※本編連載の三好が夢主を無理矢理抱いています
※誰も報われない
※三好が引かずに夢主を奪っていたら、というゲスシリーズ(尚他のキャラはry)


―――


色のない存在になりたかった。

スパイはグレーの存在だと結城中佐は言う。何者にもならず何者にも囚われず何処の時間にも存在しない。存在するはずなのに存在しない、まさに白と黒とも言えぬ灰色の存在。
色とりどりの世界でもD機関の入る大東亜文化協曾はモノクロの世界だった。灰色の存在達がまるで色彩豊かな世界のように踊る奇妙な空間。
彼らは決して色付きにはならない。己の色を灰色を保ちながら鮮やかな世界を塗りつぶすのだ。

灰色は何者にも染まらない、何者にもならない。

しかし、千歳は無色になりたかった、透明で見えない存在に。
染められることはあってもそれは決してーーー





「三好さん…?」

月光に照らされたその相貌は矢張り美しかった。儚く妖艶で触れれば溶けて消えてしまいそうな存在。鈍色の灰の世界にいたく玲瓏な光を放つ。
三好という男は機関員の中でも一等煌めく存在だった。
しかし今は、その存在にうつつを抜かす様な状況ではなかった。

ギジリと粗末な寝具が2人分の重さに悲鳴をあげた。

「どうされたんですか?」

千歳の問いに三好は答えない。


闇夜が深まる時間。床に入ろうとした千歳の部屋に音もなく現れた三好は呆然とする千歳を何も言わずに押し倒した。
何のつもりだと睨み付けた視界は、唇とともに塞がれる。歯列をなぞり何度も咥内を蠢く舌に翻弄されまいと、彼の胸を押し退けた。

「一体っ、……!」

再度鋭い視線を投げつけた先に千歳は息を飲む。
抗議の眼差しを向けた先に彼はいなかった。

心ここに在らず。三好の瞳に千歳がいない事に千歳の中に不信感が募った。
どうしたのだ、何があったと問うても三好は千歳に答えはしなかった。


「っ、三好さん」

答えを求める千歳など見えないように三好は事を進めていく。己を押し返した千歳の腕を掴むと寝具に縫い付け、はだけさせた首筋に噛みつき肌をまさぐった。
ぞわぞわと背筋を掛ける感覚に千歳の身体は強張っていく。

「みよしさ、なにをっ、ン」

またもや抗議の声は口付けに飲み込まれた。逃げる舌を吸われ絡め取られ、身体を這う指が胸の頂を摘んだ。

「ンンッ!」

くぐもった声が千歳から漏れる。挟まれ摘まれ遊ばれた後、彼の指は下へ下へと落ちていった。
流されてはいけない。しかし両脚の間に割って入られた三好の身体により足を閉じることもできず、あっさりと三好の指が下肢の真ん中に触れた。
肩を震わせた瞬間、三好は強く千歳の舌を吸った。彼に翻弄され充分な酸素が脳に行き渡らず、千歳はぼんやりと三好を見つめる。
満足したのか、三好はその眼差しを受けると彼女からようやっと離れた。

「ど、うして…っ!ぁ、やっ!」

息つく暇もなく千歳から嬌声が響いた。

「ひっ、あ!だめ、三好さ、ンッ!」

水音が響く。変わらず無言で三好は千歳を攻め立てた。
彼女の中を三好の細くしかし男性的な指が蠢く。ざらりとした部分を擦り、親指の腹でで突起をぐちりと潰せば千歳が抗うことは叶わなかった。
昂らされる熱にはしたないと自嘲を繰り返し、しかし千歳は翻弄されていく。
どうして、何があったと巡る疑問に答えはやらないというように三好は手を休めない。

「だ、めっ、きちゃ、あっ、ァア!」

一際高く鳴いた千歳がシーツを握りしめる。指先までピンとしならせた千歳の股から液体が溢れた。収縮する彼女の中が三好の指を締め付ける。
三好の瞳が細められた。

「っ、アッ、まって!やっ」

再び三好の指が千歳の中を弄び始めた。同じように攻め立て、熱を逃がさぬように抜き差しを繰り返す。続く昂りに千歳が悲鳴を上げた。

「もぅ、やっめ、て…っ!」

三好さん、と彼の名を呼んだ瞬間、小刻みに身体が震え千歳は呆気なく達した。同時にくたりと肢体からは力が抜けて無防備な姿が曝け出される。
ずるりと抜かれた指の感覚さえ毒だった。

「……三好さん」

気怠げな瞳を千歳は三好に向ける。
あいも変わらず何も言わず、ただ光のない瞳で千歳をぼうと見つめる三好に千歳は底知れぬ不安を感じた。

何が、とも聞くことができない。聞いたところでこの灰色の存在は顔を隠してしまうだろう。
どうすることもできない状況に顔を歪めた千歳は緩慢に腕を上げ、三好に触れようとした。
隠してしまうその相貌に手を伸ばした。




「もう、戻れませんね。これは」




え、と千歳が目を見開く。
同時に伸ばした手は彼に攫われた。千歳の視線と彼の視線がようやく交錯する。光が灯り、ようやっと三好の中に己を見つけた。

「三好さん?」

しかしどうにも様子はまだおかしい。

どうして、ーー


「悲しいんですか……?」


それは、彼らしからぬ悲痛な面持ちだった。

いつもの様に笑みを浮かべているにも関わらず、今にも落涙しそうなその様相に千歳は動揺した。
何故どうして、交錯する思考に答えは見つからず、彼女が伸ばし掴まれた手を三好が己の頬にすり寄せた。

「何も見ずに、貴女を抱いてしまえばこの色を落とせると思ったんですけどね」
「みよし…さん?」
「ねぇ、千歳さん教えて下さい」

ひとつ瞳を閉じた三好が千歳の手の甲に口付けた。




「どうすれば、貴女は僕のものになりますか」




灰色が染まる気配がした。




ーーー




「だめっ、三好さんっ、やっ、だ」

組み敷かれた体躯を捻らせ彼の腕から脱しようと千歳は藻掻いた。
三好が囁いた言葉は愛の言葉に関わらず、それは千歳に耐え難い絶望を与えた。


ーー何故気付かなかった


彼らを千歳は見てきた。彼らを観察し、その化け物としての素質を認め敬意を評してきた。
その礎として朽ちる為に在った己の身体を彼は言ったのだ、欲しいと。何者にも染まらず灰色の存在として、欲することをしない彼が発したその一言は、千歳をどん底に落とすには充分だった。

これ以上共にいては駄目だ。
逃れようと足掻く千歳に三好は常から見せているあの笑みを向けた。いつもの、三好の笑みだ。
変わらぬその表層に千歳が瞠目した。

「み、よしさ、ん…」

震える声音は現実を体現する。
絶望の波はもはや千歳を逃しはしなかった。


「戻れないんですよ、もう」
「ひっ、やっ、っ!ぁ、ァア!!」


入り口に充てがわれた三好の竿が一気に千歳を貫いた。充分な水分を含んでいた其処は三好のモノをいとも簡単に呑み込み締め付ける。

「三好さ、ん、やだっ、やめてっ」

律動が繰り返され千歳の制止の声は嬌声に呑まれていく。

「あっ、ン、やっ、だ!ひっ、ぁあ」
「好きでしょう?此処」
「っ、やっ!っあ!」

まるで恋人のそれだった。恍惚に濡れた三好は何度も千歳の中を擦り、頂を突起を摘みながら彼女を愛した。
ドロドロに溶けた欲望が絡みつき千歳の理性すら呑み込んでいく。何度も突き上げられた肢体を愛おしむ様に三好は口付けを落としていた。


ーーやめて。


これは違う、これは現実ではない。

奮い立たせた理性を動員して三好に叫ぶ。

「ちが、う」

これは虚構だ。この想いは虚構で塗り固められた幻だ。

「こんなの、違っ、ンッ!」

訴えようと開いた千歳の口は塞がれた。黙れと言わんばかりに三好は腰を打ち付け、千歳の中のあらゆる場所を蹂躙する。
理をもって考える隙など、与えはしないと。

「っ!ンンっ!」

深く突き刺された竿に千歳は三好の中で悲鳴を上げた。生理的に彼の熱を締め付けてしまう。
震える千歳の身体は三好に抱きすくめられ果てた。

「……なんだ、貴女も悦いんじゃありませんか」

抵抗など無意味だと悟る三好の妖艶な笑み。悦に浸り千歳の瞳をひと舐めする。
蠱惑に満ちた声音は千歳を嘲笑しているようだった。違うと言えど制御できない喜悦に逃げることも叶わない。

助けを求める先すら此処にはないのだ。


ーーでも、駄目……



「私は、貴方を見ることはありません」


それでも、と千歳は三好に訴え続けた。
違う。彼が抱いているのは幻想だ。
そしてその幻想に自分が手を伸ばすことは決して、ない。

「これ以上意味はないんです、だから」
「今更やめろと?」
「っ、三好さん」
「生温いですね」

ニタリと笑った三好に身震いする。駄目だと伸ばした千歳の手は彼には届かなかった。

「分かっていますよ」
「やっ、あ、だめ」

ゆるりと隆起した三好の熱が千歳の中を押し広げた。駆け上がる悦に抗おうとする千歳を嘲笑うように三好はゆっくりと千歳を追い詰めていく。思考が奪われ泥沼に嵌る身体に失意に打ちひしがれた刹那、
見えたのは、一等小柄なーー


(どうして)


脳裏に刻まれた彼の後ろ姿だった。



「千歳」



耳に、ひどくか細い声が届いた。

「貴女の瞳が映すのは…」
「三好、さん?」


「やはり僕じゃないんですね」


頬に添えられた手は暖かいにも関わらず三好の瞳に灯るのはひどく冷たく悲痛な色だった。
この相貌はなんだ、この色はなんだ。
彼の言葉の意味も、その色の意図も何も分からない。


(ちがう……)


否、これは


ーーーーー分かっちゃいけない。


途端に、千歳の中に芽生えたのは得も言えぬ恐れの心だった。

「や、だ、もうやめて、三好さん」
「千歳」
「お願いだから、もう」

かき乱さないでくれと瞳を揺らした千歳に三好が困ったように笑んだ。

「貴女の感情を彼はこれだけ乱すんですね」
「ちが、う…」
「違わない」
「ちが、あっ!やっぁあ!!」

違う。違う。何もかも違う。己の感情も三好の感情も何もかも違うと千歳は叫びたかった。

震える千歳の嬌声が響き渡る。幾度も乱される心と身体に千歳自身、もはやどうしたいのか、何をしたいのかすら曖昧になっていた。
奥底を覗かれ暴かれ摘み取られていく自身をただ眺めることしか出来ない。
ひたすら鳴き、泣き、果てども果てども繰り返される。

躰は既に千歳の意思を離れて三好を求めていた。


「千歳」


ひどく柔らかな声音ももはや恐怖しか産まない。
そして、その認識はやはり違っていないと千歳は思い知らされた。



「孕めば変わりますか」
「………え」



ツウと三好の指が肢体をなぞる。

「貴女のこの中に、」

しっとりとした腹部を撫ぜる掌に絶望を乗せた言の葉を彼は紡いだ。


「僕との命を芽生えさせれば、貴女は」



ーー僕のものになりますか。



狂気としか言いようがなかった。濡れた瞳と歪められた口元に千歳は、自分とそして彼の絶望を見た。
駄目だと、いけないと紡ぐことすら出来なかった。

律動が開始される。思い出したように意識を戻した千歳はしかし鳴くことしか許されない。

「ン、やっあぁ!だめっ、やだぁ」

何度も果てた躰はもはや彼の子種を確かに欲していた。求める身体を心は拒むが自然の摂理はそんなことを悟ってはくれない。

「限界、でしょう?ほら」
「ふっ、あっ、やめっ、だめもうっ、」

穿たれた熱が奥底に隠された欲を暴いて引き摺り出す。やめてと嘆き懇願しても彼は千歳を愛することを止めはしなかった。

「み、よしさんっ、ぁ、やっあぁ!」
「千歳」

ぐちりと押し潰された奥に千歳の中が限界を迎える。その収縮の中で躍動した彼の雄が己の中に白濁を注ぎ込む感覚が千歳に伝わった。



「愛していますよ、千歳」





何処で違ってしまったのだろう。
壊れてしまった関係もバラバラになった己の心も拾い集めることはもはや千歳には出来なかった。
ひたすら己に腰を打ち付け貪るかの男は、千歳の知る三好とは違う三好だ。プライドが高く他人よりひとつ高い位置に鎮座するその姿は、孤高だけれどもひどく美しかった。
その三好が今、愛を宣っている。
何度も1人の女に子種を注ぎ込み、己のものにしようと笑っていた。

灰色の存在だった筈だ。彼は優秀な灰の1人だった、なのに。

千歳は虚ろな瞳で三好を見つめた。



ーーあぁ、そうか。



瞳から一筋雫が溢れた。



「ごめん、なさい」



ーー壊してしまったのは、私なんだ。



込み上げる罪悪感も後悔も飲み込むように三好が咥内を犯す。


無色になりたかった。そうすれば、


(色が移ることも、なかったのに……)


ごめんなさい、と懺悔した先、
落涙した三好の笑みが見えた。




ーーーーー



終末
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