お誘いの手助け
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目の前の私の友人も、そんな曖昧で不明瞭な理由でなんとなく一緒にいるようになったので、人間は意外と単純だと思う。
というわけで、人間は男女構わず一目惚れをするものだというのが私の見解で、さらに言えば、それはー
「ちーちゃん、どうしよー…三好君また誘えなかった」
……一目惚れとは、厄介、なもので、堂々巡りのこの悩みを漏らす友人の話を聞いてしまうほどには厄介だった。
「どうしよーもないんじゃないかな」
「そんなー!ちーちゃんお助けだよ!」
「専門外ですねー」
「そんなぁあ」
この世の終わりだぁあ、なんてじたばたする友人、わかはここ最近ずっとこうだ。この世の終わりが何度来ればいいんだろうと呆れを通り越して逆に興味すら湧いてくる。
恋煩い。わかは只今患っている真っ最中だった。
その相手が、眉目秀麗な優等生の三好君と来たものだからわかのこの反応はある意味当然なのかもしれない。男版高嶺の花といえる三好君は多くの女子にとって恋愛対象というより寧ろ崇拝対象だった。目鼻立ちの整った顔はもはや彫刻、陶器のような肌は女子顔負け。よもやそんな三好君に落ちるだなんて思いもしてなかった。
というのも、その当の本人三好君のお話も私は聞いているのだ。
「カップルのフリしてアイス食べに行こうだなんてバレバレじゃん、そんな勇気ないよー」
スライムみたいに机にへばる友人を撫でながら、彼三好君のことを考える。あの子もあの子で、似たようなことを考えているからこの2人は結構いいカップルになると私は思ってる。
顔を合わせれば両者こんなへなちょこな姿は見せない。好意なんてありません、と言わんばかりに三好君はツンとクールビューティに、わかは男友達と接するように何事もなく2人の時間は過ぎる。
「ちーちゃん…助けて欲しいなぁ、なんて」
ちら、と突っ伏した状態から視線だけを寄越すわかは正直可愛い。くりんとした瞳、ちょっとおどけた感じだけど真面目な時は真面目。ちーちゃん、と私に話しかけてくれる姿は妹のようだけど実際はわかの方がずっと良く私を見てくれてる。
妹のようなお姉ちゃんのような、ふわふわしたわかに私はとても弱い。
「なんか考えてみるけど、わかも頑張りなよ?」
「ふふ、ちーちゃん大好き」
「はいはい」
ふにゃりと破顔するわかはやっぱり可愛い。
※
「で、考えてみたんだけどさ」
「ダブルデートねぇ…」
秋空のもと、家路へと着く。陽が落ちるのが早くなるこの時期、隣の彼は家の近くまでいつも送ってくれる。途中までは一緒の方向だけれど、それからは全くもって方向は違う。にも関わらず、帰りが合う時にはこうして律儀に送ってくれる。ありがとう、と言っても「俺がしたいからしてるだけ」て言って、まさにデキる男。でもちょっとくらい隙を見せて欲しいと時々思う。
「千崎」
「……あ、え、なに?」
「だから、ダブルデート」
「あ、うん。えっとね、」
ダブルデート。私が考えているのは、あの2人と私達を交えたデートだ。
遊園地とか黄色い声が飛び交う場所は三好君が嫌うだろうから、静かな場所で2人きりで楽しめるところ。
「水族館、とかどうかな?」
「まぁ、テーマパークよりはマシなんじゃね?」
「三好君、煩いところ嫌いだからね」
行こうと言っても真顔で間髪入れずに、嫌だ、という姿が目に浮かぶ。逆にほら、クラゲとかぷかぷか浮いてたら黙ってじーっと眺めそう。あ、それじゃあデートにならないか。
…いや、わかならそれでも楽しくやってくれそう。
「けど、お互いが来るって分かってたらあいつら腰引けそうだよな」
「……なら、分かってなければいいんじゃないかな?」
にっこり波多野君に笑みを見せたら、ぱちりと瞬いた後波多野君は悪い顔になった。
「面食らったあいつらの顔見るの楽しみだな」
そんな悪い顔でさえカッコいいんだからこの人はずるいなぁ、なんて思ったり。
ダブルデートで三好君とわかがどんな反応を見せてくれるのか。寧ろさっさとくっついてくれたら御の字だけれど、このデートはあの子達のためでもあり、でもー
(……私だってずるいなぁ)
友達をダシにさせてもらっている。
ちらりと波多野君を見てまた前を向いて、自分の軽薄さを感じつつも蓋をした。だって、最近時間合わなかったんだもの。
「……久しぶりだよな」
「え?」
「どっかに出掛けるの。最近、部活の都合とかで合わなかったろ?」
そんな私のつまらない言い訳だって、波多野君は見抜いてるみたいで嗚呼本当にずるい。悪い顔もできるし、こうやって優しく微笑むことだって出来るなんてどうして波多野君はこんなにずるいんだろう。
「……楽しみだね」
「そうだな」
絞り出した言葉は陳腐だけれど、波多野君は手の温もりと一緒に応えてくれた。
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