自分の所為で








「……ここは…」

「気付いたか 全くこの忙しい時に…」

「僕マフィアに襲われてそれから……
そうだ!谷崎さんにナオミさんは……!(汗)」

「無事だ。隣で与謝野さんが治療中。」



国木田がそう云うと隣から悲鳴が聞こえた。



「……治療中?」

「聞いたぞ小僧。七十億の懸賞首だと?
出世したな。マフィアが血眼になるわけだ。」

Σ「そうです!どどどどどうしよう!
マフィアが探偵社に押し寄せてくるかも!(汗)」

「狼狽えるな。確かに、
マフィアの暴力は苛烈を極める。
だが、動揺するな。
動揺は達人をも殺す。師匠の教えだ。」

「……あの、手帳逆さまですよ」

「…………俺は動揺していない!!
マフィア如きに取り乱すか!
例え今此処が襲撃されようと俺が倒す!
あれをこうしてこうばしっと動き、
いい感じにぐっとやって倒す!」



国木田の動きに中島は焦る。
相当焦っていると見て分かるからだ。
自分の所為で探偵社が危機なのだと。



「ふん。奴らは直ぐに来るぞ。
お前が招き入れた事態だ。
自分で出来る事を考えておけ。」

「(…僕が…出来る事……)」

「ところで小僧。
先刻から探しているんだが、
眼鏡を知らんか。」



頭に掛かっています。と、
中島は云いづらそうに云った。









ーーーー……*°



「そう落ち込まないでよ 朔太郎君。」

「ううう……だって僕が黙ってたから
三人も怪我をさせてしまった……」

「でも、君は現場に来てたじゃないか。
それだけでも充分優しいさ。」



道端の影で縮こまり泣きじゃくる朔太郎に、
太宰は同じ様にしゃがみ込み
優しく背中に手を置いて宥める。



「行った所で何も……、太宰さんが居たから…、
あく…芥川は…引いたんです……。
僕が出て来た時の彼の顔を見ましたか…?
正しく憎悪……次会えば殺される…
いや、もう探偵社に来て僕を探してるかも……
事務所が血だらけだったら僕は……!
また…また、死を眺めるだけ……!!」

「朔太郎君。」

Σ「!」



発作の様に頭を抱え口が止まらない朔太郎に、
太宰は静かに声を掛け、ハッとする。
それは優しかった彼の声が
一気に冷んやりと刺すように冷たくなったからだ。



「探偵社なら大丈夫だよ。
次に来るとしたら黒蜥蜴程度だ。
国木田君達なら朝飯前だよ。
芥川君の狙いは敦君だし、
君はついでに襲われる程度だ。」

「襲われるには襲われるんですね……」

「それはそうだろうね。
君は芥川君に嫌ほど嫌われているから。」

「そ、それは…僕が弱い所為でもあるけど、
太宰さんが僕を強引に巻き込んで……」

「さあ?何のことかな?」

「ず、狡いですよ!!云ったはずです!
僕は地獄まで貴方に着いて行くと!
じゃ無いと僕はマフィアに殺される!
貴方が責任持って僕を…!!」

「はいはい分かったよ。
然し、地獄までは来ないでくれ給え。
私は美女と心中し、共に逝くのだから。」

「またそんな事を……!」



朔太郎は泣きながら太宰の胸元を
両手で強く掴んで揺さぶり
太宰は揺らされるがままだった。



「ただ、暫くマフィアと関わる事になるだろうね。
私は敦君の懸賞首に付いて調べたい。
君の異能でこの間の美女に近付くのも善いけど
芥川君も付いて来そうだから面倒だ。」

「ぼ、僕嫌ですよ…!
こんな異能…使うなんて…!!」

「はー…君は本当に呆れるよ。」

「!」ガーン!

「そうやって君は、
何時迄も過去に囚われ続けるんだ。」



太宰の言葉に朔太郎は胸元を握り締める。
さっきの発作が出そうになる程
心臓がバクバク強く打っていた。
過去に囚われ続けていたとしても、
何時も死を眺めるだけな自分に変わりは無いのに。

太宰が自分の元から去ったかと。
朔太郎は迷子になった子供のように
また蹲りグズグズと涙を流す。
自分が変われる日など来るものか。

何時迄も何時迄も弱い自分に、
また誰かの助けを求めているだけ。



それから数日後、太宰は行方不明になった。