愛妻的食卓事情

有名コスメブランドのKunoIchiの新作アイシャドウとリップを買った。

2つの買い物で500両の出費は中々奮発したと思うが春の新作のピンクゴールドのシャドウはどうしても欲しかったし、桜色マットリップはトレンドだとChanChanが特集を組んでいた。

次の女子会に持って行こうと意気込む。デート用に春のワンピースも欲しいな、なんて。浮かれながら歩いているとついつい寄り道してしまう。

例えば元大名護衛だったくのいちが営むメロンパンが名物のパン屋だとか、忍刀で肉を切るパフォーマンスを見せてくれる肉屋だとか。砂の商店街も凄く賑やかになったものだとつくづく思う。仕事が無くなるのは厳しいが世の中が平和なのは良い事だ。

「アムちゃん先生!」

アカデミーで私と夫が交代で傀儡を教えている生徒が遠くから手を振ってくれる。すかさず私も手を振り返すが、こうも懐かれると教え甲斐があるものでついつい私も甘やかしてしまう。

そうしてようやく今日の夕飯は何が良いかなと商店街の青果店付近を練り歩く。鍋がいいかな、2人で同じ鍋を突くのはやっぱり凄く"夫婦してる"って気持ちになる。

ぷくぷくと沸騰する鍋を見つめながら下らない近況報告して私の嫌いな長ネギを夫の方に寄せるの。ちょっと奮発して金のラベルのビールを私のお小遣いから買ってあげちゃう、私だけ化粧品だとか贅沢するのは申し訳ないもの。

50両のビールと15両の発泡酒、いつもお疲れ様。

キムチ鍋にしよう。豚肉と白菜ともやし、それから隠し味に味噌とバターとちよっとだけヨーグルトを入れるのが赫百足流。甜麺醤で煮詰めたスープに油で炒めた豚肉と白菜ともやしを入れるの。

味噌を溶かしながらバターを1欠けら。そしてティースプーン1杯分のヨーグルトを入れて30分弱火で煮詰めていく。どれだけ疲れていても夫のくしゃっと鼻の上に皺を作るあの笑顔で全部吹っ飛んじゃうから私も明日からまたお仕事頑張れる。

多めに作って幸蚕に持って行こう。私ってば出来る義姉だから義妹夫婦にもそういう気配りできちゃうのよ。幸蚕は最近ようやく卵焼きを上手に作れるようになったわ、私直伝の甘じょっぱい奴。次は砂肝の柚子胡椒炒めとか教えてあげようかな。

幸蚕ってば私が料理を作る度にまるで魔法使いのような言い回しをするから面白くなってついついお節介してしまう。

タイヤン先輩は最近どうなったのか、今晩夫に聞いてみようかな。幸い、夫は最近バキさんの近くで仕事をしているらしいから。
正直、タイヤン先輩の手料理を毎日食べられるバキさんが羨ましかったりする。タイヤン先輩の創作料理は本当に美味しい。私も負けじと頑張らねば。


そうこう考えながら帰路に着くとあっという間に着いてしまう。

時計を見ると15時半、ああ丁度良い時間だ。すっかりぎゅうぎゅうになった手提げを足で持ち上げてポケットから鍵を探す。

ウサギのキーカバーがついた其れを我ながら器用に鍵穴に刺してドアを開ける、ああ彼の匂い。今日も愛する夫を待ちながら「今日はどんな話をしようか」とネタを練りつつ私は夕飯を作る。