女と警察と万事屋と仕事


女の買い物とは気づいたときには大量になり両手に運べなくなることもある。それほどに金がかかりまた物も多いのだ。特に私という人間は買い物というものがめんどくさく酒さえあれば大丈夫なのだがやはりそうとはいえど定期的に買い物ブームというものが訪れる。その際の反動は大きく欲しいものすべてを買うためには人手が必要であった。助手である零はその月のもののような私の異変を察知し女のところに逃げた。そのために駆り出されたのは万事屋だ。金払ってるんだからきっちり働け。


「桃子ちゃーん?まだ買うの?いい加減にしてよ?大丈夫だってこんなに今買わなくっても逃げないと思うよ?地震でも来るの?ねぇ!」

「うるさいわね。欲しいものは買うのよ。」

「いやいやいやだからって着物に下着に医療品まではわかる。文献って何?!本屋の一棚買い占めるなんて馬鹿じゃないの?!トイレットペーパーじゃねぇぞ!!」

「あぁ、だから荷物持ち頼んでるんだけど?」

「だからって一回で運べる量じゃねぇぞ!!」

「誰も一回でなんて言ってない。一日で済ましてね。あー優しい私」

「お前の家までどれだけかかると思ってんの?!往復一時間以上かかるんですけど?!!」

「今は主人と下僕の関係よ。ほら三回回ってワンっていってごらん」

「誰がするか!!俺だってこんな事なら引き受けることなかったんだぞ!!悟空だってこんな修行しねぇぞ!」

「悟空馬鹿にするな、悟空だってチチの荷物持ちしてるの見たことあるぞ。ビルみたいになってたし、それ見たかったし」

「結局それが見たかっただけじゃねぇか!!」

「なんの騒ぎだ…ってまたお前らかよ。デートか」
違うと否定しようと声のする方に顔を向けた。その先には土方さんだった。どうやら私のストーカーではなく本当に見回り中だったようだったのでここまでの経緯を聞いてもらうことにした。

「万事屋、いつも威張っているけど負けるべジータみたいに情けねぇ奴だな。俺だったらこの量くらい朝飯前だ」

「誰ができねぇって言ったよ。俺はこの量じゃあ魔人ブウがチョコ光線で人をチョコにするくらい簡単だから!」

「お前らは馬鹿か?例えが分かりにくい。もっと分かりやすくしろよゆとりでもわかるようにな。…そうだな、あしたのジョーとか巨人の星とか」

「そっちの方が古いわ!何?お前最近まで地球にいなかったからお前の中のアニメ歴そんな遅れちゃってるの?!むしろ俺たちより後退してるよ!」

「まじでか」

「というかお前ら知り合いかよ」
銀時が私に言った。

「まぁ、この人私のことよく追いかけてくるから」

「あらやだ、ストーカー?マヨネーズぶら下げてこわーい」

「マヨネーズ関係ねぇだろ?!あとその言い方やめろ!コイツがグレーな事してるからだからマークしてるだけ!」

「こんなに焦っちゃってまぁ、図星かしら」

「コイツ、マヨネーズとニコチンまみれだから気をつけろよ」

「マヨ(ニコ)チン?新手のAV?」

「やだ、おぞましー」

「黙って聞いてりゃお前らまじで逮捕するぞ!」
土方さんが渾身のツッコミをした直後に前方から女性の悲鳴が響いたら。何事かとその場に足を運ぶと顔面蒼白で倒れている男の名前を泣き叫ぶ女。回りの人間は野次馬のように何もせずにその光景を見守っている。腹が立ったので野次馬の隙間を押し退けて二人の元へ近づいた。

「どうしたんだ」

「お医者様ですか?!急に意識なくなってしまって返事がないんです!」
パニック状態の女を制止させ、私は男の症状を見ることにした。

「呼吸が荒くバイタルも不安定だ。この暑い時間にチアノーゼに意識障害、右半身の異様な筋脱力に腱反射消失。脳出血の可能性があるな。早く病院に行った方がいい」
懐から私は携帯を取り出し倒れた彼の頭を写真を撮ると、脳内が写る。これは宇宙で発明された簡易レントゲンと言ったところ。そこには硬膜下血腫の所見があった。広範囲での出血であるため緊急手術が必要な状態だった。

「そんな、この人と今籍を入れたばかりなんです!なのに、こんな」

「…」

「おい」
無言で立ち上がる私に土方さんが声をかけた。言いたいことはわかっていた。

「目の前の助けられる命があるのに動かない医者がどこにいる?今からオペをする。時間がない。銀時、土方さんこの人を私の家に運んでくれ。頭を揺さぶるなよ。」
私の指示に素直に二人は従いパトカーに乗せて急ピッチで走った。その途中に零に電話をかけて準備をさせた(こういう時にだけきっちりしている)。何事もなく家につき二人にまた男を担いで部屋のベッドに横たえた。準備万端な零以外を部屋から出させ、私達は無菌服に着替え零から渡されたメスを握る。血の臭いがした。


「さ、土方さん。終わりました。何処ぞにでも連れていって」
血腫を取り除く手術は無事に成功し予め呼んでいた救急車で大きな大学病院に搬送された。早期発見だったため後遺症もないだろう。大丈夫といった時の女の安堵した表情がとても印象的だった。女の境遇は私の現状と違うにもかかわらず何故か私に似ているものを感じた。…結婚、か。そうかあの人達は今から幸せになるはずなのに離れ離れになるという境遇に自分と重ねてしまったのか。馬鹿らしい、ついかっとなってしまった。

「おい桃子」
銀時が私を止めるように声をかけたが私は彼を止めた。とうとう捕まるのか。零はなんとでもなる。実はアイツは医師免許持ってるから罪を問われても私に騙されていたというだろう、それでいい。傍らで心配そうに見ている零に私はそう声を出さずに言った。


「あんたはそれでいいのか?」

「あの状態で救急車を待ってる方がリスクがあった。当然の事をしたと思っている。それに見逃せなかった。彼らの未来を傷付けるのは」
私の言葉に土方さんはため息をついた。

「俺は今回アンタが多額の金を請求したり、実際にこの目で手術したことを見ていない。こりゃあ証拠になんねぇよ。」

「…」

「だが今回だけだ。次は必ず無免許オペと詐欺で捕まえてやる」

「ふふふ、ありがと」

「あれ?先生に惚れちゃったんですか?土方さん駄目ですよこの人け…」
仕事以外は口も軽い零に私はマラクラッシャーをお見舞いした。その数ヵ月後に後遺症なく結婚式上げてるハガキと大量の酒が届いた。二人の晴れ舞台に私は笑みを浮かべた。

- 10 -

*前次#


ページ:



ALICE+