4.共同作業
味噌汁の具は豆腐にネギ、ナスニンジン。
メインは魚の煮付け。じゅう数人いると中々大変だ。
ご飯はありがたいことに炊飯器がある。
全員に行き渡るように野菜炒めを大盛りで。
「……僕ら食事をとる必要ないんだけど」
ゲンナリした小夜の声が聞こえるけれど、文句言うなと「はい、ちゃんと野菜切る」と叱咤激励。
小夜の言う通りこれまでご飯を作ったことはなかった。
私はお腹がすいたら帰るし、常備している健康食品で済ませることもある。
でもせっかく畑もあるのだ。
魚も町に出て調達できる。
何より結構な重労働。
「貴方は我が社の社員ですよ。働かないのにお給料は出ません」
「…だから合戦上に」
「営業マンの素質はないので事務方に回ってもらってるんです」
「えいぎょーまん?」
ワンマン社長ここにあり。
「ご飯をみんなで食べることをこれから推進しようと思ってね。食事作りは私も得意ではないけれど、作り方の本とかあるし、あとは人員補充が課題だったの」
「全員分なんてかなりきつそうだけど」
「やっぱ2人だとね。今回の遠征やら出陣でまた何振りかこないかなー炊事要員」
とはいうものの初めて3時間。
煮付けなどにやはり手間取った。
「というか小夜、手際いいね」
「切るだけだし」
「世のお母さんはその技を身につけるのに苦労するんだよ」
小夜の手際よさに感心していると、門が開く音がした。
同時に聞こえてくる賑やかな声。
「あるじ様ー!!」
「大将ー!帰ったぜー!」
「ただいま戻りましたー!」
出陣組と遠征組が同時に戻ったみたいだ。
小夜にその場を任せてお出迎えをしにいく。
「おかえりなさい、みんな」
見たところ中傷まではいかない。何人か軽傷が見受けられる。
「大将」
薬研が前に来て、ただいま戻ったぜ、と誇らしげに資材を前に出した。
今日は豊作みたい。
「ありがとう薬研。怪我をした人は?」
「刀装がやられたやつは何人かいるが傷はない」
「よかった。蛍丸は?」
薬研の後ろに控えていた蛍丸にも声をかける。
「けっこう刀装削られたのと、厚と国俊が軽傷。他は無事だよ」
「こんくらい平気だっての!」
「そーだぜ!なんならもう一戦」
騒ぐ2人にゴツンと拳を突き立てると、うげっ、とバツの悪そうな声を出した。
「軽傷中傷でも治りは遅いんです。刀装あっても槍に捕まったら壊れるんだからおとなしく手入れ部屋」
はい、ゴー、と手入れ部屋を示せば、はーい、とおとなしく手入れ部屋へと向かう2人。
あの2人も大分危なっかしい。小夜のように心が壊れるわけではないけれど時にその無謀さが怖くなるときがある。
刀の命が終わったら死が訪れる。
鍛刀すればまた新しい子が来ることもあるらしい。
でもそれは、別の刀だ。別の魂だ。
(注意しとかないと)
「そういや大将、また新入り見つけてきたぜ」
「あ、あるじ俺も俺も」
思案していると2人が思い出したようにそう言ってきた。
そして刀剣達をかき分けて前に出てきたのは、
「大倶利伽羅だ。馴れ合う気はない」
「燭台切光忠だよ。よろしく」
「わしは陸奥守吉行じゃ。よろしく頼むぜよ」
「加州清光でーす。川の下の子河原の子ってね」
これまた、豊作。
打刀が一気に3振り。太刀が1振り。
いやでも、すごーく癖のある子が混じっている。
だけれど何にせよかなり貴重な戦力だ。
戦さ場の幅が広がるし戦略の幅も広がる。
これまでより傷を負う子も減るだろう。
「ここの本丸を任されてる審神者です。蛍丸以外は短刀と脇差だったからすごく助かるよありがとう」
そう言うと、
「こんな可愛らしい子が主かー」(ホストかお前は)
「女の子なら可愛くデコってね」(デコるって女子かお前は)
「どうでもいい」(反抗期かお前は)
「おんしゃあ礼儀正しいのー」(某偉人かお前は)
揃いも揃ってまぁまぁ癖のある子達だ…。
「てか、なぁんでお前が同時に来るんだよ!よりによってさー!」
「なんちゅう、わしは知らんぜよ」
「ほんっとむかつくんですけどー!」
「倶利伽羅また仲良くね」
「お前とも馴れ合うつもりはない」
「つれないなぁ」
…君ら仲違いして破壊しないでね?
「ねぇ」
呆れて4人の光景を見ていたら服の裾を引っ張られる。
ん、と見れば、小夜が炊事場を指差した。
「用意」
「あ、すっかり忘れてた!てか、4人も増えたらメインもっと作んなきゃ。小夜手伝って」
「えー…」
「チョコレートで手を打って」
「わかった」
「即答っ!」
強かだな小夜…てかチョコレート気に入ったのね。
小夜と私の会話を見ていた他の刀剣達は何事かときょとんとしている。
こうしちゃいられない。準備しないと。
「えっと、蛍丸、薬研」
古株2人を呼び。ささっと前に出てきたところへ指示を出す。
「今日はみんなでご飯食べるから。用意頼めるかな?」
「ご飯??」
「大きな座敷あるでしょ?机出して、人数分の座布団出したり。あとご飯の配膳手伝って欲しいんだけれど」
「短刀達に場所の用意はやってもらうさ」
「他はご飯持っていけばいい?」
「よしそれでお願い。4人増えたからその分の魚料理ちゃちゃっと作るね」
その間に、厚と国俊の手入れ終わるといいけれど。
「なら僕も手伝うよ」
「わしもじゃ」
やりとりを見ていた燭台切と陸奥守が頼もしい申し出をしてきた。
だけれど、せっかく来てもらったばかりなのだ。
今日くらいはお客様扱いでもいいだろう。
「4人は今日はいいよ。初めて来たんだし、ウェルカムパーティってね」
「うぇるかむ?」
「来てくれてありがとう歓迎します、て会のこと」
笑顔でそう言うと、加州が嬉しそうな顔をする。
他の子達(一部除く)も、まんざらではなさそうだ。
さて頑張りますか。
「じゃ、小夜。はりきっていこうか」
「めんどくさいけど」
「こら、気が滅入ること言わない」