組み敷いた肢体が瑞々しさを放つ。月光が照らすその曲線が艶めかしく波多野を誘った。
ツゥ、と腰から胸元、首筋へと指を這わせれば擽ったそうに彼女が身を捩った。

「や、ん…」

そのまま頬に手を当ててゆっくり深く口付ける。舌を絡ませ歯列をなぞり、蠢く己が舌に翻弄され涙の粒を落とすその姿に波多野は高揚感を覚えた。それはじわりじわりと高ぶり彼を侵していく。

「ん、ふぁ、んっ」

いっとう強く舌を吸い上げ、股に滑り込ませた膝で局部を押しあげれば千歳の身体がびくんと震えた。脚を閉じようとばたつかせる下肢により強く擦り付けてやる。あまりに粗雑な愛撫だが、凹の部分は確かに女の反応を見せていく。
どろりと溢れ出る蜜液が波多野の筋肉質な脚を濡らし、てらてらと淫らな色を放っていた。

「ひっ、ぁ」
「へぇ、こんなものでも感じるのか」
「っ、ちがっ、あっ、」
「違わないだろ」

ぐち、と局部の突起物を膝皿で押し潰せば直接的な快感に千歳の腰が浮いた。擦り上げるたびに蜜を出す女性器に気を良くしたのか、波多野はふと身を屈めた。

「なに、を……っ!やっ、そこ、だめっ!」

這わせた舌が突起をざらりと撫で上げ、吸い上げる。食んで含んで吸い上げれば、己1人では決して得られない快感に思考がショートしたように千歳はただ嬌声だけをあげ続けた。
小刻みに震える下肢を押さえつけて、突起を咥内に含み舌先で転がせばあっという間だ。熟れた膨らみを甘噛みしたところで千歳は肢体をしならせた。

「千歳」

名を呼べば、虚ろな瞳が波多野を写す。肩を上下させ荒い呼吸を繰り返す千歳に、波多野は全身がぞわりと粟立った。

千歳は生真面目な女だった。かの魔王の下で常に与えられる任を滞りなく遂行していく。その手並みは波多野達から見ても鮮やかで、化け物たる自分達と遜色ない程彼女は力量を備えていた。
彼女は完成されていた。凛とした佇まいは美しく、静謐な空気は目を惹く。魔王の下で真価を発揮する彼女はひどく美しかった。

無色透明、ただ魔王のためにそこに在る存在。

しかし、波多野は知っている。

「……波多野さん?」

言葉を発しない波多野に訝しげな声が投げ掛けられる。組み敷かれた千歳は、眉を顰めて彼を見つめていた。
透明で掴むことのできない玲瓏な君に、波多野は口付ける。逃げる舌を追いかけ掬い取り絡めれば、か細い肢体が緊縮した。
酸素を求めて強張った身体に楔を打ち込むように、波多野はぐっと下肢に押し入った。

「ンッ、ぁ!」

思わぬ刺激だったのか目を見開いた彼女は短く嬌声を上げた。ピタリと内部に収まった竿は脈打ち、ゆるりと動かせば収縮する膣壁に満たされる。
静かな律動すら悦を誘うのか、彼女は唇を真一文字に結んで耐えていた。その様子に波多野は口元を歪める。

知っている。波多野は知っている。
真一文字に結ばれた口元が意味することを、悦を堪える意味を知っている。
波多野はぐっと千歳の腰を掴むと、一等奥へと竿を入れ込んだ。唐突に差し込まれた雄の先が最奥に当たり千歳の腰が仰け反る。

「千歳」

うっとりと、恍惚な声音で波多野は千歳に色の付いた視線を送った。交錯した視線に目を見開いた千歳の相貌が愉快でならない。
目の前の、波多野を見る彼女はまるでそこに居るのが波多野ではないかのように僅かに狼狽した。

「波多野…さん?」
「……千歳」


ーー今、誰のことを想った?


くつりと喉を鳴らして笑みを浮かべてやれば、見開かれた瞳が揺れた。見えた綻びを波多野は見逃さない。
ズン、と腰を動かしながら波多野は囁く。

「俺に抱かれながら誰を見ていたんだよ」
「なっ、アッ、そんなこと」
「ないなんて言うほど馬鹿じゃないだろ、お前」
「っ!、んっ、ぁ、あっ!」
「千歳」

問いかけながらも律動をやめない波多野に応えることもままならず、千歳は噛み殺そうとする嬌声を零す。結合部から聞こえる艶かしい音が鼓膜を刺激し、一層波多野の雄を隆起させた。

波多野は、己に組み敷かれて尚抗う気を見せる彼女の視線の行く先を知っている。
その視線は嫌でも目に付いた。彼女の瞳の奥に灯るか細い劣情を知らないわけがなかった。波多野の視線もまた彼女へと続き、そして彼女の視線は波多野と交わることは決してなかった。
波多野は知っている、視線の行く先を、憂いを帯びた瞳が映すその背を。

だがしかし、それだけだった。
だからどうした、と波多野は一等奥深くに竿をねじ込んだ。

「やっ、ァア!」
「何も言わないならそれでも構わないけどな」

彼女の顔横に掌を付けば、ギジリ、と寝台が悲鳴をあげる。見据えたその瞳に映る己の相貌に自嘲しながらも波多野に止まることは叶わなかった。

「お前が見ている相手が誰であれ関係ない」
「波多野、さん…」
「お前の意思も想いも何もかも、どうでもいいんだよ」
「なに、を…」
「なァ、千歳」

そう、止めることなどできないのだ、彼女も己も。

「月のものの周期的に、今日はどうだった」

波多野が口元を歪めて見せれば、二の句を告げられないのか千歳は微かに口を開けるだけで言葉を発しなかった。否、発することができなかったのか。
何せ、波多野のその発言は疑問の体ではない。確信を込めたものだった。
絶望、恐怖、凡ゆる負の感情が入り混じった双眼が波多野を見ていた。

「や、だ。駄目ですっ、波多野さんっ、ん、あっ、やぁ!」
「何が駄目なわけ?」
「ひっ、アッ、そこ、だめっ、やだぁ!」
「好きだろ?奥も、入り口も。いつも善がってるじゃん」

腰を鷲掴み子宮口に亀頭を押し付ける。ひくひくと物欲しそうにうねる膣壁に口角を上げ波多野は彼女の中を攻め立てた。
水音と肌と肌がぶつかり合う卑しい音が部屋に響く。千歳の意思とは無関係に悦を求める身体はより多くの膣液を分泌させ、スライドするたびに潤滑剤となってより深く奥まで波多野の逸物を迎え入れた。
ごりごりと鈴口が最奥で左右に動き、とろりと先走りの液が擦り付けられる。

「やっ、奥、いやっあ、やだっ、アッぁ!」

涙に濡れ、悦に耐えながら波多野を拒み続けるその姿は彼にとって垂涎の的だった。欲しい、欲しい。手に入れたいという強い欲求に突き動かされて腰を振る。
崖っぷちで耐えている彼女を谷底に落とすためにはあと少しだ。

その心が誰のものであろうと、手に入れることは容易い。

「やめ、やっ、アッ…ひっあァ!」

ぐちんと奥底へと穿った熱が彼女の高みを誘発し、反った肢体からその快感の高さが伺えた。ひとつ果てれば、自ずと雌の欲求を満たすためより下降してくる女の象徴に波多野はニタリと笑んだ。

戻るつもりはない、戻れないところまで堕ちて、堕ちて、墜としてやる。

「千歳」

とん、と腹部を、子宮の辺りを軽く押す。
焦点の定まらない千歳に己の恍惚とした相貌を見せつけるように、視線を絡ませた。

「何回出せば良いと思う?」

ひとつひとつ、確認を取る作業をしながらしかし了承を得るつもりは毛頭ない。
ただ、今から行われる事象の確認を繰り返しながら、確実に彼女に植え付けるのだ、絶望を、恐怖を。確定している未来を。

ひっ、と微かな悲鳴を上げた千歳は化け物である矜持を振り絞ったのか、肢体を捩りなけなしの体力で波多野の胸板を押し返した。が、そんなものは波多野にとって無意味に等しい。
無垢な赤子の手を捻るようなものだ。
有無を言わせないひと突きを下降した子宮口に与えれば、快感の余韻が広がる千歳の肢体に更なる悦が叩き込まれた。
千歳の膣が再び収縮する。抵抗を見せたその瞳に再度見え始めた悦の色味に波多野は嘲笑した。

「千歳」

ねっとりと色を付けた声音で波多野は彼女を呼んだ。
そうしてひどく甘い声色を駆使しながら、絶望を添えていく。

「孕めよ、千歳」
「っ、」
「孕んで、産めば何処にも行けないだろ」
「い、やっ、いやぁっ!あっ!ァア!」

気持ち良い、駄目、やめて。
拒絶と愉悦の感情が入り混じり、大粒の涙を流しながら波多野の熱を受け入れる彼女の痴態が晒されていく。
波多野はひどく興奮した。女という覆しようのない性を受け入れた彼女の身体を犯す悦楽。言葉とは裏腹に波多野の雄を締め付け、子種を欲する自然的欲求とのアンバランスさが実に美しかった。

このまま、その心が壊れて、己の手の中に収まればどんな気分だろう。

どくんと波多野の雄が躍動した。最大に隆起した竿がより深く子宮口を押し上げる。

「アッ、あ、も…やだ、いや!アッ!」
「もうそろそろだから、な」
「っ!、や、やだっ、あっ、アッぁあ!!」
「千歳」

首を振り、なけなしの理性を振り絞るその相貌に内なる獣が牙を剥いた。
全身の血が騒ぎ、湧き上がる吐精感に抗うことなく波多野は彼女の奥底へとその精を吐き出した。
と、同時にその後頭部へ手を回し、荒々しく唇を奪う。肢体を抱き締め、まるで己の物だと主張するように腰を何度も打ちつけながら、咥内さえも犯した。
千歳の足が、ピン、と爪先まで伸びる。緊縮した四肢が物語るのは彼女もまた果てたということで、それを確認した波多野はそのまま腰を打ち付けた。

「んっ、んっ、ーーはっアっ、ひぁっ!アッ!」
「っ、はっ…まだ、終わってねぇぞ」
「あっ、やっらっ、もっ、だめっ、これ、だめぇ」

千歳は呂律の回らない舌で尚拒絶の言葉を紡ぐ。既に局部は波多野の雄を離してならないというのに、化け物としての理性だけはかろうじて己の内に留めているようだった。

壊して、墜として、手に入れる。
『既に壊れてしまった』波多野は、奈落の底へ彼女を引きずりこむ。

「足りねぇよ」

波多野は逸物を引き抜くと、ぐりんと回転させ、抵抗力の薄れた彼女の肢体を尻を突き出す形で組み敷いた。
千歳の視界に広がるのは皺が刻まれたシーツだけで、その耳朶を食みながら波多野の雄が再び、緩やかに挿入される。
膣壁を味わい、押し出そうとする圧を押し広げて行けば、正常位より深くピタリと腹の底まで竿は届いた。ぐちりと押し潰した子宮口に千歳が鳴く。

「アッ、や、深っいの、やっ」
「嘘つけ」

これから襲い来る悦楽に逃げ腰になる彼女に逃げ場など無い。
耳元で囁くと同時に、緩やかだった律動を早めて奥を抉った。

「ひっ、アッ!あっ、ん!」

熱を帯びた肢体はなすすべもなく、千歳は嬌声を響かせる。
結合部から僅かに溢れる白濁は潤滑剤となり、卑しい水音となって波多野の鼓膜を刺激した。

もっと、足りない。

「んあっ、アッ、やらっ、ンンッ」

快感の頂が続く女性が余韻に浸る間も無く果てるなど、もはや苦痛に近いものだった。これで彼女の膣が収縮するのは何度目か。
そうして、堪らない吐精感に波多野は抗うこともなく彼女の中に吐き出した。
何度も、何度も、己の欲望を具現化させるために。

彼女が精魂尽き果てる頃には、その局部は白濁に染まっていた。辛うじて意識の残っている瞳は虚空を見つめるだけで、四肢を動かす気力ももはや残されてはいなかった。

「千歳」

波多野は千歳と視線を絡ませる。千歳の定まった焦点が彼を認識する間も無く、波多野はその唇を塞ぎ丹念に舐めあげていった。

「ん、ふっ…っ!アッ、は、ぁ!」

びくん、と千歳の肢体が揺れた。
溢れるほど白濁が注がれた恥部に波多野の長く骨ばった指が挿入されたためで、再び覚醒した千歳の思考に波多野は刻み付けていく。

「孕むまで、だ。千歳」
「は、たの、さっ、アッ、…」
「千歳」


ーー壊れてしまえ。


歪んでいる己の心も、思惑も。
何もかもを飲み込んで波多野は彼女を求め続けた。


ーー


ママゴト遊び
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