檸檬と火薬







「よ…与謝野さん御免なさい……
ぼ、僕の所為で、酷い事を……」

「気にするこたァないよ。」

「あ、敦君も……申し訳ない…
僕が荷物運びなんてホント…無理だ…
何をやっても僕は……」

「朔太郎さん……どうして貴方はそんなに
自分に自信を無くしてしまっているんですか?
塞ぎ込んでると余計に……(汗)」



わしゃわしゃと髪を乱しながら云う朔太郎に
中島は心配そうに声を掛けた。



「真実だからさ。見て分かるだろう?
僕は駄目な人間なんだ…
生きてるのだって無意味なのに太宰さんが……」

「朔太郎はこう云う奴だよ敦。
ずっと自問自答を繰り返して
仲間を助ける事すら恐怖で迷いが出る。
社長は何を思ってか入社を認めてるけれど
探偵社としては掴み難い奴さね。」

「そんな……」

「ところでさ、アンタ
マフィアに脚を喰い千切られたそうじゃないか。」

「……ああ…(汗)」

「ふゥん 綺麗なモンだねェ。」

「ぎゃい!?」

「(……癒合痕も瘢痕もない。
再生というより復元だ。虎はこれを一瞬で?)」

「あ、あの 何か問題でも?(汗)」

「……別に。妾が治療出来なくて残念だッて話さ。
……でも次は無いよ。」

「え?」

「前回は探偵社に正面から突っ込ンで自滅したけど
元来マフィアでは奇襲夜討ちが本番だ。
夜道にゃ気ィつけるんだね。
いつ何処で襲ってくるかしれないよ。」

「(そうだ……奴等の狙いは僕…
自分の身は自分で守るしか…(汗))」

「《あ〜〜こちら車掌室ゥ
誠に勝手ながらぁ?只今よりささやかな
物理学実験を行いまぁす!
題目は非慣性系における爆轟反応および官能評価っ!
被験者は乗り合わせの皆様!
ご協力まァ〜〜〜〜ことに感謝!
では早速ですがぁこれをお聞きくださぁ〜〜い》」



すると爆発音と共に車両が大きく揺れた。
朔太郎の顔は恐怖で青ざめていた。



「《今ので2、3人は死んだかなぁ〜?
でも次はこんなモンじゃありません!
皆様が月まで飛べる量の爆弾が
先頭と最後尾に仕掛けられておりまぁ〜す!
さてさて被験者代表の敦くん!
君が首を差し出さないと乗客全員
天国に行っちゃうぞぉ〜〜〜〜〜?》」

「な…!(汗)」

「云った側からお出ましってわけだ。」

「ど、どうしましょう!?(汗)」

「一、大人しく捕まる。
二、疾駆する列車から乗客数十人と一緒に
飛び降りて脱出。……三、」

「連中を……、ぶっ飛ばす?」



中島が云うと与謝野はそれだと指を指す。



「何しろ妾らは、武装探偵社だからねえ」

「オイ貴様ら武装探偵社なのか!?何とかしろっ!」

Σ「ひ…!」

「あ…さっきの…(汗)」

「おやおや、でも探偵社はロハじゃ動かないよ。」

「金なら幾らでも払う!
爆弾を止めて儂を助けろ!(汗)」

「そいつは依頼かい?」

「そうだっ!」

「依頼じゃ仕方ないねェ。」ニヤリ

「そ……それからもう一つ、
その……××を××してくれるというのは本当か?///」



偉そうな男はかなりのドMだったようだ。
与謝野は男を手すりに思いっきり頭をど突いた。
その様子を冷や汗をかきながら中島と朔太郎は見ていた。



「さて敦、手分けして爆弾を解除するよ。
妾は前、あんたは後部だ。
朔太郎、あんたはどうする?」

「えっ…ぼ、僕は………(汗)」



与謝野は朔太郎には期待していなかった。
どうせ何時もの様に自分の命を優先し、
乗客達と此処へ残るであろうと踏んでいたのだが、
思わぬ答えが返ってきて目を丸くした。



「あ…敦くんと最後尾に行きます。」

「え?」

「え!?い、嫌だったかな!?(汗)
そうだよね…僕がいたって足手纏い……」

「い、いえ!一人で行くより心強いです!!」



二人のやり取りに与謝野はニッと笑った。



「あ、も、もし、敵がいたら…(汗)」

「ぶっ殺せ!」



与謝野の合図で、
朔太郎は中島と共に最後尾に向かった。