負けとトラウマ
「かっちゃん、帰ったの?!」
「う、うん。それがね…」
かっちゃんが負けた、あの自尊心の塊のようなかっちゃんが負けた。大事なことなので二回言った。
もともと今日はヒーロー基礎学があるから遅くなるかもしれねぇからはよ帰れと言われていたが委員会で遅くなったので迎えにきたのだ。その時に両手に三角巾を付けたデク君に遭遇したので実技が終わったのだろうとかっちゃんが何処にいるのか聞こうとしたら帰ったらしい。連絡入れ忘れてたのも悪いけど。そしてもう一度言おう、かっちゃんが格下といつも豪語していたデク君に負けた。そしてかっちゃんとは入れ違いになったとのことだった。。
「そうかぁ」
「お、怒らないの?」
「何で?」
「だって、」
「かっちゃんと正々堂々と勝ったんでしょ?私はデク君を応援しているからね。」
「え」
「デク君!手はもう大丈夫なん?…あ、爆豪彼女さん!」
「麗目さん、」
「はっ!まさか!デク君が爆豪君を負かして泣かしたのを問い詰めに?!これにはふかーい事情が、」
「ちょっと麗」…なん、だと。かっちゃんのあの悪徳顔から涙だって?!デク君!それはまことか?!!」
「…僕に聞かないで、(やっぱり彼女は否定しないんだ。ということはそういうことなのかな?)」
「こうしちゃいられない!かっちゃんが泣いてる姿をカメラに焼き付けなちゃいけない!!さらばだ!」
「ちょっと、あたりちゃん?!」
「爆豪君の彼女さんて変わってるね、」
その後1Aの間では爆豪の彼女はドSで彼氏の泣き面フェチで爆豪は隠れドMという噂が流れることとなるが気にしないことにした。困ったかっちゃんも可愛いからね。
私が自分のアパートに戻ると鍵が開いていた。中に入ると合鍵で中で入ったであろうかっちゃんがソファーにうつ伏せに寝ていた。
「あの、かっちゃん?」
「…」
「無視?無視なの?」
「…るせぇ。おせぇぞ」
かっちゃんはうつ伏せのまま覇気のない声で言った。
「委員会で遅くなったの。もしかしたらかっちゃんいないかなぁってクラスデク君聞いたら帰ったって言ってたから急いで帰ってきたの」
デク、という言葉にかっちゃんは過剰に反応した。それから反応がなかったから私は鞄を置いてかっちゃんが横たわるソファーの下のカーペットに腰を下ろし、かっちゃんの泣き面を見ようと顔を覗かせるも完全にうつ伏せのため顔が見えなかった。仕方ない、
「たかが一回デク君に負けたくらいでそんな意地になってなくたって…どんだけ自尊心の塊なのかっちゃん」
「…んで知ってんだよ!」
負けたことを話題に出すとかっちゃんは飛び上がった。かっちゃんと目が合う、もう泣き止んでいるようではあるが少し目元が赤かった。
「迎えに行ったらクラスの人が教えてくれたの、うららさんだったかな?知ってる?」
「…しらねぇよ!クソ!まじまじこっち見んなや!」
「ぐぅえええ!!」
かっちゃんはソファーから体を起こして私にチョークスリーパーをかけてきた。やめて首マジで締まってるからと、私はギブギブ!!とかっちゃんの腕を叩いてるとその力が緩み気づけば後方から抱き付かれている構図となった。
「か、かっちゃん?」
「…うるせぇ」
耳元で囁くように暴言を吐いてかっちゃんは私の肩に頭を置いた。チクチクした髪が顔に当たって痒い。
「あ、う」
やめてくれ、とかっちゃんに言おうとした矢先にかっちゃんは私の首に、噛みつき吸血鬼みたいに吸った。初めての感覚に私は変な声が出た。
「……」
「か、かっちゃん?」
「ん」
「やめ、て」
止めてと言うつもりで首を動かし見上げるようにかっちゃんを見たと同時に首から口を離し目が合う。無表情だった。たぶんネックレスしてない気づいたのかな
「…あたり、」
「…え、と」
「黙ってろ」
「……っ」
かっちゃんにそのまま正面から抱き締められた。私はかっちゃんの肩に顔があたり制服からニトロの甘い匂いがした。愛されているということはこういうことなのだろうか。しかし胸元に胸が痛い、息切れがする。気持ち悪い、目眩がする。この症状に心当たりがあった。自分の体がかっちゃんを拒絶しているのだ。離れなければかっちゃんが私からの離れてしまうそんな気がしてならない。早く、早く!
「…かっちゃん、」
「…黙れ死ねや」
「えー、大丈夫よ、かっちゃんの強さもかっこ良さも可愛らしさもみみっちさも全部引っ括めて好きなんだからっ」
「可愛らしさってなんだよ!」
かっちゃんは私を叩きてから蹴飛ばしてきたので離れることができた。やはりトラウマは克服はできていない。愛されていると感じてしまうとこうして逃げてしまう。あれだけ努力するって言ったのにね。これでは駄目だ。平然を装いとりあえずトイレに行くために私は走った。かっちゃんの顔を見ることができなかった。
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