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「月の様な、綺麗な琥珀色の瞳をした女じゃった。
静かに、慎ましやかに、それでも確かに輝いて、いつもわっちを、この吉原を日輪と共に照らしてくれた。
初めは単なる庇護欲だったのかもしれない。空の青さも陽の光も知らずに、ただ吉原で生きていく事しか知らない儚に、それ以上不自由な思いをさせたくないと。
それでもいつからか愛し、また愛されたいとも願った。それが叶った時は本当に幸せで、儚と過ごす時間は何より大切で。
…でも、わっちは儚を信じる事が出来なかった。いつでもわっちだけを愛してくれた儚の言葉を、信じてやれなかった。傷付け、突き離し、そして…この手で…。
名前を呼ぶ事も、抱き締める事もせず、小さな身体をただ冷たく貫いた。
まだ残っている。あの時の感触が。幾度となく優しく抱いたのに、それより、あの時の感触が残っている。笑顔より、泣き顔しか思い出せない。
…いつか、一緒に月を見ようと約束した。太陽の下で散歩をしよう、雨の降る日には一つの傘をさして歩こう、と。
何も、叶えてやる事が出来なかった。それを叶えるどころか、この手でその全てを奪い、」