mint


溶けて、それから。


「うう〜、暑くて溶けちゃいそう…」
ソファに座った姿勢のまま、くてん、と身体を横に倒した。本当に溶けてしまったら、このまま足元からずるずると落ちて行くのかなあ、とぼんやり考える。それだとなんだかスライムみたいだから、どうせなら、溶けたアイスのように液体になりたいな。
「ねえ、嵐ちゃん。もしも私が本当に溶けちゃったら、どうする?」
ふと浮かんだ質問を、ムラが出来ないよう丁寧に日焼け止めを塗っている嵐ちゃんへと投げかけてみる。作業をしながらでもしっかりと聞いていてくれたようで、嵐ちゃんはそうねェ、と呟く。
「その時は両手で掬って、小瓶にでも詰めようかしら」
そしたら、溶けた後も一緒に居られるでしょう?続けられた言葉に、思わず口元がゆるんだ。私がどんな姿になったとしても、嵐ちゃんは一緒に居てくれるつもりなんだ。それがすごく嬉しくてしあわせで、ゆるんだ口元から、えへへー、という声が零れる。
「夏が終わったら、小瓶の中の溶けた私のことを飲み干してね?」
「ええ、もちろん。そうしたら文字通り、アタシたちは一つになれるもの。」
いつの間にか、日焼け止めを塗り終えてソファのすぐそばまで来ていた嵐ちゃんが、そっと目の前に小指を差し出した。私が自分のそれを絡めたのを合図にして、お互いの唇は、約束の歌を紡いだ。

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