑に疑問を抱いている。

だからこそ、紫乃が先ほどの行動に
出たことも理解しているのだろう。

「……浮竹隊長」

紫乃は、ゆっくりと顔を上げた。

「私は……ルキアの処刑を止めます」

真っ直ぐに浮竹を見つめる。

迷いのない声だった。

「自分が納得できない理由で、
誰かを失うことは……もう嫌なんです」

脳裏に、いくつもの顔が浮かぶ。

平子真子。

そして、志波海燕。

目の前から失ってしまった人たち。

あの時、もっと何かできたのではないか。

手を伸ばせたのではないか。

そう思い続けてきた。

だからこそ、同じ後悔を増やしたくなかった。

「私はもう、護廷十三隊に入って長い方です」

紫乃は静かに続ける。

「花房家も、いつまでも副隊長のままの私に
呆れて……もう、何も期待していません」

自嘲するような笑みが浮かぶ。

「自分の身に何があっても、悔いはありません」

そして、紫乃は傍らに置いていた斬魄刀へ
手を伸ばした。

「ただ……浮竹隊長や隊士たちには、
迷惑を掛けるでしょうから」

刀を手に取り、立ち上がろうとする。

「もう、ここには……」

「花房」

静かな声が、紫乃を止めた。

紫乃が顔を上げる。

浮竹は困ったように笑っていた。

「俺にとっては、お前も大切な部下なんだぞ」

その一言に、紫乃の胸が締め付けられた。

「……」

言葉が出てこない。

自分がこれからしようとしていることは、
浮竹や十三番隊を裏切ることになる。

それなのに。

この人は、自分を責めるより先に、
自分のことを心配している。

「俺も、何か裏がある気がする」

浮竹は湯呑みを置いた。

「朽木の処刑についても、
今回の一連の騒ぎについてもな。
そこは京楽と協力して調べてみるよ」

そして、紫乃へ柔らかく笑いかける。

「だから、そんな寂しいこと言わないでくれ」

「浮竹隊長……」

紫乃は俯いた。

申し訳なさが、胸の奥へ静かに積もっていく。

それでも、今はまだ。

自分一人で動く必要はないのかもしれない。

「それに、あの旅禍も夜一の言う通りなら、
三日は動き出さないはずだ」

浮竹はそう続けた。

「それまでは、紫乃も事を荒立てない方がいい」

紫乃はしばらく考えた後、小さく頷いた。

「……はい」

今は待つ。

一護たちが動き出すまで。

そして、その時が来たら――自分も動く。

紫乃はそう心に決めた。








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