残った傷痕









「ぉ…お邪魔します…」



朔太郎は小さな声で縮こまりながら
ポートマフィア本拠地である建物の中に入った。

普通はそう簡単に入れるような場所では無い。
不審な者は直ぐに止められ侵入を許さない。
然し朔太郎なら容易な事だ。
特にポートマフィアという組織全てを熟知している。
異能を使って侵入し、後は知ってる道だ。

いつも通る度に吐き気がする地下の拷問部屋。
そこに太宰がいると思い来てみたが、
目の前には彼の上司 中原中也の後ろ姿があり、
その前には太宰が捕えられておらずに立っていた。



「挨拶くらいしなよ 朔太郎くん」



中原が朔太郎に気付いていないとはいえ
太宰は無遠慮に朔太郎に声を掛けて来る。
朔太郎は出来ることなら逃げ出したい。
然しそんな事をしたらまた太宰に失望される。
ぐるぐると頭が負の連鎖に廻り始めていると、
自分の記憶を無くした中原は太宰を不審がる。



「朔太郎?探偵社の仲間か、
確か目眩しの異能力がいると聞いたがそいつか?」

「ほら、中也が可哀想だよ?」

「無理ですって太宰さん!
今僕が中也さんと会ったら殺される!
何も弁解の余地なく殺されるに決まってます!!(汗)」



痺れを切らした朔太郎は太宰に詰め寄った。



「そう言わずにほらほら、何もしないって!」

「だいたい太宰さんが僕を残して勝手に消えるなんて…!
こっちは大変だったんですからね!!
僕がどんな思いをしたか想像して下さい!!
あれ程僕は貴方がいないと虫以下のゴミ野郎なのに…!!」

「まだそんな事言って……それよりほら!
僕が独り言言ってるみたいで阿保みたいじゃないか!
それよりも状況を理解してない中也がもっと阿保面で
滑稽ではあるんだけど流石に可哀想だよ!」

「手前はさっきから何処と話してんだ!(怒)」

「彼とだよ。」

トンッ


「あっ…!」



誰もいない空間に話し掛ける太宰に
ほっとかれている中原は苛々して怒鳴り付けると
太宰は朔太郎をトンッと押すと
軽々とバランスを崩した朔太郎は
触れた事による異能解除と共に中原に突っ込むと
何も見えていなかった中原もいきなり現れた朔太郎に
油断して押し倒されて地面に二人して倒れ込んだ。



「痛ってえな…って、手前は、朔太郎!!」

「ぁ…ちゅ、中也さ、すみませ……!(汗)」

「手前!よくぬけぬけと俺の前に姿を現したな!(怒)」

Σ「ッ……ご、ごめんなさ…!」

「太宰の木偶に唆されやがって!!」

「がっ…!!」



中原は朔太郎の胸ぐらを掴んで怒鳴りつけた。
そして身軽に足技を使って蹴り飛ばし、
朔太郎は簡単に吹き飛んで柱にぶつかった。



「手前が太宰と消えたと聞いた日から
俺はどうやって殺してやろうか考えてたんだぜ…?(怒)」

「ヒッ…!ち、違うんです中也さん!!
僕は太宰さんに無理矢理…!あの人は誘拐犯です!!
僕は必死で反対して!それで…!!」

「相変わらず言い訳だけ饒舌だなあ朔太郎(怒)
手前のそのオドオドとした口調を聞いただけで
あの時の苛々まで思い出して腹が立ってくるぜ…」

「嘘はよく無いよ朔太郎くぅん
僕がお誘いしたら直ぐに着いてきてくれたじゃないかあ
今では僕がいないと生きていけなあいって泣きつく程
僕ナシでは生きられない身体になってしまったのにぃ」

Σ「ご、誤解を招くような言葉を並べないで下さい!!(汗)
僕はポートマフィアから逃げられないって
太宰さんを引き留めてたじゃないですか!!
貴方は僕を利用したんでしょ!?
こんな逃げる事しか出来ない異能を持つ僕を……!!」

「あぁ、そうだ。だから俺が鍛えてやった。
逃げるだけじゃ此処じゃ生きていけない。
お前を暗殺部隊トップに立つ程に付きっきりでな。
それがなんだ?今の受け身は。
すっかり怠けちまってまた逃げるだけの屑だ手前は(怒)」

「ッ………!(汗)」



中原に罵られ朔太郎は辛そうに俯いて地面を見つめる。
何回も見たその光景に中原はプチンと苛立ち
地面を蹴って一瞬で朔太郎に近付き
整った顔に蹴りを入れるが、
反射的に朔太郎は腕で庇い、吹き飛んで地面に転がる。



「グダグダ御託を並べるの止めろウザってえ。
そうやって何かあれば太宰に助けを求めて、
手前はいつもそうだ。俺と向き合わねえ。
俺から逃げてばっかりだった…」

「それは……(汗)」

「除け者にされて寂しかったの?中也」

「手前は黙ってろ!!(怒)
……太宰のデクの異能が厄介だとしても
手前ならいくらでもポートマフィアに戻れたはずだ。
言い訳を並べても手前はマフィアを裏切った。
そして俺に対しても屈辱的な裏切りだ。」

「それは……(汗)」

「もういい…次会ったら太宰諸共俺がぶっ殺してやる。
夜道には気をつけるんだな。太宰、手前もだ。
これで終わると思うなよ 二度目はねえぞ。」

「違う違う 何か忘れてない?」

Σ「ッ…!ぐっ…!(汗)」

「…?(汗)」



太宰が中原にそう言うと中原は動揺して
何かを躊躇うかのように朔太郎を見る。



「なーにかー忘ーれてないかなー?」

「に…、二度目はなくてよ!!/////(怒)」











「ちゅ…中也さん…?(汗)」

「アハハハハハ!!!(笑)」

「うるせえ!さっさと消えやがれ!!!///(怒)」



中原は太宰の予言を律儀にこなした。
そのやり取りを知らない朔太郎は
さっきまで恐ろしかった自分の上司が
足を内股にしてお姉言葉で吐き捨てる姿に
動揺を隠せなかった。