医師を名乗る男









今のポートマフィアは抗争が激しく
毎日のように怪我人が出ては医務室へ運ばれる。
治療を受けている間も裏社会では
戦争が起き始めており、
ヨコハマでは常に銃声が街中で鳴り響いていた。

異能組織との抗争の末 壊滅させたものの
怪我を負った志賀も医務室に自分の足で来ると
目まぐるしく医師や看護師達が動き回っていた。
奴らも表では評価されず流れてきた外れ者だ。

自分は敵の異能で腹部の出血と
恐らく肋骨の骨折も考えられる為来たのだが
目まぐるしく回る医務室に嫌気がさし、
体の向きを変えて部屋を出ようとした時



「怪我人が駄目だよ。
治ってもないのに医務室から出ちゃ。」



そう声を掛けながら肩に手を置かれ止められた。



それが志賀と森医師との出会いだった。



「全く、幹部の手当てが最優先だというのに
彼らは重傷者で手がいっぱい頭も回らずでね。
申し訳ない。宜しければ私が見ましょう。
ポートマフィア最年少幹部 志賀直哉殿。」



彼はそう言いながら志賀に手を伸ばし
挨拶の握手を求めたつもりだったのだが、



「構わん。早急に頼む。」



志賀はそう言って森医師の手を通り過ぎて
個室のある医務室へ足を進めた。
初めはキョトンと手を拒否られた事に驚いたが
すぐに笑みを浮かべて志賀の後に続いた。







ーーーーーーー……



「この怪我で平然としていられるなんて
さすがとしか言えないねえ。
普通なら顔は青く呼吸も荒くなる。」

「…痛みには強い体質でね。」



志賀はそう言いながら新品のスーツに着替える。
怪我は止血と手当てをして完治はしていないが、
幹部が医務室に籠るわけにもいかない。



「そうなのかい?それは羨ましいなあ。
ああ、そういえば名前を言っていなかったね。
私の名前は森鴎外。しがない町医者をやっていて、
表も裏も関係無く治療をしていている。」

「闇医者はそういう奴らが多い。
患者は皆同じと言い、此方の戦況関係無く受け入れる。
勿論裏社会の情報を得やすい職業とも言える。
だからうちでは医師を雇っているのだがーーー…、
手前はそうじゃ無いと言うのか?」



志賀はジャケットをビシッと羽織ると
椅子に腰掛ける森医師を冷たく見下ろした。



「私は今日ポートマフィアに
雇って欲しくて来たんだよ。
闇医者は情報屋だとも言われているからね、
それを狙ってずっと命を狙われていたんだ。
だからポートマフィアに身を置けば安全かと思ってね。
ここに入れたのはそこにいる医師のつてだよ。」

「……情報屋なら知っているだろう。
今のポートマフィアを。」

「それは勿論。だからこそ一番危険な組織に
身を潜めた方が安全だったりするんだ。」

「うちは毎日重傷者が運ばれる。死体もな。
それでも良いってんなら医者は雇える。」

「有り難う。」



礼を言った森医師に対して志賀はコートを肩にかけ
足早に医務室を出て行った。

彼にはまだ仕事がある。
倒した異能組織の報復に雇われた
海外組織が時期に事務所を襲ってくる。
それを阻止してまた殺す。



ドンッ「痛ッ……」

「失敬。」



医務室の扉を開けた時に何かにぶつかり、
目を向けるとまだ若い黒服の少年がいた。
片目に包帯が巻かれていて怪我人だろう。
然し、こんな若い構成員がいたのかすら
何百もの部下に持つ幹部が下級構成員の
全員の事を知ってるわけもなく、
気にする事なくそのまま出て行った。



足早に去る志賀を少年は見つめていた。



「そんな所で突っ立ってどうしたの?太宰くん。」



ひょこっと部屋から顔を出した森医師に
太宰という少年は声をかけられ振り向いた。



「今の人にぶつかって肩痛かった…」

「え?大丈夫?というか謝った?
今の人 ポートマフィアの幹部さんだよ?」

「え?そうなの?若いね。」

「君が言うのも変な言葉だよ。
ほんとは子どもが出入りしない場所なんだから。」

「だったら連れて来なきゃ良いじゃないか。」

「ダメだよ。目を離したら君すぐ自殺するんだから。」

「あ!森さん!この薬一気飲みしたら死ぬかな!?」

Σ「ダメダメ!皆んな怪我人多くて
薬無駄に出来ないから!(汗)」

「えー、良いもの見つけたのにー」

「僕しばらく忙しくなりそうだから
君は此処で適当に過ごしてて良いからね。
勝手に歩き回っちゃダメだよ?警備体制厳しいから。」

「はーめんどくさいなあ。」

「これから楽しくなるさ。」



退屈そうに溜息を吐く太宰に
森医師はそう言って笑みをうかべいた。