訪問


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「季節のフルーツ大福、四種下さい」

急ぎの仕事を片付けた紫乃は、
一番街にある馴染みの和菓子屋を訪れていた。

色鮮やかな苺、蜜柑、葡萄、無花果。

白く柔らかな求肥に包まれた四つの大福は
見た目にも華やかで、手土産には丁度良い。

「ありがとうございます」

紙袋を受け取ると、
そのまま五番隊隊舎へ向かった。

玄関へ着き、近くにいた隊士へ声を掛ける。

「二番隊三席、花房紫乃です。
平子隊長はいらっしゃいますか?」

「平子隊長でしたら……まだ外出中かと」

控えめな返事に、紫乃は少しだけ目を伏せた。

「そうですか……」

せっかく礼を伝えに来たのに、少し残念だった。

その時だった。

「お疲れ様です、花房さん」

落ち着いた穏やかな声が背後から聞こえ、
紫乃は振り返る。

そこには藍染惣右介が立っていた。

「藍染副隊長、お疲れ様です」

紫乃が一礼すると、藍染も柔らかく微笑み返す。

「お疲れ様。平子隊長に何かご用かな?」

「先日、お世話になったので……
一言、お礼をお伝えしたくて参りました」

「なるほど」

藍染は納得したように頷いた。

そこで紫乃は、藍染の後ろに控える
小柄な隊士へ自然と目を向ける。

まだ幼さの残る顔立ち。

細く笑った目。

どこか飄々とした空気を纏った少年だった。

藍染は紫乃の視線に気付き、
紹介するように口を開く。

「彼は最近うちへ入った隊士だよ。
真央霊術院を一年で卒業した秀才でね。
既に席官にも就いている」

少年を一歩前へ促す。

「ギン、挨拶しなさい」

「市丸ギンや。よろしゅうお願いします」

少し聞き慣れない京都寄りの関西弁。

平子やひよ里とはまた違う柔らかな響きだった。

「花房紫乃。二番隊三席です。よろしく」

互いに軽く頭を下げる。

「そういえば君も首席卒業だったね」

藍染が思い出したように言う。

「優秀な者同士、話も合うんじゃないかな」

紫乃は苦笑した。

「私は二年掛かりましたよ」

「一年しか変わらんやん」

ギンがくすっと笑って口を挟む。

その気安さに紫乃も自然と笑みを返した。

藍染は穏やかな表情のまま続ける。

「確か十三番隊三席の志波海燕とは同期だったね。
二人とも天才と呼ばれていたとか」

「彼が私に譲ってくれただけですよ」

紫乃は照れ隠しのように笑った。

その様子を見て藍染は目を細める。

「謙虚だね」

「今更立ち話も何だ。
平子隊長が戻られるまで、
中で——」

藍染が言い掛けた、その時。

砂利を踏む軽い足音が近付いてきた。

「お疲れさん」

聞き慣れた関西弁。

「紫乃が何でここにおるん?」

平子が帰ってきた。

藍染は小さく肩を竦める。

「丁度戻られたようだ」

少しだけ残念そうに呟いてから平子へ向き直る。

「お疲れ様です、平子隊長。
花房さんが、お礼を伝えたいそうですよ」

「お礼?」

平子は意外そうに首を傾げた。

「まあ、ええわ」

そう言って笑う。

「部屋で話聞くから、上がってき」

そして藍染へ振り返った。

「惣右介、仕事の方頼んだわ」

「承知しました」

藍染は静かに頷く。

すれ違いざま、ギンが紫乃へ声を掛けた。

「花房さん、良かったらまた話そうな」

「うん。また」

紫乃は微笑み返し、
そのまま平子の後ろを歩き出した。

五番隊隊舎の廊下を進みながら、
平子が振り返らずに尋ねる。

「あの二人と何話してたん?」

「挨拶と……褒め合い、
といったところでしょうか」

紫乃は紙袋を抱え直しながら答えた。

「市丸ギンという少年、
一年で真央霊術院を卒業されたそうですね」

感心したように続ける。

「先日こちらの三席が
殉職した時は驚きましたけど、
優秀な隊士が入られて良かったですね」

平子は苦笑した。

「俺より惣右介に懐いとるけどな」

どこか拗ねたような口ぶりに、
紫乃は思わず笑ってしまう。

「副隊長ですから、話しやすいのでしょうか」

「せやったら隊長の立場ないやん」

平子が肩を落として見せる。

そのやり取りに紫乃はまた小さく笑った。

やがて隊首室の前へ辿り着く。

平子が襖を開ける。

「ほら、入って」

「失礼します」

二人は静かな隊首室へ足を踏み入れた。







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