暗いものに飲み込まれるような感覚と同時に、身体中を這うものの感触に吐き気を覚える。
飛び起きて、混乱する頭が怖くて、転がり落ちるようにベッドを出てデスクの中を漁る。
見つかったカッターの刃を出して手首に当てたところで、頭に響く声。
俺と一緒に、生きていってほしいんだ
まるでプロポーズみたいなその言葉が嬉しくて、真っ直ぐに私を見つめる切長の瞳が愛しくて。
私も貴方と生きていきたい。私が生まれてきたのは貴方に出会う為だったと、心からそう思えた。
広斗と過ごす未来を、信じていた。
『っ!…、』
疑いもせずに、穏やかな未来を描いていた。
もう戻ることはない暖かい時間達は、終わってしまってもなお私を生かす。
骨を突き破って出てきそうなほど大きく速く響く鼓動。荒い息で喉が痛くて、額や首筋には冷たい汗が滲んでいる。
震える手で開けた引き出しの1番奥。小さな黒い箱を開けると、未だにあの時の感情が鮮明に蘇る。
『…っ、ひろ、と…』
広斗、広斗
会いたい。ただ、貴方に会いたい。
どうしてこんなことになっちゃったんだろう、あの日、それでも貴方の背中を追いかければ良かったのかな。
臆病な私はそれが出来なくて、ただ蹲るだけだった。
私がもっと強かったら、今も貴方の隣に居ることができたのかもしれない。
『っと、ひろと…、ぅ…っ』
会いたい、会いたいよ広斗。
私、今でも貴方が、
こっちに来い、そうしたら、救ってやる
『っ…!』
脳裏を掠めた青髪に、震えた体も呼吸も一気に止まって頭が冷たくなっていく。
力の入らない身体で姿見の前に行って、後ろ向きにへたり込む。
パジャマのボタンを外して片腕だけ抜いて鏡を見ると、背中を染める赤が目に入る。
こんな身体じゃ、広斗に抱き締めてなんか貰えない。あんな風にしているけれど、彼はまっさらで綺麗な人だから。
会いたいなんて、思ってはいけない。そんな資格はない。
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