爆弾のスイッチ











「や、ややややめなさーい!
親御さんが泣いてるよ!(怯)」

「な、何だアンタ!(汗)」

「(ひいいい怖い!怖い!(汗))」



太宰の説得に押され、
中島は雑誌を包んでメガフォン代わりに
犯人の前に現れて気を逸らす役目についた。
いざという時は太宰が助けてくれると信じて。



「ぼぼ、僕は、さ騒ぎをき聞きつけた一般市民ですっ!
いい、生きてれば好いことあるよ!(汗)」

「誰だか知らないが無責任な事を云うな!
皆死ねばいいンだ!(汗)」

「ぼ、僕なんか孤児で家族も友達も居なくて
この前その院でさえ追い出されて、
行くあても伝手も無いんだ!(汗)」

「え......いや、それは…(汗)」



中島の話に犯人は少し引く。



「害獣に変身しちゃうらしくて軍警にバレたら、
たぶん縛り首だし、とりたてて特技も長所も無いし、
誰が見ても社会のゴミだけど...
ヤケにならずに生きてるんだ!
だ、だだだだだから!(汗)」

「敦君…駄目人間の演技上手いなぁ……。
朔太郎と善い勝負じゃないかい?」

Σ「ぼ、僕は駄目人間其の物だから…」



様子を見ている太宰は不意に朔太郎に話し掛けると
朔太郎はまた自信なさげに自分は演技では無く
駄目人間其の物だと自虐する。



「ね、だから爆弾捨てて、一緒に仕事探そう。」



急に凄んだ中島の表情に、犯人が恐怖を抱いた。



Σ「え!いや!僕は別にそういうのでは!(汗)」



犯人が動揺して一瞬人質と距離が空くと
太宰は国木田に合図を出す。



「手帳の頁を消費うから
ムダ撃ちは厭なんだがな......!
"独歩吟客"
手帳の頁を鉄線銃に変える!」



手帳から破った頁が鉄線銃に変わり、
犯人が持っていた爆弾のスイッチを
引っ掛けて飛ばす。
太宰の「確保!」と云う掛け声と同時に
国木田は犯人に回し蹴りをし、
床に伏せて押さえつけた。



「一丁上がり〜」



そう云いながら太宰は国木田の元に歩み寄る。
朔太郎も緊張の糸がほぐれたのか、
ふらふらと後を付いて行き、
中島も爆弾のスイッチと爆弾が
犯人から離れた事にホッとする。が、



トンッーーーー…「ぶ!」バタンッ!!



ピッ「あ。」

「「あ。」」

「え?」



中島は転んだ際にスイッチを押してしまった。



「爆弾!爆弾!あと5秒!?」



周りが動揺する中 後5秒では
国木田も太宰も打つ手がない。
近くにいる自分 押した自分が責任をと、
中島は思わず太宰が話していた
爆弾に何か被せて爆風を抑える方法を捻り出し、
其の何かは自分を選んでしまった。



「莫迦!」



残り1秒



中島は死んだとギュッと目を瞑る。が、
何もなく心臓はバクバクと強く鼓動を打っていた。
パッと見上げると太宰を中心に、
国木田と犯人 そして朔太郎も
伏せる中島の事を見下ろしていた。



「やれやれ......莫迦とは思っていたがこれほどとは」


国木田は呆れて溜息を吐く中、



「自殺愛好家の才能があるね彼は」



と隣で太宰はクスクスと笑う。



「はぁ……やっと終わったぁ…」



朔太郎は何もしていないのに
人一倍疲れた表情で溜息を吐いた。



「へ?……………え?(汗)」



呆然とする中島に追い打ちを掛けるように、



「ああーん兄様ぁ!大丈夫でしたかぁぁ!?」

「いだっ!?」



人質だった女子高生が犯人に抱き着く。



「い、い痛い痛いよナオミ!
折れる折れる。って云うか折れたァ!!」

「……………へ?」



中島は状況が付いて行かずにいる。
其れもそうだろう、
完全に事件だと思っていたのだから。



「小僧。恨むなら太宰を恨め。
若しくは仕事斡旋人の選定を間違えた己を恨め。」

「そう云うことだよ敦君。
つまりこれは、一種のーー入社試験だね。」

「入社………試験?(汗)」

「その通りだ。」



そう云いながら出て来たのは探偵社社長
福沢諭吉 能力名 " 人上不造 "。
渋い色合の着物を来た背筋の通った男だった。



「そこの太宰めが"有能なる若者が居る"と云うゆえ、
その魂の真贋を試させて貰った。」

「君を社員へ推薦したのだけど何せ、
君は区の災害指定猛獣だ。
保護すべきか社内でも揉めてね。
で、社長の一声でこうなったと。」

「で、社長……結果は?」

「…………太宰に一任する。」



福沢は中島を少し見つめた後そう云い、
再び社長室の中へと戻って行った。



「………」

「合格だってさ。」

「つ、つまり……?
僕に斡旋する仕事っていうのは此処の……?(汗)」

「武装探偵社へようこそ。」



中島は状況を理解して冷や汗を流した。



「うふ。よろしくお願いしますわ」

「い、痛い!そこ痛いってば!
ナオミごめん、ごめんって!(泣)」



谷崎潤一郎 能力名 "細雪"
その妹ーーナオミ。

中島を押した犯人はナオミだった。



「ぼ、僕を試すためだけに……
こんな大掛かりな仕掛けを?(汗)」



中島はドサッと尻餅を付いた。



「この位で驚いてちゃ身が保たないよ?」



笑顔で云う太宰に恐怖を感じたのか、
中島はそのまま後退する。



「いやいや!こんな無茶で物騒な職場!
僕、無理ですよ!(汗)」

「おや、君が無理と云うなら強制は出来ないね。
となると君が住んでる社員寮引き払わないと。
あと寮の食費と電話の払いとかもあるけど……大丈夫?」



中島は力無く涙が溢れ出た。



「選択肢無いじゃないですかぁぁぁあ!!!!」



中島の声が探偵社に響き渡った。