嘲笑い、そして
▽
「志賀、矢張り貴様は一人が似合う。」
「そうだな。俺もそう思うよ。」
数多くのポートマフィア所有倉庫が並ぶ
西みなと倉庫はヨコハマの海が一望出来る。
其の一番広い倉庫内に離れてはいるが、
川端と志賀が向かい合い、
川端の後ろや左右には構成員達が構えていた。
「そんな男が復讐とは可愛げのあるものよ。
貴様はもう少し非情な男だと思っていたが、
多少人間味があったらしい。」
「誰かさんのせいで人間臭くなっちまった。
一人でいればポートマフィアなんて
有能な組織あっさり入って、
一生困らない金と地位を手に入れただろうに。
其れでは得られないものに
俺は一生振り回され続けている。」
「武者小路実篤は死んだ。
奴が何故首領が貴様と共に
引き入れなかったか知っているか?
単純に弱かったからだ。
何に惹かれたのか知らんが、
生きる為の力も無く、
な癖に弱者に手を差し伸べ裏切られ
表社会に憧れるが学力もない。
あの様な理想論しか語れぬ奴に
合理的な貴様が何故だった?」
「手前に語る必要は無い。」
「貴様は首領が生んだポートマフィアの元凶だ。」
「だったら首領を恨むべきだな。
いや…そもそも首領の座を奪われ、
妬んでいたんだろうが…」
「今さら過去の妬みを引きずるとでも?」
「そう云う奴だろ 手前は。」
志賀がそう云い銃を向けた瞬間、
周りにいた構成員も一斉に乱射をし、
志賀は何発か当たるが転がり避け、
貨物に隠れその間も銃撃が止まない。
十数人の構成員と生身一人では
明らかに不利な戦況だが、
手榴弾を数発投げて一度に数を減らす。
また姿を現しては銃撃戦が激しく
川端はただ見ているだけだったが、
志賀は確実に構成員を減らして
直ぐ距離まで近づいた。
銃弾を放つが老人とはいえ、
長年幹部をやっているからか、
刀で銃弾を遮るほどの腕前。
志賀は不敵な笑みを浮かべていた。
「暗殺に特化した生身の人間が、
正々堂々と出て来るとは滑稽なものだ。」
「生身なのは互い様だろ。
ーーーーー…!」
ドオォオン!!!
志賀が手榴弾を投げようと振りかぶると
耳に歌声が響き腕が停止して
手榴弾がこぼれ落ち、
直ぐに避けたものの破片で身体がよろける程
ダメージを喰らうが、
異能で痛覚を消している為、
怪我を負っている身体では無い程
平然と身体は動いている。
川端の方を見れば、
背後に美しい着物を来た若い女がおり、
今手元が狂ったのは彼女の際だろう。
「異能力"雪国"。
彼女 葉子の声は美しいだろう。
美しい歌声で死ねるのは幸せだ。そうだろう。
彼女の歌声はお前の動きを封じる。」
「くくくく……はっはっは……」
「何が可笑しい…?」
「おいおい本気かよ…其れがお前の異能…?
全くポートマフィアってのは呆れるよ…。」
「何…?」
志賀は出血で多少よろけながらも
笑いが止まらず 項垂れる。
暗殺を得意としていた志賀は
殆ど情報を漏らしてこなかった。
自分が異能を使う時は一人の時だけ。
だから川端は知らなかった。
音響系の異能は志賀には無意味だと。
「これで無駄な会話はせずに済みそうだ。」
志賀は銃を発砲しながら駆け出し、
周りにいた構成員らは川端に近づかせまいと
発砲するが志賀に当たらず川端の目の前へ。
川端の背後の異能が再び歌い出すが、
志賀はピクリとも動作が止まる事も無く、
其れに驚いたが反射的に川端は刀を横に振るも、
志賀はしゃがみこみ刀を避け、
下から川端の喉元を狙い銃を撃ち、
顎下首の付け根を銃弾が脳まで貫き、
川端は仰向けで倒れ、異能は消えた。
「聞こえなきゃ無意味な異能で、
よく幹部まで上り詰めたな 糞爺。
まぁ、手前が美しいと云う歌声を
聴いて死ねただけ幸せだろう。」
志賀はそう云いながら、
横たわる川端を冷たく見下ろしていた。
銃弾を補充しているとジャキッと音がして、
上司が死んでなお部下達は戦おうとしており、
面倒だが雑魚の始末もするかと振り返れば、
そんな構成員らを別の構成員が、
銃を向けて包囲していた。
そして倉庫の入り口に立つ男を
気に食わなそうに睨みつけ向き合う。
「………何の真似だ…森。」
其処には複数の構成員等と共に森医師と、
其の隣には太宰も立っていた。
▽