ショコラ色に染まる星
レモン色の短冊を大きな笹の葉に背伸びして吊るして、よし、と一人で小さくうなづいた。高すぎず低すぎず、良い位置に吊るすことが出来たのでは?と自分を褒めてあげたい気分だ。ここならきっと、そんなに目立たないはずだから。…誰かに見られて恥ずかしくなるようなお願い事は、していないんだけれど。
「ようやく書き終わったのね?」
「わっひゃあ!?」
突然後ろから声を掛けられて、思わず変な悲鳴を上げてしまった。振り返れば、目をぱちくりとさせている嵐ちゃんの姿。
「ごめんなさい、驚かせるつもりは無かったの」
「ううん、私が勝手にびっくりしただけだから!」
だからだいじょうぶ!と続ければ、それなら良いんだけど…と、少しだけ元気の無い声が返ってきた。なんだか表情もしょんぼりとしていて、慌てて、そういえば!と軌道修正を試みる。
「嵐ちゃんは、もう短冊を吊るし終わってた…よね?どんなお願いごとをしたの?」
「アタシ?もっと美しくなれますように、ってお願いしたわよォ」
「ほへえ…嵐ちゃんらしいお願いごとだ!」
思わずぴょこんと跳ねて言えば、嵐ちゃんはありがとう、と嬉しそうな笑みを浮かべた。その笑みにつられて、私はこんなお願いごとをしたんだよ、と吊るしたばかりの短冊を指さす。
「えっと…“ココアになりたい”?どういう意味かしら?」
不思議そうに、嵐ちゃんが私を見つめる。ココアになりたいだなんて、きっと誰が見ても変だ、って言うようなお願いごとなのに…アメジストみたいな綺麗な瞳には、変だとかおかしいだとか、そんな感情は欠片も滲んでいなかった。だからこそ、私は嵐ちゃんに思っていることを素直に伝えることが出来るんだなあ、と実感する。
「うんと、ココアって飲むとホッとするし、身体もあたたまるでしょ?だから私も、嵐ちゃんにとってのココアに…一緒にいてホッと出来るような、あったかいと思ってもらえるような人になりたいなあ、って」
なるほどねェ、と納得した様子の嵐ちゃんに、変かなあ、と伝えれば、嵐ちゃんはふるふると首を横に振った。
「とっても素敵だと思うわ」
「ほんとに?」
「ええ」
答えると同時に、きゅう、と優しく抱きしめられる。回された腕からじんわりと温もりが伝わってきて、なんだか、嵐ちゃんのほうが私にとってのココアみたいだなあ、と思った。
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