08:Aohar and dazzling.
「——で? ダッシュでこっち向かって来てたのに電車内で事件起きたせいでこんなに遅れたって?」
「うっす。そうっす」
「……今度、オレと一緒にお祓い行くか?」
13歳の少年に心配される20歳って、絵面的に犯罪臭したりしないのだろうか。いやまあ、俺見た目は若々しいから多分大丈夫だけども。
ちなみに現在時刻は夜の19時である。待ち合わせ? ……夕方の18時だったと思うな。ハイ。
事件起きたあと即座に今日会う約束をしていた人——黒羽快斗君、基快斗君に連絡したからそこまで怒られたりはしなかったものの、普通に心配された。主に事件の遭遇率に関して。
「ま、怪我もなんもなかったんで大丈夫ッスよ。今から夕御飯急ぎで作るけどご指定ある?」
「ならいいけどな〜? あと、その件だけど実は昨日青子がカレー作ってくれたからさ、それをアレンジして欲しいなって思っててさ」
おっとまさかの展開。お隣に住んでる幼馴染ちゃんお手製のカレーがあるらしい。本当仲良いよなこの二人。アオハルをしていて微笑ましいことこの上ないので、末永く幸せになって欲しいものだ。
あ、そうそう。今更だけど実は俺、未来の二代目マジシャン怪盗と年の離れたお友達として交流があったりするのだ。きっかけは彼が9歳の時にとある事故(に見せかけられた事件)が起きようとしたことから。その時の一件から交流が始まり、色々あって身を隠して生活している彼の父親や海外で生活している母親の代わりに、こうして時々俺が夕飯とかを作りに来ているのだ。
とは言っても、今回のように彼の幼馴染が前日夕飯を作っていたりする場合もあるので一から作ると言うよりかは、一から作られた物をアレンジする、という方が圧倒的に多かったりするのだが。そういう時はだいたい約束の時間が大体18時とかだったりして、割と余裕を持って彼の元に行くことが出来たりする。
一から作る時は大体16時から17時のどこかで約束をするので、わかりやすいのだ。
ちなみに今日はカレーをアレンジして欲しいらしい。カレーをアレンジ、となるとだいたい無難なのはカレーうどんとかなんだろうけど……それだと結構ありがちなので今回は別のものにしよう。
例えば……彼の幼馴染ちゃんが昨日多めに炊いておいてくれたご飯を使った料理とか。
作り方はとても簡単。
まず、冷蔵庫に保存されていた昨日炊いたご飯をレンジで軽く温める。その時並行してカレーを火にかけて軽く温める。
温めたらグラタン皿にご飯をいい感じに入れて、その上からカレーを乗せる。カレーを乗せたら次はピザ用のチーズをいい感じに乗せて、その上にスライスチーズを一枚か二枚並べるように乗せる。
あとはトースターでいい感じの焦げ目がつくまで焼けば——あっという間にカレーチーズドリアの完成である。
トースターで焼いている間にきゅうりとキャベツと大根をパパーっと切って、ツナと和えたらサラダも出来上がった。スープは玉ねぎをスライスにしてコンソメを入れたら出来上がり。スープカップに入れた後、パセリを振りかけたらオシャレになるし香り付けにもなる。
「うん、我ながら完璧」
カレーチーズドリアはカレーもドリアも好きな子供にもいいと思うんだよな。だって好きな物と好きな物を合体させた料理だから。それにカレーうどんでもいいけどご飯炊きすぎて困るって場合は、カレードリアをすれば解決する。消費したい食料があるのにうまく生かせず困っているってことも無くなるって訳だ。
グツグツと音を鳴らしながらいい感じに焼けているチーズドリアを運び、机の上に並べる。時間が時間なので、もう随分とお腹を空かせていたのだろう。その瞳は年相応の少年の輝きを放っている。キザっぽいセリフを放ったりする快斗君だが、美味しいご飯を前にするとまだまだ幼い子供なのだ。
彼は頭がいいし、その分察しも良くて達観している。その上今は彼の両親は海外にいたり身を隠していたりしている為、現状はほぼ一人暮らしそのものだ。彼の両親が頼み込んで、幼馴染の父親や幼馴染が面倒を見てくれているらしいが、それでもやはり範囲は限られてきてしまう。
幼馴染ちゃんの父親は警察らしいし、そうなるとまあ忙しさも違ってきてしまうだろう。
俺は別に、彼の親じゃない。親になろうとも思わない。かと言って兄でもない。でも、少しでも彼が寂しくないようにこうして約束を取り付けて料理を作る位なら、血の繋がりがない人間でも、書類上の家族でもない人間でも、できることなんだと思う。
料理は、すごい。人と人を繋げる力がある。美味しい料理があれば、笑顔になれる。……一人よりも、誰かと食べられたら、なおのこと。
どうか彼にも、その幸せを味わっていてほしいのだ。なかなかそれを味わえない境遇なのは分かっているけれど。やっぱり一人の料理人としてはそう願ってしまう。
「……快斗君」
ハフハフと、熱々のカレーチーズドリアを堪能している快斗君に、俺はにっこり笑う。
「今度、幼馴染ちゃんにも料理を提供するんで、みんなでご飯、食べましょ」
「!」
俺の発言に彼は目を見開いた。驚く彼に、俺は細くするように言葉を付け足す。
「みんなで食べた方が、ご飯は美味しいっす。それに……俺も君の幼馴染ちゃんの手料理には興味があるんで。あ、もちろん恋愛的な意味では大丈夫っすよ。人の恋路を邪魔するほど性格歪んでないんで」
「!? ふぁっはふへひっふぇふふぁ!?」
「あれ、気付いてなかったんです? 君が幼馴染ちゃんの事を話す時、好きな人のこと話している顔してたっすけど」
そう言ったら今度は顔を真っ赤にされた。いやはや、青春である。
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