03:Shopping with handsome men



《え? 家が爆発して包丁諸共住む場所が無くなった? まぁ大変。でもどうするの? 今通っている高校からだとこっちからは距離があるわよ?》
「あ〜、そこはなんとかなりそうだから大丈夫。でも包丁が……包丁が死んでしまったのでできたらお金を、と思いまして……」
《あらそうなの? なら安心ね。あとお金に関しては問題ないわよ。こう言った場合は仕方ないもの。包丁もだけどその様子だと研石や教科書とかもよね? 全部まとめて翼ちゃんの口座に入れておくから、また確認してちょうだいね》
「! ありがとう……!」
《いえいえ。こっちはまだ夜のお客様の分の仕込みがまだだから切るわね? それじゃあ、また電話ちょうだい》
「は〜い、ほんとにありがとう!」

 ツー、ツー、と音を鳴らしているスマホの画面と俺を息ぴったりに交互に見ている大人二人に笑顔でダブルピースを向けた。

「いぇ〜い、許可ゲット」
「……君の親、緩いね?」
「緩いっていうかこれはある意味放任してるんじゃねぇか?」

 残念どちらもハズレです。電話ではあんなことを言ってたけど、あの人(というよりあの両親達)がそんなあっさり終わらせるわけがない。諸々落ち着いたと二人が判断したら抜き打ちで来るつもりだろう。
 一人暮らしをする時だって一悶着どころか何悶着もあったんだからそれくらいは分かる。俺ってば愛されてるぅ。ちなみに家賃は親持ちである。そうじゃなきゃあんな高そうなところ住めねぇって。

 あ、そうそう。あの後萩原研二改め研二さんと二人で下まで降りた俺は、流れで研二さんの同期の一人である松田陣平改め、陣平さんとも自己紹介をしあうことになった。
 流れで俺が通っている学校から実家が遠いから一人暮らしをしていたこととかも話したら、研二さんが「じゃあ俺の家にしばらく住むといいよ〜」と提案してくれたのだ。
 衣食住どうしようと結構困っていた俺からしたらありがたい話でしかないので即座に承諾、その後親に連絡して色々と話をすることになって——そして今に至るわけである。

 正直順序が逆な気もするが、うちの両親はそういう所はあまり気にするタイプではないから問題なかったりする。

「まぁ、住まわせてもらう代わりに料理や家事はしますし、バイト探して生活費も払うんで。というかうちの両親はそれを俺がするって分かった上で許可くれた様なものですしね」
「翼ちゃんは信頼されてんのね」
「歳の割にしっかりした考え持ってんのはそういうことか」

 それは多分影の記憶があるから精神的にも今の年齢よりも大人っぽい考えができたんだと思います。とは言えないので、へにゃりと曖昧に笑って誤魔化すことにした。
 確かに、周りの同世代達よりかは大人びていたり多少しっかりしていたりするという自覚はまああるので。否定はしなかった。ははは。

 ま、言っても俺の周りの友人達もちゃらんぽらんとかいう訳ではなくて比較的他の人達よりもしっかりしているとは思うので、あんまり実感は湧いていないけれど。類は友を呼ぶってやつだろうか。

「正直食事とか作ってくれるのは万々歳なんだけど、生活費とかは大丈夫だよ?」
「えっ」
「俺大人だし、それなりに稼いでるし。警察学校卒業したばっかとは言え、貰うものは貰ってるからね」
「いやそれは申し訳がないと言いますかなんと言いますか……」
「ま〜ま〜、ここは甘えといてよ。ね?」

 そう言ってパチリとウィンクを向けてきた研二さんに思わず心臓を抑えそうになるのをグッとこらえる。うわ顔がいいとかも言わないようにグッと堪えた。いやだって、顔がいい。
 影の記憶によると警察学校組と呼ばれる集団の中でも女子に一番モテていたらしいし、いざ実際見ても顔がいいのは何となく分かっていたがそれを上手く活用してのウィンクを向けられたらそれがなおのこと際立っていて心臓に悪い。

 研二さんでこの感じなら同じくらい顔が良いトリプルフェイスのあの人にウィンクをされたらやばそうである。今のうちに研二さんで耐性でもつけておこうか。トリプルフェイスのあの人にウィンクを向けられる日が来るのかは知らないが。

「……じゃあ、お言葉に甘えて」
「うんうん、それでよし! じゃあとりあえず……」
「とりあえず?」
「俺達にご飯作ってくれない? ちょうどあの仕事終わったあと飲みに行く予定だったんだよね〜」

 陣平さんが付け足すように「材料代はもちろん払うからよ」と言われたので即座に了承した。タダより高いものはないんだよ。こういうことはありがたく貰っておくべきだって、うちの両親が口酸っぱく言ってたんでな。
 
 とりあえずスーパーにでも行こうか。と提案してくれた研二さんの言葉に頷き、比較的品質が良くてお財布にも優しいスーパーに連れていってもらうことになった。ふむ、子芋とか買おうかな。
 あれ作りたいって思ってたんだよな、"きぬかつぎ"ってやつ。"きぬかつぎ"って言うのは子芋(里芋の親芋の周りについてる小さい芋のことを"子芋"って言うんだ)を皮付きのまま茹でたり蒸したりする料理のことで、これがま〜美味しいことこの上ないのだ。

 俺は基本的に蒸して調理しているけれど、蒸す時に子芋がコロコロ転がらないようになるべく座りがいいほうを残してその反対側を切り落とす。そんで蒸す。
 これの蒸す時のポイントだけど、強火で蒸すよりも弱火で長時間掛けて蒸すほうが個人的に美味しく感じるし甘みが出てくると思う。多分それは水から蒸しているからなんだけどな。どの温度帯で長時間かけて蒸すかは企業秘密である。

 さすがにきぬかつぎだけだと腹の足しになることは確実にないので、ここはいくつか別のものも作ることにしよう。研二さんいわく近いうちに買い出しに行こうと思っていたから冷蔵庫には特に何かある訳でもないとのことなので、一週間分の食材もカゴに入れていく。
 そんな俺の姿を隣とその隣からまじまじと見てくる研二さんと陣平さんに、世のおばさま方からの視線がすごく向いている。さすがイケメンである。

 あ、ちなみにスーパーへは研二さんが車を運転してくれました。車があるのいいな、俺も将来は免許取ろうか。

「翼ちゃん、結構野菜とか入れてるけど何作るの?」
「それは秘密っすね」

 こういうのは秘密にしといたほうが楽しみが増えると思うので、ニッと笑って答える。俺の実家の料亭だけなのかもしれないけど、どの食材を用いてどういう料理が来るかは完成して提供されるまでのお楽しみというスタイルをよく見ていたから、というのもあるんだけれど。
 実家は会席料理メインでやっていたので大体どんなものが出てくるかの順番位は、店に足を運ぶお客様も分かっているのが大半なのでそこら辺はまあ楽しみも何も無いとは思うが。どんな食材を用いたものがどういう盛り付けで出てくるのか、という楽しみはみんなあると思う。

 ま、今日は別に会席料理を作るわけではないんだけどな。作るなら食材一つ一つをちゃんと自分で目利きして新鮮なものを選びたいし、そうなるとスーパーよりも市場とかに足を運ぶほうが効率的にはいいと思うし。

 なんてことを考えつつ、野菜とかが入ったカゴを乗せたカートを押して歩いていく。調味料はそれなりにあるらしいのでスルーしたし、あとはメインになるものでも買えばいいか。メイン、メインなぁ……焼き魚はなんか物足りないんだよなぁ。あと一押し欲しい、みたいな感じだからなぁ……あ、そうだ。

「研二さん、陣平さん」
「ん?」
「どうした、なんか取ってきて欲しいもんでもあるのか?」
「いや、それは大丈夫なんスけど……二人は肉とか好きですか?」
「好きだな!」
「好き!」

 どうやら余程好きだったらしい。二人息ぴったりで食い気味に言葉を返された。
 イケメンの迫力、こわ。




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