会いたいよ



パウ。可哀想な私の弟。

パウ。あなたは生まれた時からとても愛らしく、大きくなればなるほど美しくなった。
誰よりも綺麗な弟。
皆から可愛がられて、愛されたあなたを羨ましいと思うし、誇らしいと私は思う。
あなたが笑えば皆が笑う。
あなたが話せば皆が聞き惚れてしまう。

神様に愛されたあなた。

だけど、だけどどうして神様は、あなたにこんなに悲しいものまで与えたのかしら。


パウ。あなたの居場所はいつもベッドの上。
強い風に吹かれれば、たちまち熱を出してしまうほど弱い体。
歩くことすら、数分で足が悲鳴をあげてしまうためにままならない。
太陽の光すら、あなたには痛いものなのでしょう。

可哀想なパウ。

だから私はあなたに外の話をするわ。
あなたが退屈しないために。
あなたが新しいことを知るために。
あなたが、少しでも色んなことを好きになるように。

パウ。私の自慢の弟。
私の可愛い可愛い弟。
ずっと隣にいてあげるって約束するわ。

だけど、ある日知らない人が両親に話を持ってきた。
あなたの病気を治療するって。
遠い、遠い、ずっと離れた町にお医者様がたくさん集まる場所があって、色んな人達がそこで元気になるのだって。

あなたも元気になれるのかしら?
私や、他の人のように外を駆け回れるようになれるのかしら?
自分の力で、大好きなものを見つけられるようになるのかしら?

だったら、私はわがままを言わないわ。
離れるのは寂しいけど、また会えるから。
だからバイバイしたの。馬車に揺られて遠くなる弟に手を振ったの。

パウ。別れる間際に約束したね。
あなたが病気を治したら、それまでの間に私が見て、聞いて、感じたものの話をするって。
だから私、沢山のものを見るわ。あなたが喜んでくれるように。
そのために決めたの。
私はこの町を離れるわ。

この町は素敵だけど、あなたに沢山の話をするには、私は町を見すぎている。
でも、外なら全部が初めてだし、大きな街ならもっともっと沢山のものを見られるはずだから。
お父さんやお母さんに止められたけど、あなたの為なら私は止めない。


パウ。私の可愛い、自慢の弟。
聞いて、私ね戦う人になったのよ。
剣を片手に誰かを守る仕事をするのよ。
かっこいいでしょう?当たり前じゃない。

だって私は、あなたのお姉ちゃんなんだから。
あなたの為に、お姉ちゃんは色んなものを見るね。

だから、早く元気になってね。

会いたいわ。パウ。
私の弟。




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