女と助手とは


最近の江戸はやや物騒で人斬り似蔵とかいう奴が現れているらしい。そいつがいるせいで夜に出歩く輩がいれば殺されてしまう事件が今後を絶たない。もちろ真撰組も動いているが手がかりは今だないとニュースで言われているのを見た。夜に酒をのみに行く人間からすれば実に腹立たしい限りである。そういうことをされると夜を出歩くことができないからだ。仕方ないので渋々と家で酒を飲んでいると玄関先で物音がしたので目をやった。

「先生!」

「んだい零、…って小太郎?!」
零が家の外で声を上げた。嫌なか予感をしながらその場に向かうといたのは血まみれの小太郎とそれを抱える零。こいつからの情報では先ほどニュースでみた人斬り似蔵にやられたとのこと。すぐにベッドに小太郎を寝かせ止血をした。バイタルも問題なく出血の割には傷は浅いものだろう。流石といったものか。
零から人斬りは元攘夷戦争時代の英雄を狙っていたらしい。小太郎が動けるまではこのまま身を隠している方がよいと判断した。
治療が終わり私は零に問いただした。

「何でわざわざ物騒な夜を歩いていたのかな?」

「…ふ、女に振られて散歩していたんです外を」

「ふーん」
零は誤魔化すのが晋助とよく似ていて下手だった。コイツは恐らく鬼兵隊で私の護衛兼監視係なのはわかっていた。急に私の前に現れて弟子にしてくださいだなんて馬鹿しかしないことをやってのける奴だ。怪しいしかない。しかしコイツに、たまに晋助の面影を見ることがある、だから私は側に置いている。私も馬鹿らしい。
普段女がいると外に出るなんて当たり前だが何か事件があったりすると必ず家から出ない零。しかし今回は外にいた。私が推測するに人斬りとやらは鬼兵隊の一人で、反乱か独断で動いているのだろう。とはいえ恐らく晋助がこんなこじんまりとした作戦するはずがないのでこれはその人斬り個人の仕業。それを止めるために動いていたところ小太郎が斬られていたのだろう。

「零、」

「な、何ですか」

「お前は嘘を勉強したらどうだ」

「な、何の事ですか」

「さぁ」

「っ〜、とりあえず先生は一応攘夷だったんですから外に出ないでくださいよ?!」
…お前、誤魔化すのはいいが、私が攘夷戦争に参加してたこと何で知ってんだよ。やはり爪が甘い奴だ。


後日銀時が家に来た。どうやら失踪した小太郎を依頼されて探しているらしい。巷では桂が人斬りに斬られたと噂で持ちきりだからだろう。

「知らないわ。それよりも前貸した千円返してくれない?」

「今は仕事だっての!次だ次に倍にして返してやるよ!!」
ギャンブルにでも行く気かコイツ

「そ、小太郎は大丈夫よ。回復力も人並み以上だし。それより人斬りどうにかしてくれない?夜に酒を飲みに行けないんだけど」

「そうかい」

「あ、依頼一つ頼めないかしら」

「んだよ」

「もし晋助に会ったら殴っといてくれない?」

「……あー。おう。」
銀時は頭をかいて曖昧なというかめんどくさそうに返事をした。そして言った。

「嘘が下手だな相変わらず」

「…わざとだ。早く行きなさいよ。忙しい」
零と一緒にしないで欲しいわ。私はわざとそう言っている。何時誰が小太郎を庇っているなんて聞いているのかわからないのだ。言う訳にはいかない。だが銀時にはこれでわかっているはずだ。あとは頼むことしよう。

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