泣いても喚いても









「あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」



自分でも何度も感じたあの痛み。
焼けるような皮膚が剥ぎ取られるような
尋常じゃない程の痛みは直接的な力じゃ無い。
そう感じさせられている。志賀の異能によって。



「俺は異能があるから拷問は得意分野だ。
死ぬ事無く痛みだけ与えられ続ける事が出来る。
然し、お前含め他の奴はそうとはいかない。
直接暴行を加えなければ捕虜は痛みを感じない。
太宰、お前ならどうする?」

「……」



そう言いながら志賀は異能を解いて福永から離れた。
福永は現実では軽く触れられただけで出血も痣も無い。
然し痛覚を高められた身体は自分の重心の重みで
触れている部分は全て激痛となり縛られている中
のたうち回り ぐったりとして息を粗くしていた。



パアンッ!「ッ……!!」

「死なない箇所に撃ってみるとか?」



太宰は拳銃を取り出して福永を撃った。



「例えば?」

パアンッ!「足とか」
パアンッ!「腕とか」
パアンッ!「肩とか?」

「このまま放置すれば出血死だな。」

「僕痛いの嫌いだから、
殴る蹴る最小限にしたいんだよね。
殴った側も痛いでしょ?拳。蹴るのもだし。」

「ナメた事を言うな。」

「はぁ…はぁ…お、おい…止血しないのか…?
出血死したら終わりなんだろ…?ナ"!!」ガン!

「そう焦るなみっともねえ。」



志賀は福永の頭を蹴り 福永はぐったりとした。
然し、軽く脳震盪が起きただけで息はしている。
どうせ福永は殺すつもりだ。
出血死するにも当たった場所がどうでも良ければ
死ぬのは数時間後だろう。問題は無い。



「拷問は痛ければ何でも有りだ。
精神的なものでも良い。
海外組織では拷問に耐える教育も受けている
口の硬い連中が多い。そういう奴らには
精神的な苦痛の方が効果的な事が有る。
例えば身内を人質にするとか大切な者を目の前で殺す。
仲間でも良い。一人残して吐き出させれば良いんだ。
此奴で其れも試してやろうか?」

Σ「!、止めろ!それだけは!
それだけは止めてくれ!!(汗)」

「だったら自分の弱みを直ぐに見せない事だな。」



志賀は懐から二枚の写真を福永に見せた。
其れは大人の女性一人と複数人と楽しそうに笑う
小学生くらいの女の子の写真だった。
福永は表情が固まり絶望感に追いやられる。



「まさか……止めろよ…餓鬼の教育の為なんだろ…?
だったら俺だけでも良いじゃねえかよ…なあ…」

「この顔を覚えておけ 太宰。
これが人間が最大限に絶望を感じた時の面だ。」

「うん。」



次に志賀は携帯を取り出し、画面を福永に見せる。
リアルタイムで撮影されている動画だった。
買い物を終えて 仲睦まじく手を繋ぎ歩く母と子だ。
福永の表情はさらに強張り冷や汗でぐっしょりだった。
今撮影されているのならば、部下が常に見張っていて
自分次第ではいつでも手出しが出来るという事だ。



「き、聞きたい情報はなんだ?
川端さんは広津率いる遊撃隊を勧誘している……
お前を一人にさせる為にだ…俺は足止めだった…
今数名の部下と共に広津の元にいるはずだ…。」

「守りたい者があると面倒だな……。
聞いてもいない事をベラベラと滑らす。
川端が信用していた部下は、
忠誠心のカケラも無いらしい。」

「の、望みはなんだ!?何でも話す!
だから家族だけは手を出さないでくれ!
お前も人間だろ?女子どもに手をかける
なんてこと出来るわけな…!」

「元殺し屋に何言ってんだ手前は。」

Σ「!」



志賀の冷たい視線に福永はゾッとした。



「ッ……ぐあ"あ"…!あ"あ"あ"あ"ッ…!!」

「川端が広津を勧誘しようと構わない。
どうせ面倒な仕事を部下に回していただけだ。
彼奴は俺と違って部下思いな奴でな。
部下にとって良い場所を彼奴は選ぶだろう。
俺の元ではさぞ窮屈だろうからな。」

「あ"あ"…ぎぃ、あ"あ"……ッ!!」

「人を殺した事はあるか?太宰。」

「ううん。」

「やめ……ぐあ"あ"!や"め"でぐれ……!」

「仕上げだ。」



志賀は異能を使った状態でトントンと
福永の額を触れた。
其の感触でさえ激痛の福永は悶え暴れるが、
太宰は少し嬉しそうに好奇心が溢れた
高揚感のある表情で福永にゆっくり拳銃を向けた。



バアンッ!!!



地下に響いた叫び声はパッタリと止まった。