視界が遮られ、光も遮断された暗闇。後手には手錠を掛けられ、絵に描いたような尋問の空間だ。
千歳は深く息を吐いて朦朧とする意識を覚醒させる。投与された自白剤は2本。意識をやったのは2本目を投与されて直ぐだった。
視界を遮る布は眼球に食い込まない程度の締め付けであるにも関わらず、解ける気配はない。
暗闇の中意識が朦朧とするためいつもの自白剤の投与より二割り増しで思考が安定しなかった。

カタンと部屋の隅の椅子から人が立ち上がる音がした。

(福本さん)

千歳は本日、自分をここまで追い込んだ人間のことを思い浮かべた。

2人一組の自白剤訓練。投与する側は、される側が事前に結城中佐から聴き出してきた、決められた文章とそれを解く暗号を聞き出さなければいけない。
よくあるスタイルの訓練に今回導入されたのが、目隠し。視界を遮ることで思考の幅を狭める狙いだ。

歩幅の大きいその身体が目の前まで来たことを足音で悟る。千歳は俯きながら彼の出方を待った。

「割と粘るな」

純粋な感嘆文だが、その声のトーンは一定だ。何の驚きもない。

「……そうですか」

しかしながら千歳は眉をひそめた。2本目を注入されてから数分経った頃だ、朦朧とする意識の中、決められた文章を漏らしかけた。
幸い、カバーとして教え込まれたよく似た別の文章を口走ったがそれがカバーということはこの優秀な男は気づいていた。

「千歳」

囁くように放たれた自分の名前に千歳は身震いする。思わず言うことを聞いてしまいたくなるような声音だ。少し前、彼がダンスホールでご婦人を落としたとの噂は本当なのだろう。

くい、と千歳の顎に指がかけられて上を向かされる。視界と光は遮られているが、その先に笑みを浮かべる彼がいることは否応にでも想像がついた。


その時、ガチャリと部屋の扉が開いた。大きな歩幅。ステップを踏むような足音。声を聞かずとも相手は理解できた。

「甘利さん」
「ご明察。こんな状況でよく分かるね」

偉いなぁ、と感心する声音の中に、見定めるような色が含まれている。
2人一組の訓練のはずだ。何故彼がやって来ると千歳は訝しんだ。

「随分と手こずってるな」
「意外と優秀でな」
「ふーん」

顎から手を引かれ再び俯いた千歳の背後に気配が移った。何をしているのだろう、と気を配る前にするりと大きく骨ばった手が首筋に這わされ、千歳は思わず「ひっ、」とか細い声を上げた。

「可愛い」

そのまま耳元でそう囁かれれば、朦朧としていた意識が覚醒し、目を見開く。

自白剤の訓練にも関わらず、ジゴロの訓練でもしているのかと千歳は文句の一つでも言いたくなったが、そこで思い直した。

(だからここにおられるのかも…)

だとしたら状況はあまりよろしくない。


「甘利さん…あの」
「多分わかってると思うけど、俺も訓練だからね」

悪い予感というのは的中するものだ。

「さっきは、三好が受けてたんだよねこの訓練。あいつも粘っててさ」
「どこまで持ち堪えた?」
「3本目までだったっかな、女顔負けの綺麗さだったよ」

確かに彼は女性並みの美貌と、妖艶さを兼ね備えている。男を落とす訓練でもいの一番に身体を売り込み、手早く済ませていた。
千歳がぼんやりと彼らの会話を聞きながらそんなことを考えていると、

「っ、?!ひ、ぁ」
「ん、いい反応」

耳裏を舐めあげられ思わず悲鳴がこぼれた。甘利は至極楽しそうにくつくつと喉を鳴らすと、ぱくりと耳朶を口に含んだ。

「あ、ふっ、や」
「ほら、感覚が敏感になるでしょ」
「やっ、め」

後手に繋がれ、目隠しをされ、身動きが出来ない状況で執拗に攻められる。千歳は瞳をきつく閉じて耐えた。

「っ、あ、!んぅ」

唐突に、頬に手を添えられ千歳が驚き目を見開くと同時に、ぬるりと咥内に舌が入り込んできた。
相変わらず甘利は首筋や耳を攻めている、今自分に口付けているのは、

(福本さ、ん)

トロンとその舌使いに意識を持っていかれそうになりながらも、千歳は頭を働かせた。彼は何をしているのだろうと。

くちゅりと、唇が離れると同時に首筋に感じていた感触もなくなる。
2人が自分を挟んで見下ろしている状態だ。

「何を」
「なぁ、福本」
「奇遇だな、同じことを考えていた」

何がだ、と千歳は眉根を寄せたが、直ぐに覚醒しかけていた意識を持っていかれた。腕に感じた針を刺す痛み、それに伴いやって来る混沌とした意識。

3本目が打たれたと分かったと同時にカチャリと手錠が外された。

(え)

何故、と感じる前に腕を掴まれ立ち上がらされると、流れるように

「っ、!」

部屋の中にあるテーブルに身体を押し付けられた。そして、再び後手に頑丈なあの手錠がかけられる。

(何を…)

「なぁ、千歳」

愉快さを押し殺すような甘利の声。

「ジゴロの訓練はさ、女性を悦ばせて情報を得るんだよね」
「自白剤は、相手の意識を限界まで奪うことがポイントだ」

福本の長い指が千歳の腕を伝う。

千歳はそこで気づいた。涼しい顔してろくでもない連中だ。押し付けられた身体を捻らせ、目隠しをされた横目でその先にいるであろう2人を睨みつけた。


「その2つを両立させたら、早く終わると思わないか?」


睨みつけたその先に、化け物の顔が浮かんだ。


ーーーーーー


「あ、ひぁ!あっ、やだ、ぁあ!」

後手の手錠を掴み、スカートたくし上げて尻を突き出させる格好。目隠しをされ、自白剤の影響からか思考の安定しない彼女は面白いくらい良く鳴いた。

ぐいっと手錠を引き、自らの腰を打ち付けて膣の奥を叩けば息を詰まらせて仰け反る。

「あっ、!」

今は目を見開いただろうか、福本は思わず舌舐めずりをした。自白剤を打たれようと落ちない優秀なその身体が、自分の竿によって翻弄されている。
目隠しにより福本の動きも分からず、思考も安定しない。
彼女は今、膣内を収縮させ男の竿を享受するしかできない状況だ。

仰け反った際に達したのか、そのままテーブルに倒れ込み余韻に浸る彼女を福本は攻め立てる。
再び手錠を引き、腰を打ち付け、奥を抉るようにその身体を蹂躙する。
これで何度目だろう。

「っ、もっ、あぁ!やだっ、やめっ」
「悪いな、まだだ」
「福本、さ、やだっ、ぁあ!!」

きゅうきゅうと膣内が収縮する。何度達したか分からないだろうに、まだ男の一物をここまで締め付けるとは稀に見る良い女だと、福本は口元を歪めた。

甘利と組んでジゴロ兼自白剤の訓練を始めて約2時間。前戯で何度も焦らし、身体を追い詰めても落ちなかった千歳を犯し始めてからは1時間程度。

安定しない思考なせいか、声を抑えることに気を配ることができない千歳は本当に良く喘いでいた。

「ひっ、あ、あん!」

何度目かの絶頂を迎え、くたりとテーブルに上体を倒れ込ませた千歳を、休ませることなく今度は甘利がその身体を持ち上げた。

「やっ、だ」
「なら体勢くらい変える?」

そうしたらスカート邪魔だな、とボソリと呟いた甘利が慣れた手つきで千歳のスカートを脱がせると、その身体を壁に押しつけた。

爽やかな笑みを浮かべて、なかなかえげつないと福本は苦笑した。

「あま、りさっ、やめっ」
「だーめ」

両足を上げられ、重力に逆らうことができず千歳の身体が落ちると卑猥な水音が響いた。
その膣は甘利のそれを根元まで咥え込んだ。

「はは、奥まで当たってるよ?これで動いたら気持ち良いだろうね」
「やっ、も、あ、ぁあ!」
「ほんと、可愛い」

膝裏から腰にかけて腕を回し、身体を安定させて腰を打ち付ける。女にしては筋力のついた、しかし男にとっては華奢な千歳の身体は揺さぶられ、無理やり快感を与えられる感覚に怯えたように声を上げた。

「やっも、やだっ、やだぁ!」
「っ、それ逆効果」
「っ、う、ぁや、だめっも、」

びくびくと足先まで震えさせて千歳は再び達した。しかし甘利は御構い無しに容赦なく攻め立てる。

「っ、やっあっー、いまっ、やだっ」
「ほら、ずっといっちゃう、よ!」
「っ、〜〜っ!」

達しても行為をやめられずにいかされ続け、千歳が声なき声を上げた。目隠しをしているためその瞳を見ることはできないが、恐らく焦点は合っていないだろう。痙攣する身体を甘利が抱きすくめる。

「っ、ぁ、」
「流石に放心状態だなここまですると」

くたりと甘利の肩に顔を埋め、肩を上下させて息をする千歳の頭を甘利は優しく撫でた。

「甘利」

苦笑する甘利に福本は声を掛ける。
甘利は福本を見遣り、そして眉尻を下げ肩を竦めた。

「お前、結構容赦ないよな」
「まだ終わってないからな」

抱きとめられていた千歳の身体が福本に渡され、再びテーブルへと運ばれる。
福本はテーブルへ押し付けたその身体に覆い被さると、朦朧としている千歳の中に惑うことなく竿を突き立てた。

「っ、あっ、ー!」

声をあげようにも、掠れたような乾いた音しか、もはや出せない。それほどまでに疲弊した彼女を福本は容赦なく攻め立てた。

「ひ、あっ、あ!」

制止の声すら出せず、与えられる快感をただ受け入れるだけの状態の千歳に福本の口は弧を描いた。

腰を動かしつつ千歳の耳元に顔を近づけ囁く。

「言えば楽になる」
「あっ、ふ、ぁ!」
「千歳」
「ふ、くもと、さ」
「このままがいいか?」

ニヤリと笑い、膣の奥、コツンと亀頭が硬い部分を擦れば千歳は逃げるように腰を捻った。
すかさず福本は快感を押し付けるようにその腰を掴み、その部分を攻め立てる。
消えることのないオーガズムはもはや快感を通り越して苦痛だろう。目隠しされた布がじわりと濡れた。

「もっ、や、これ以上はっ、やだっ」

震えるその声に福本は笑みを深める。秘豆を親指で愛撫しながら、囁いた。

「なら、どうすればいいかわかるだろう?」

4本目を使う必要はない。福本はペロリと彼女の耳を舐めあげた。びくりと身体を震わせ、荒く短い息を繰り返す千歳はか細い声で呟いた。



ーーーーーー




目を開ければ見慣れた天井。身体を起こせば節々に痛み。
ベッドから起き上がった千歳は身体に感じる怠さに眉をひそめた。随分と容赦なくやってくれたものだと、表情の変わらない彼を思い浮かべ舌打ちをした。

現在の自分の姿を確認し、昨晩とは違う服装、綺麗にされた身体に女遊びの堪能な彼に感謝する。
腰をさすりながらベッドから降りようとすれば部屋の扉が開いた。


「随分と容赦なくやられましたね」

気取ったポーズを取りながら入ってきたのは三好だ。愉快そうに笑みを作り、千歳の姿を目に留めた。
千歳は三好を見遣るが興味なさそうに彼から視線を逸らした。

「何の用ですか」
「特にこれといった用はありませんよ」
「からかいにきたんですか?」
「そこまで暇でもありませんね」

弧を描く口元だが小馬鹿にしたような笑みには感じられない。

腰掛けてきたベッドから千歳が立ち上がるとふらりとその身体が揺れた。
倒れ込みかけた身体は三好の胸に綺麗に収まる。

「……すみません」
「3本打たれたんです。まだ身体が回復してないでしょう」

呆れたような、しかしどこか楽し気な声だ。そう言えば、彼も3本まで粘ったと福本が言っていたのを千歳は思い出した。

「三好さんはどなたに?」

見上げれば、あからさまに不機嫌な顔が拝め千歳は思わず目を丸くし、そして苦笑した。思い出したくもないらしい。

「それにしても、貴女もやりますね」

話を逸らすように三好は彼女に話題を振る。胸に収まっていた千歳をベッドに座らせた。


「甘利にも落ちず、結局、福本に言ったのもカバーだったんでしょう?」


妖艶な笑みを浮かべた三好に千歳はくすりと笑みを零した。
二重、三重のカバーは用意しておくものだ。分かりやすく、解かれやすいダミーの文章から述べていく。

千歳は口元の笑みを整えると、表情のない顔に戻した。

「漏らしかけたのは事実です、ただあそこまで攻められると逆に言いたくなくなります」
「強情な人だ」
「褒め言葉ですね」

強情くらいが丁度いい。千歳は肩を竦めた。

徐に、三好の手が千歳の頬に添えられた。そのまま顎までするりと指先が這わされ、上向かされる。


「次は是非、僕としませんか?」


抑えきれない好奇心と狩人の目を携えた三好に、千歳は目を細め、その手を取った。



「貴方が堪える方なら」



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