二人の変化(高校編)
「おい!!どんだけ待たすんだよ!!!」
「あ、ごめんねかっちゃん」
あれから私達は共に雄英高校に進学することができた。かっちゃんが、私を迎えに勝手に来ては待たせたことに対して怒られるなんて構図はいつもと変わらなかった。故に高校では私すぐにかっちゃんはDV男、そして私は弱味を握られる可愛そうな女というレッテルを貼られていた。帰り際に新しくできた友達と他愛もない話をしていると物凄い勢いで教室の扉を開けたかっちゃんに賑やかだった教室が静まり返った。今すぐにでも暴力を振るいそうな私達を今までちょっかいかける勇者はいなかった。クラスメイト達が怖じけついて心配そうに見守る中、急かされながら支度をしてかっちゃんの方へ足を運んだ。
「さ、帰ろうか!」
「うるせーし、おせぇ」
中学とは違うことはかっちゃんが私に対して触れることが多くなった。私が半歩後ろを歩いて着いてくるのが定番だった。しかし進学してからのことである、とある日に学校から離れてから手を差し伸べられた。これに対して最初はお菓子でも欲しいのかとお気に入りのアメを上げたら大層立腹して無理矢理手を握られた。所謂恋人繋ぎだ。それからというものこうして登校するのが定番となっていた。これくらいの接触なら大丈夫だということにホッとした。今日も私がかっちゃんに手を差し出すとかっちゃんは無言でその手を握ってくれた。
「相変わらず、肉体からの接触ならあまり抵抗がないようだね、私」
「っ!紛らわしいこと言うな!」
「何を考えてるのかしら、かっちゃん」
どうやら私は言葉で好きだの愛しているだのの受け入れはまだできない。故に手を繋いで帰った日に少しずつ体の接触からゆっくりと馴らしていくことにしたのだとかっちゃんに宣言された。手を繋がれた直後は体が硬直したが今は慣れたようであまり抵抗なくできる。それもそのはずだった。私から握ったからだ。
「死ねやいっぺん!」
「私ね、好きみたい」
「…は?」
「かっちゃんとこうしてるの」
私は握りしめた手をかっちゃんの目の前に見せた。
「…お前、それって」
「好き、かっちゃん」
「おま?!!」
「あ、言えた」
「お前、」
顔を赤くしたかと、思えば次は怒りで顔が赤くなる。相変わらず表情豊かだななんて、思っていると拳骨を喰らった。痛いなぁ。自分から好きだなんて昔なら言えなかったのにね!しかし先に言われたかっちゃんは気にくわないようだ。
「んて、お前がそれ言えて俺が言えねぇんだよ!」
「…先に言いたかった?」
「悪いかよ。まだどうせ無理だろ、それは」
「…うん」
しかしやはりかっちゃんからの言葉だけは何回か試したが無理だった。それはまだ私は完全には克服できてはいないという証だった。
「少しずつで構わねぇ」
言葉をかけるかっちゃんに私は笑って返した。
「でもね、もしかっちゃんに、好きな人ができたり私のことが嫌いになったりしたら言ってね。その時は頑張ってちゃんと離れるようにするし「そんなこと頑張らんでいいわ!!」
かっちゃんが私の頬に手を触れた。途端に私の体は硬直した。それに気づいたかっちゃんはほっぺをつねった。痛い。
「…お前のこと、嫌いになるわけねぇ」
そんな事恥ずかしいから言わないでよかっちゃん。
でもごめんねかっちゃん。私はまだ人から触れられることに慣れていないみたい。こうして繋がれる指も触れられることにも私にはまだ怖くて堪らないときがあるの。かっちゃんならたぶん気づいてると思うけど手を繋ぐのは最初はかっちゃんからだったけどあとは私からだった。それは言葉と一緒で私からのアクションは可能であるも他者からのアクションは無理だからだったから。更にいうといつも付けてろと言っていたネックレスも付けられなかった。付けたら息切れが止まらないからだった。それは私がまだかっちゃんを、受け入れられていないことの証明だったけどそれらを言えていない。これらの事を全部引っ括めてかっちゃんに一言ごめんね、と謝ると無視された。その代わり繋がれた手を包み込みそっぽを向いた。これはかっちゃんにとっては肯定の意味だ、しかし安堵は出来ない。
どうにかしないと、ヤバいと体が叫んでいた。
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