珈琲より緑茶











「すンませんでしたッ!」バンッ



あの後散らかった事務室を整理し、
太宰と朔太郎と国木田と中島
そして谷崎とナオミが下の階の喫茶店に移動した。



「試験とは云え、随分と失礼な事を…」

「ああ いえ、良いんですよ。
(意外と良い人だこの人……)」」

「何を謝る事がある。あれも仕事だ谷崎。」



珈琲を飲みながら国木田が云うと、
其の隣で演技がノリノリだったのを弄る。



「国木田君も気障に決まってたしねぇ
"独歩吟客"!」キラーン!

Σ「ばっ!違う!
あれは事前の手筈通りにやっただけで!(汗)」

「因みに朔太郎はドが付くほどの正直者でね。
居ても云いから口は開くなと云ってたのだよ。」

「む、寧ろ僕は休みでも良かったんじゃ……」

「駄目だよ私が働いてるんだから。」

「……(汗)」

「ともかくだ、小僧。貴様も今日から探偵社の一隅。
ゆえに周りに迷惑を振りまき、
社の看板を汚す真似はするな。
俺も他の皆もその事を徹底している。なあ太宰。」

「あの美人の店員さんに"死にたいから頸絞めて"って
頼んだら答えてくれるかなあ。」

「黙れ!迷惑噴霧器!!」



暴れ出す国木田に谷崎は止める様子も無く、
自分達の自己紹介をする事にした。



「ええと…改めて自己紹介すると……
ボクは谷崎。探偵社の手代みたいな事を
やってます。ンで、こっちが」

「妹のナオミですわぁ!」



ナオミはベッタリと隣にくっついた。
その様子に中島は疑いを目を向けてしまう。



「お兄様のことでしたら私、何でも知ってますの。」

「き、兄妹ですか?本当に?(汗)」

「あら、お疑い?」



ナオミは谷崎の上着の中に手を入れ、
素肌を優しく滑らかに触れている様だった。



「勿論どこまでも血のつながった実の兄妹でしてよ...?
このアタリの躯つきなんて
ホントにそッくりで......ねえ、兄様?」



うっとりするナオミに谷崎は冷や汗を流す。
そして納得しない中島は追求しようとすると、
国木田が其れを制止した。



「そういえば、皆さんは探偵社に入る前は何を?」



中島の言葉にシーンと静まり返り、
不味い事聞いたのかと中島も固まるが、
「何してたと思う?」と太宰が聞いてきた。
新入社員毎度の事らしい。



「はぁ…じゃあ…谷崎さんと妹さんは……学生?」

「おっ。中(あた)ッた。凄い。」

「どうしてお分かりに?」

「ナオミさんは制服から見たまんま。
谷崎さんのほうも、歳が近そうだし勘で。」

「やるねえ、じゃあ国木田君は?」

「止せ!俺の前職など如何でもーー…!」

「うーん、お役人さん?」

「惜しい。」

「彼は元学校教諭だよ。数学の先生。」

「へええ!」

「昔の話だ。思い出したくも無い。」

「じゃあ、私は?」

「太宰さんは………(……想像もつかん!(汗))」



中島は太宰をジッと見るが、
職場の背景が全く浮かばない。



「無駄だ小僧。武装探偵社七不思議の一つなのだ。
こいつの前職は。」

「確か、最初に中てた人に賞金が有るンでしたっけ。」

「そうなんだよね。誰も中てられなくて、
懸賞金がどんどん膨れあがってる。」


「俺は溢者の類だと思うが、こいつは違うと云う。
しかしこんな奴が真面な勤め人だった筈がない。」

「ちなみに懸賞金は如何程、」

「参加するかい?
賞典は今ーー七十万だ。」

「!!」ギラッ



金額を聞いて中島は目がマネーになり、
席をスタッと立ち上がった。



「中てたら貰える?本当に?(汗)」

「自殺主義者に二言は無いよ。」



中島はギラッと目に力が入ると、




「勤め人!」

「違う。」

「研究職!」

「ブー。」

「工場労働者!」

「ちがーう。」

「作家!」

「ブッブー。」

「役者!」

「違うけど、役者は照れるね。」

「うーんうーん…(汗)」

「因みに私と朔太郎君は同じ職場だよ。」

「余計分かんなくなったああああ!!!(汗)」

Σ「!」ブッ



まさかの事に中島は頭を抱えた。
急にオーバーなリアクションに、
喫茶店なのに緑茶を啜っていた朔太郎は
思わずブッと吹き出してしまった。



「そうだよね……僕みたいな奴が
まともな職に就けるわけ無いよね……」

「あ!いえ!ごめんなさい!(汗)」

「本当は浪人か無宿人の類だろう?」

「違うよ。この件では私は嘘など吐かない。
降参する?じゃあ、此処のお支払いは宜しく。」

Σ「あ!」



ピリリリリ

「うン?ハイ。………え?依頼ですか?」



谷崎が取った電話で7人は探偵社に戻った。