撮影の現場、待機席、客席、どこに行っても聞こえてくる私への批判の声。

こうなる事なんて覚悟していた。だけど現実は、覚悟していた以上の、またその以上。
私を受け入れて応援してくれる人達の笑顔が大好きで、宝物で。そんなに心強いものはないと本気で思うのに、たった一言の鋭い言葉で簡単に心が割れる。

BTSが、オッパ達が、ARMYが大好き。それ以上に大切な物はない。
だけど、怖くて堪らない。自分の心も身体も、自分のものではないように感じる。



「ユリ、あーん」


『ん…。ありがとう。』



グクが差し出してくれたホットドックのパンの端を齧ると、眉を下げて私の頭を撫でた。
それすら飲み込むのが苦しくて水で流し込んで、込み上げる吐き気を必死で抑え込む。

まともなご飯なんてもう暫く食べていない。点滴や処方されたサプリでどうにか誤魔化しているけれど、当たり前に体力は落ちていて、満足いくパフォーマンスも出来なくて。
オッパ達が心配してるのも、このままじゃダメなのも分かってる。だけど、心も身体も、言う事を聞かない。

リハーサルを終えて局の廊下を歩いていると、ひそひそと聞こえてくる声。
私の肩を抱いて笑いかけてくれるテヒョンオッパに力無く笑い返して、気が付いたら楽屋の前。



TH「ユリ?」



先に楽屋に足を踏み入れたテヒョンオッパが、動かない私の名前を呼ぶ。

顔を上げると、大好きな皆んな。
ジンオッパ、ユンギオッパ、ナムジュンオッパ、ホソクオッパ、ジミンオッパ、テヒョンオッパ、ジョングク。

私を受け入れてくれた、暖かい人達。
私はただ皆んなが、この場所が大切なだけなのに。



「ユリ!!」



どうしても皆んなの中に入る事が出来なくて、逃げるように背を向けて走り出した。





辿り着いた局の裏口で座り込む。
いつの間にか頬を伝っていた涙を拭う気力すらない。

メンバー皆んなそれぞれ、本当に凄い才能を持っていて。
贔屓目なしに見ても素敵なグループなのに、私が居る事でグループ自体に触れない人達がどのくらい居るのだろう。
私のせいで皆んなまで変な噂を立てられて悪戯に揶揄われて、それでも、文句ひとつ言わずに可愛がってくれる。
分からなかった。迷惑しか掛けていない私が、ここに居ていい理由が。

消えたいと本気で思う瞬間を何度乗り越えてきただろう、だけど、もう本当に限界だ。



「ユリ、」



澄んだ声で名前を呼んだのは、練習生の時から私を救ってくれた私の片割れ。
蹲ったまま顔を上げる事も出来ない私を包んだ温もりは、きっとジンオッパ。



HS「ユリ、顔上げて?」



優しい声にゆっくりと顔を上げると、苦しくなるくらいに優しく微笑んだホソクオッパとユンギオッパが居た。



NJ「もう今日は収録ボイコットしちゃおっか。」


『そんな…』


NJ「ふふ。ねえユリ、歌は好き?」


『…好きです。歌もダンスも、ARMYも、大好きです。』


TH「オッパ達が抜けてるよユリ!」


JM「好きに決まってるじゃん、ねえユリ?」


『はい…』


JN「やー、ユリ、オッパもユリが大好きだよ。…だからユリ、俺達は世間の声じゃなくて、ユリを選んだんだよ。」


『っ…』



珍しく真面目な瞳で見つめてくるジンオッパに、また涙が溢れてくる。



YG「…俺達は、お前が居るここが好きだよ。」


HS「うん。ユリが居てこそのバンタンだよ?」