田崎さんは意地が悪い。人の心の内、秘めたい感情、湧き上がる情動、欲望、曝け出したくない全てを暴こうとする。
ほら、今だってそう。

「なぁ、千歳。言ってよ」

わざわざ言葉として求めてくる。ねっとりと絡みつくような声が耳腔を犯し、ひくつく下肢に這わされた指は花弁をなぞる。ぷくりと熟れた秘豆を柔らかに弾いてはそう囁くのだ。

「今、どんな気分?」

逃げ道をなくすなんて小賢しい真似はしない。逃げ道を用意して、そこへ誘導して、その先で彼は待ち構えている。ほら、やっぱり俺の言う通りだろ、と言わんばかりの笑顔で彼は待っている。
なんて、タチが悪い。

「千歳、どうしてほしい?」
「んっ、アッ」
「何時迄もこのまま微睡む?まぁ、俺はそれでも良いけど」

嘘。良いわけがない。田崎さんはいつだってこうだ。ずっと決定的な刺激は与えずに此方の熱を昂ぶらせて、願えば最後、気をやるまで…時折、やった後まで私の中へと精を出し続ける。
穿って、擦って、押し付けて、何処までも私の中に侵入して、徹底的に壊し尽くすまで離してなんてくれない。
だから、嫌い。この、胡散臭い笑みと歯が浮くような台詞、決して想いなど一欠片も込めたいない怜悧な笑みも何もかも、彼の意地の悪さを証明していた。

「田崎さん、なんて…きらっ、アッ、ひあっ!」
「ん?俺が、何?」
「やっ、だっアッ!やめっ、擦っちゃ、だっ、ーーっ!」
「聞こえないなぁ」

あっという間に果てた肢体なんて関係ないと、田崎さんは私の中を蹂躙した。細長くしかし骨ばった指が膣壁を掻き回し、柔らかな指の腹で秘豆と内部を擦られ、もはや体のコントロールなんて効かない。
果てた身体に容赦なく更に強い悦を叩き込まれた。痙攣する肢体を押さえつけられて、更に強く深く要所を突かれたらもう霰もない声は抑えきれなくて、声なき声を上げてだらし無く口の端から水が漏れる。やめて、と懇願する余裕すら奪われて、ただ彼の思うままに肢体を弄ばれた。

「凄いね。痙攣して、涎垂らして、だらし無い。普段の千歳じゃないみたい」

普段の自分を彼がどう見ようと勝手だ。愉悦に溺れたその瞳に軽視の視線を遣れば、ひくりと喉を鳴らして田崎さんは、また私の肢体を弄り始める。

「なぁ、壊れてよ。千歳」
「っ、ひっ、んっア」
「今だけで良いから。壊れて」

水音も彼の声もが耳につく。壊れてよ、と絡みつく声で囁く田崎さんに首を振れば、くつりと喉を鳴らされた。
田崎さんは私を逃す気がない。迷路の中で抜け道を探す私を先で待ち構えて、最終的に、私自らが田崎さんの元へと帰ることを目的としていたように錯覚させるつもりだ。
あくまで私から、彼を求めないと終わらない。

「っアッ!んン」

ぐぷりと圧倒的な質量が膣を満たした。硬度を増した田崎さんの雄が入り口からずるりと奥まで入れられる。まるで自分の一部として彼を受け入れているようで、その現実は不快なのに肢体は正反対で。

「千歳、動くよ」

いちいち言わなくていいと言っても彼は聞かない。緩々と律動が開始され、私はなすすべもなく田崎さんの逸物に身体を支配される。彼の先走りと私の膣液が交じって潤滑剤となって、いっそう行為を激しくさせた。
水音がぐちゅぐちゅと響く。

「ふっアッ!ひっん!あ!ぁ」
「良い顔だね、千歳。物欲しそうな女の顔だ」
「なに、がっ、アッ!やっ、そこ、やだっ、」
「嘘つくなよ」

脚を大きく開かされ、上から体重を掛けて奥を抉られる。あまりの快感に明滅する視界で、それでも彼に白旗を挙げるのは己の矜持が許さなくて、ぐっと嬌声を飲み込んだ。
両の手で口元を覆い隠し、ニヒルに笑む彼への意趣返しだと下肢を力ませる。
唐突な締め付けに僅かに呻きを漏らした田崎さんの顔と言ったらーー

「気持ち、良さそうですねっ」

パッと口元を覆っていた手を退けて、皮肉に歪んだ口角を見せつけてやった。嗚呼、青臭い貴方を体現する不機嫌な様は愉快だ。

それでも、この後にどうなるかなんてことを予想できないほど私も馬鹿ではない。

「へぇ?」
「…っ、アッ!ひっあ!っあ」
「余裕そうなら、もう少し雑でも良いよね」

片脚を上げられてそのまま、一気に、ひと突き。息が詰まったと認識する間も無く、更にひどく乱雑な、マスタベーションでもしているかのように田崎さんは腰を動かした。
より奥に、より深く、腹の奥底まで届くような悦にもう言い返す余裕なんて私にはなくて。
それを確かめたかのように、田崎さんは体制を変えて今度は背後から私を攻めた。

「アッ、おくっ、やっ、あっ!ァア!」
「よく当たるだろ?千歳の入り口、気持ちいいよ」
「っ、アッ、やっん…っ!!」

耳孔を犯され子宮口を潰され、胸の突起を摘まれて呆気なく私は達した。
それでも田崎さんの腰は止まらず、達したままの身体にその悦はただの暴力でしかなくて、

「やっ、だっ!田崎さ、んっアッ!」

そう。壊れてよ、と言った彼の言葉通りなのだ。彼は私を壊すまでやめる気はない。逃す気もやめる気もない。
ぐっと押し込まれた竿にまた達してしまって、止まらない律動に果てる回数も増えてきて、朦朧とした意識を覚醒させるように時折与えられる強い刺激に何もかも犯されていく。
達した身体に力が入らなくて、ぐるりとまた身体を彼の方へ反転させられた。

「千歳」

まるで恋人に語りかけるような甘ったるい声音と共に深く口付けられて、また思考が微睡む。
田崎さんの声と、息遣いと、汗ばんだ肢体に下肢に感じる雄。全てが自分を食していると考えると、ぞわりと背筋が粟立った。

「やっ、も…やだっ、むりですっ」

これ以上は無理だ。警報音が鳴り響いている。私の本能が警告しているのはこの男の本質、その異様さと恐ろしさだった。
このままでは、壊されるものかという自負を打ち砕かれ、私が私でなくなってしまう。

それでも、田崎さんは止まらない。

「無理じゃないよ」

ぐちりと奥を擦られ、身体がしなる。田崎さんの竿は尚、私の中を蹂躙することをやめない。

「ひっ、あっ!やだ、だめ、アッ」
「言ったろ?壊れてよ、千歳。壊れて、求めて、それでさ、」


ーー孕んでみてよ。


まるで、さも当たり前の願いのように田崎さんは曇りのないまなこと微笑を湛えてそう囁いた。その相貌はひどく美麗で、一片たりもそこに狂気など見せてはいないというのに、腹の底から彼は狂っていた。
狂っている。馬鹿げている。過ぎったのはそんな言葉だというのに、口から出るのは彼を煽る声だけだった。

「アッ、だめ、だめっ!壊れちゃ、やっ、やだっ、ァア!」

何も考えられなかった。
いつまで続くか分からない性交、ひたすら打ち付けられる竿に思考が追い付かない。どうすれば、何をすれば、答えの出ない迷路を彷徨う暇すらもう彼は与えてくれない。

「千歳、気持いい?」


ーー嗚呼、もうダメだ。


「……気持ちいい、のっ、アッ!あっ、おくっ、気持ちいいのっ」


気持ちいい。気持ち良い。欲が収まらない。自制の心を殺して、私は縋って鳴いた。みっともなく腰を振り、竿を求めて、だらしがない女と後ろ指さされるような痴態を彼に晒した。

一等奥に穿たれた竿の先から白濁が注がれる。その感触すら気持ちよくて、田崎さんに口付ければ律動を加えられながら咥内を犯される。
そうして熱が引かないうちに、田崎さんは私を休ませることなく、精を注ぎ続けた。
注がれるたびに田崎さんの物となり、自分が壊されていくような感覚に陥った。

「千歳、可愛いね」

私が鳴く度に田崎さんはそう言った。
けれど、うっとりと、恍惚に濡れた瞳が私を映していないことを私は知っている。

田崎さんは意地が悪い。


「その顔、凄く好きだよ」


化け物としての矜持を持っている私と、今の私の対比を愉しんでいる。
その対比を作り出した己に、田崎さんは愉悦を覚えている。
壊す悦び、犯す悦び。私が壊れていく様、犯され悦を懇願し、田崎さんの物となる私が『可愛い』と。

「ねぇ、千歳」

ぐちり。精を貯めた腹に、新たな孕みを与える為の律動。


「ずっと、壊れていてよ」


瞳に堕ちた暗闇から、逃れる術はない。



ーーー



人形遊びは終わらない

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