接近


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「お前にはまずこれ!
スーパーひよ里ウォーカーや!!」

そう叫びながら、
猿柿ひよ里が持ち出してきたのは、
足を乗せて左右交互に踏み込む、
いかにも手作り感のあるダイエット器具だった。

「手作り丸出しの
インチキダイエットマシーンじゃねえか!」

あまりにもふざけた見た目に、
一護は思わず声を荒らげる。

「誰がインチキやボケェ!」

「痛ってぇ!」

生意気な一護に、ひよ里が
容赦なく飛び蹴りを叩き込む。

その騒ぎを横目に見ながら、
平子の携帯電話が鳴った。

画面を確認すると、
平子はすぐに通話ボタンを押す。

「もしもーし」

「どーも、平子さん。お久しぶりっス」

聞き慣れた、どこか人を食ったような声。

「何やねん。一護ならここにおるで」

平子は、ひよ里と揉み合っている
一護へ視線を向けながら答えた。

「いや、黒崎さんじゃなくてですね……
その様子じゃ、まだ会えてなさそうっスね」

「……何のことや?」

平子が怪訝そうに眉を寄せる。

電話の向こうで、浦原はいつもの調子で続けた。

「貴方たちの居場所を教えたんスよ。
花房紫乃さんに」

「……」

その名前を聞いた瞬間、平子の表情が固まった。

携帯電話を取り落としそうになり、
慌てて握り直す。

「……はあ!?」

思わず大声が出た。

「どうしても、と言われたので仕方なく。
会える保証はないとは伝えているんですが、
彼女のことですから、ある程度
目星は付けてるんじゃないかと思いまして。
一応、ご連絡だけしておこうかと」

浦原は悪びれる様子もなく、ぺらぺらと説明する。

「……会わへんで」

平子は、低い声ではっきりと言い切った。

「それは平子さんの自由にして下さい。
ただ、会いたくないなら、
そのまま倉庫に引きこもってて下さいね」

「俺かて外の空気吸いたいわボケ!」

電話越しの浦原に怒鳴る平子を見て、

「真子、何の話してんねん。アホみたいやで」

「アホやからしゃーない」

ひよ里と矢胴丸リサは冷めた目を向けた。

「とにかく、アタシは報告しただけなので。それでは」

「お、おい……!」

平子の制止も虚しく、通話は切れた。

ぱちん、と携帯電話を閉じる。

その異変に気付いた羅武が、平子へ声を掛けた。

「どうした、真子。誰からだった?」

「喜助や」

平子は苦々しい顔で答える。

「あいつ、俺らの居場所を紫乃に教えやがった」

「紫乃が!?」

「何で教えてんねん」

「そりゃ真子に会いたいからやろ」

驚きの声が上がるものの、
その理由については誰も疑問に思わなかった。

むしろ、当然だと言わんばかりの反応だった。

その時、ひよ里ウォーカーを
ギシギシと踏み込みながら、一護も会話に加わる。

「お前ら、紫乃さんを知ってるのか?」

「花房さんや。馴れ馴れしいやっちゃな」

平子がすかさず訂正する。

「そういや前に、現世で探してる奴がいる
っつってたけど、それお前らだったのか?」

一護は特に気にする様子もなく、話を続けた。

「……何のことやねん」

平子はとぼけた。

その一方で、白が首を傾げる。

「しーちゃんいるなら、
外出れないじゃん。どーするの?」

「暫く自炊かあ? めんどくせぇ」

拳西が面倒そうに呟く。

するとリサが淡々と告げた。

「材料買い足さんと、何もないで」

「何!?」

羅武が目を見開く。

リサは何でもないことのように続けた。

「真子は死んだってことにすればええやん。
会いたがってるの、真子やろ」

「リサ、ナイス!ハゲ真子は死んだ、死んだ!」

ひよ里までノリノリで賛同する。

「おい!勝手に殺すなや!」

平子が抗議する。

すると、鳳橋楼十郎――通称ローズが立ち上がった。

「じゃあ、僕と羅武が買い出し当番だから、
その設定で行こうか」

「何でそうなんねん!」

ローズと羅武がそのまま外へ向かおうとする。

「待て待て!」

平子は慌てて二人を止めた。

「何だよ。それが一番楽だろ」

羅武が振り返る。

「そういう問題ちゃう!」

「じゃあ、どうすんねん」

「……ハッチ」

平子が呼ぶ。

「ハイです」

有昭田鉢玄――通称ハッチが、
ゆっくりと前へ出る。

「外の霊圧、探りぃ」

「了解です」

ハッチは目を閉じ、意識を外へと広げていく。

しばらくして、その表情が僅かに変わった。

「……この倉庫から二つ先の倉庫の屋根にいます」

「……やっぱりか」

「複数ある倉庫の中から、
ここまで絞れるなんて……流石ですね」

ハッチは感心したように呟いた。

紫乃の霊圧感知能力は、
それほどまでに精度が高かった。

平子は小さく息を吐く。

「……話、付けてくるわ」

そう言って、倉庫の出口へ向かう。

「結局、会いたいんじゃん」

ローズが呆れたように言った。

「アホか。このまま居座られても困るやろ。
追い返すだけや」

平子はそう言い返す。

そして倉庫の扉に手を掛けた。

その顔には、いつもの軽薄な笑みはなかった。

百年以上ぶりに会うことになる。

それでも――。

「……ほんま、何しに来とんねん」

小さく呟き、平子は倉庫の扉を開けた。







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