邂逅


*






紫乃たちの戦いに決着がついた頃。

日番谷と乱菊、一角と弓親、
そしてルキアと一護たちも、
それぞれ従属官との戦いを終えていた。

しかし、一護たちの前には、
最後に一人の破面が立ちはだかっていた。

第六十刃――グリムジョー・ジャガージャック。

その圧倒的な力を前に、
一護は追い詰められていた。

卍解の霊圧に反応するように、
一護の内に潜む虚の力が強まり、
戦況が傾きかける。

だが、グリムジョーがさらなる力を
解放しようとしたその時、東仙要が現れた。

藍染の命令に背いた独断の襲撃。

その事実が明らかになったことで、
グリムジョーは戦いを中断せざるを得なくなった。

こうして襲撃は終わったものの、
日番谷先遣隊は大きな負傷者を出していた。

瀕死の重傷を負ったルキアをはじめ、
日番谷、乱菊、一角も治療を受けることになる。



その頃――。

紫乃と恋次の二人はある人物と接触する。

「紫乃さん! 大丈夫っスか!?」

イールフォルトを倒した恋次が、
すぐさま紫乃のもとへ駆け寄る。

紫乃は腹部を貫かれた傷口を押さえながら、
地面に倒れていた。

「うん……大丈夫……。
誰か、回道のできる人を……」

苦しげに息を吐きながら、途切れ途切れに答える。

「すぐに井上織姫を呼びに……!」

恋次が立ち上がった、その時だった。

「その必要はありませんよ」

聞き覚えのある声がした。

紫乃がゆっくりと視線を向ける。

そこに立っていたのは、
緑と白の縞模様のバケットハットを被り、
深緑色の甚平の上から
黒っぽい羽織を肩に掛けた男だった。

怪しげな格好。

けれど、その帽子の陰から覗く柔らかな表情には、
確かな見覚えがあった。

「……喜助」

紫乃の口から、ぽつりと言葉が零れる。

男――浦原喜助は、
バケットハットのつばを軽く持ち上げた。

そして、昔と変わらない、
ふにゃりとした柔らかな笑顔を浮かべる。

「や!紫乃さん、お久しぶりっス」

百余年ぶりの再会。

その瞬間、紫乃の瞳に涙が滲んだ。

「紫乃さんはウチで預かりますよ」

浦原はそう言うと、
傷ついた紫乃の身体を背中と膝裏から
軽々と抱え上げた。

「……あんたが浦原喜助か?」

恋次が尋ねる。

「そうっス」

浦原はあっさりと答えた。

そして恋次へ視線を向ける。

「貴方も一緒に来て下さい。
アタシに用があったんでしょう?」

「……ああ」

恋次が頷く。

浦原はそのまま紫乃を抱え、
浦原商店へと歩き始めた。

「喜助……私……」

紫乃が申し訳なさそうな声を漏らし、
浦原の甚平をそっと掴む。

「随分派手にやられましたね」

浦原は歩きながら、紫乃の傷へ視線を落とす。

「貴方なら、あの程度の相手には
勝てたでしょうに」

「……」

「卍解を避けたのは、
周りを巻き込まないためっスか?」

紫乃はしばらく黙っていた。

やがて、小さく頷く。

「……うん……」

「周りを気に掛ける癖は、相変わらずですね」

その言葉に、紫乃は何も返さなかった。

ただ、ほんの少しだけ目を伏せる。

やがて、シャッターの開いた
浦原商店へと辿り着く。

「重傷です。鉄裁さん、治療をお願いします」

「承知しましたぞ」

浦原は布団の敷かれた場所へ
紫乃をゆっくりと寝かせる。

その声に応じた大柄な男の姿を見て、
紫乃は目を見開いた。

筋骨隆々の体格にエプロン姿。

その顔にも、覚えがあった。

「……貴方は、」

かつて鬼道衆総帥――大鬼道長を務めていた男。

握菱鉄裁。

あの日、鬼道衆から派遣され、
そのまま行方不明となった者の一人だった。

彼も此処にいるとは思わなかった。

その時。

「紫乃」

別の声がした。

振り向けば、そこには一匹の黒猫がいる。

「夜一さん……」

猫の姿をした四楓院夜一だった。

その後ろには、
紫乃の知らない二人の子供が立っている。

二人とも、興味津々といった様子で
紫乃を見下ろしていた。

「雨、ジン太。もう夜も遅いから寝なさい」

浦原が子供たちへ声を掛ける。

「えー!何でだよ!
コイツら一護の仲間なんだろ!?」

「違うよジン太くん。
死神だからお客さんだよ」

「一緒だろ!雨のくせに!」

「ごめん…ごめんってばぁ」

ジン太という男の子は雨の頭をポカポカと殴る。

二人は紫乃の姿が気になるのか、
なかなかその場を離れようとしなかった。

「ほらほら、二人とも!
騒がしいと紫乃さんも休めないから!」

慌てて浦原が促すと、渋々ながらも
二人は奥の部屋へと向かっていった。

「今の奴らは……?」

恋次が二人の後ろ姿を見送りながら尋ねる。

「彼らはアタシが造った被造魂魄です」

浦原はそう答え、店内へと戻る。

「店の前で騒ぎを聞きつけて、
飛び出してきそうだったんですけどね。
紫乃さんがいたので、止めました」

そう言って、浦原はその場に胡座をかいた。

そして、
回道で紫乃の治療する鉄裁を一度見てから、
恋次へ視線を向ける。

「さて」

浦原の表情から、柔らかな笑みが少しだけ薄れる。

「紫乃さんの治療が終わるまで、
まずは貴方の話を聞くとしましょうか」

「……ああ」

浦原は恋次を見上げた。

「どうして貴方がここへ来たのか。
そして、何を知りたいのか――」

静かな店内に、浦原の声が落ちる。

「ゆっくり聞かせてもらいましょうか」







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