俺たちは、不思議なくらいによく合った。そう、本当に、不思議なくらい。

恵まれている分普通じゃない人生を送る中、表現できない虚しい部分を確実に埋め合える、そんな人だった。一瞬で惹かれ合って、着実に愛を深めて、長く一緒に居た割には多くの時間を共有することは出来なかったかもしれないけれど、確かに幸せだった。

深く深く、重たく、激しく、身を滅ぼすほど彼女を愛していた。
彼女を愛し求める事で何かが壊れてしまうとしても、それで構わないと思っていた。本望だとすら。

今思えば幼く拙かったのかもしれない。それでも、この先どんな人と出会おうとも、彼女以上に好きになれる人は存在しないと言い切れる。それほど、俺の全てで。

別れは予想もしていないタイミングで、そして俺達の意思の届かないところで決められた。もう会うなと言われた時は頭が真っ白になって、それから暫くの間は死んでしまいたいと思っていた。
彼女と過ごすようになってから、彼女が居ない人生なんて考えた事がなかった。だから、慎重に振る舞っていたつもりで。
それでも、世間に広まって根も葉もない事を好き勝手に言われ、まるでそれらが真実のように拡散されてしまった俺達の関係は、終わらせるしかなかった。

何度も、何とか連絡を取ろうと思った。だけど、彼女は俺との事が報道された直後、イベント中にで俺ファンに襲われて、腕に大きな怪我を負ったと聞いた。その時の彼女の恐怖や痛み、あの真っ白で綺麗な肌に痕が残る程の傷を負わせてしまった事を考えると、二度と関わらない事が彼女の為だと必死に気持ちを押し殺した。

あの時意地でも彼女を離さなければよかったと、今でも思う。例え死に物狂いで掴んだこのステージを手放してでも、俺には、この世界には、彼女が必要だったから。


彼女が死んだ。

自ら命を絶った。

それは俺達が別れて2年が過ぎた頃。あまりに突然の訃報を、俺は世間よりほんの数十分だけ早く知った。
あんなに近くで一緒に過ごしたのに、何より大切だったのに、その知らせを聞いたのは一体何番目だったのだろう。

彼女の葬式に行く事を許して貰えた時、不覚にも怒りが湧き上がった。
今じゃないのに、もう、遅いのに。
どうしてあの時、あんな形で無理矢理俺達を引き離したんだ。俺達にはお互いが必要だった。彼女の繊細で脆い心を知って支える事ができる人間は、決して多くはなかった。こんな事になってしまった今では、彼女はもう、苦しみを吐露して涙する事も、誰かと幸せを分かち合って笑う事もできない。

年末の特番で彼女の所属するグループのステージを遠くの席から見る以外では、直接目にする事は叶わなかった。
やっと会えた愛しい彼女は、血の気を失ってもなお美しくて。
久しぶりに会った彼女の両親から渡された一枚の紙に書かれていた一言を見た時、心が無くなったかのように出なかった涙が、溢れて止まらなくなった。



ジョングク、愛してる。



たったそれだけ。たったそれだけに、ひどく胸を締め付けられた。
彼女の全てが詰まっている事が分かった。ああ、彼女はずっと変わらず俺と同じ気持ちでいてくれて、そして俺よりも辛い状況に何度も追い込まれて。どんなに苦しかっただろう、何度1人で涙を流したんだろう。