ふとした時に襲う、どうしようもない程の独占欲。
他の男を綺麗な瞳に映す事すら嫌で、怖くて。
だって、本当に恋焦がれた人だったから。
こうしていつでも触れられる距離に居ても、その現実離れした美しさも相俟って夢みたいで。
好きで好きで堪らない、どこにも行ってほしくない。絶対に離したくない。
そんな思いから加虐心すら抱くようになってしまった事に気が付いたのは、いつだったか。
「なあユリさん、」
『っ、ん…?』
真っ白な首筋に埋めていた顔を上げて見つめると、潤んだ瞳がベッドサイドのランプの仄かな灯りを反射させて煌めいている。
光を取り込みやすい大きな瞳は、それなのに奥底に暗さを孕んでいて、それもまた魅力的で。
艶やかな髪を撫でて唇を重ねる。
柔らかい唇を割るように舐めると、ぴくりと肩を揺らした後に素直に口を開いた。
どれだけ深くキスを交わしても、何度身体を重ねても、足りない。身体も、心も、もっともっと深い場所にある何かも、全然足りない。
どのくらい唇を重ね合わせていたのか、名残惜しく離すと、ユリさんは肩で息をしていた。
「俺の、俺だけですからね。俺だけの、ユリさん。」
『か、ずまくん…っあ!』
首筋や鎖骨、胸元に、噛み付くように吸い付いて痕を残す。
なんだろう、この感覚。
頭の中心と後ろがぼんやりとして、脳みそも目の奥も溶けそうで、暑くて熱くて。
ユリさんの前に付き合っていた人達とも、真剣なつもりだった。
この人とずっと一緒に居たい、言葉だけじゃなくて本気でそう思える人と付き合ってきたし、そのつもりで大事にしてきた。
だけどどうしてだろう。ユリさんと出逢ってから、それまでがまるでお遊びだったようで。
確かに真剣だった、愛してもいたはずなのに。
一緒に居たい、離したくない。そう思った事はあっても、あくまでもそれは綺麗な感情だった。
ユリさんに抱くそれは、同じはずなのに似ても似つかない。こんなにドロドロとした気持ちを、俺は知らない。
ユリさんと居ると、この上なく満たされる。こんな風に触れなくても、ただ同じ空間に居るだけで癒されて、穏やかになれる。
だけどその一方で、言葉や触れ合いじゃ満たされない何かが、確実に存在していて。
不意に、その枯渇して仕方が無い何かに取り憑かれるようにユリさんを求めてしまう。
それは俺で、だけど、俺じゃないみたいで。
ユリさんを壊してしまいそうで怖くて、いや、違う、壊してしまいたいんだ、本当は。
ユリさんを雁字搦めにする記憶やユリさんを脅かすもの、そしてユリさんが考える俺以外の事全てを、壊したい。
そして粉々になったユリさんを、幸せで綺麗な景色と、俺の存在しか知らないユリさんとして再生させたい、なんて。
『…っ、か、ずま、くん?』
俺の長い前髪を掻き分けたユリさんは、くるっとした瞳を蕩けさせて覗き込むように見上げてくる。
きっと俺の顔は酷いものだろう。欲という欲に塗れて、理性なんてカケラも灯していない。
余裕を持って優しく触れたい、こんな幼稚で情けない感情なんて見せたくない。ずっとそう思うのに、そう出来た事なんてあっただろうか。
「…可愛い、好き。」
俺を見上げる顔があまりにも可愛くて、見慣れてるはずなのに胸の奥が掴まれて苦しくなる。
何よりも大切な、愛しい宝物。どうしたらユリさんを俺だけのもんに出来るんやろう、心の隙間なんて、埋め尽くしてしまいたい。