煌びやかな灯りが華やかであればあるほど、自分自身の穢れを思い知らされているようで。
光が強いほどに影も濃くなるとはよく言ったもので、この街では眩い輝きを放つ人が大勢いる一方、私みたいな逸れ者も多く息を潜めている。



「今回のターゲット、コハツココロ。」


『…女?』


「男。」



目の前の''雇い主''がテーブルに投げるように放った写真を手に取ると、金髪の男の横顔が写っていた。



『これだけ?』


「3週間張ってそれだけだってさ。」


『へえ、若そうなのにキレるんだ。』


「最近じゃ珍しいよな。」



ここらの連中気が緩みまくってんだろ、まあ、俺らからしたらありがてえけどな。

そう言って口角を上げたその人はマグカップの中身を啜ってスマホを触り出した。
中身はきっと、シロップやキャラメルがドロドロに溶けたカフェラテ。顔によらず甘い飲み物が好きなこの人は、どんな雰囲気の時でもそれを飲む。
昔はそれがなんだか気に食わなくて、ひと口飲むのを見る度に舌打ちをしていた。



「今アジト送ったから。」


『ヤサは?』


「この辺らしいけど、そこからは。」



片眉を上げて首を傾げる仕草に思わず溜め息を吐く。



『…臣くんさあ、あいつのこと甘やかしすぎじゃない?』


「壱馬も壱馬で頑張ってるよ。あいつの腕が確かなのはお前も知ってんだろ?それだけそいつがキレるってことだよ。」


『ふ、壱馬のやつ悔しがってんじゃないの』


「余計なお世話や。」


『うわ、出た。』



音も無く部屋に入ってきたそいつは、いつもの番犬のような雰囲気をぼかしてどこかしおらしくて。
珍しい様子ににやにやする私を睨むと、''雇い主''基臣くんにぺこりと頭を下げて私の隣に座る。

臣くんは、金さえ積まれればどんなことでも請け負う、裏社会の所謂何でも屋で、私と壱馬は臣くんの元で働いている。
壱馬は主に、臣くんが受けた仕事の情報収集と殺し以外の仕事をしていて、私は殺しの実行を担当することが多い。

私と壱馬は同じ養護施設の出身で、言わば幼馴染。2人とも里親と折りが合わず非行に走っていたところで偶然再会した。
その頃からお世話になっていた臣くんに壱馬を紹介したのも私。壱馬は出会ってからというもの臣くんに懐ききって、彼の前ではまるで子犬だ。



「名前は恐らく本名、歳は21で、左手首に刺青が入ってる。」


「21?思ったより更に若いな。」


「主に薬の売人やけど、まあ割と手広くなんでもやってるみたいです。」


「手汚すの早えなあ。面良さそうだし、ホストでもやってまともに生きてりゃよかったのに。」


『それはアンタらもね。』


「なにユリちゃん、臣くんの顔好み?」


『ふ、さあね。』


「おいユリ臣さんに失礼やろ、」


『あーはいはい、じゃあね。』



キャンキャンと吠え出した壱馬を横目に立ち上がると、揶揄うように笑っていた臣くんが優しく目を細めて手を上げた。



「臣さんあいつのこと甘やかしすぎですよ、もっと…」



壱馬の言葉に笑い声をあげた臣くんと同じく、吹き出しそうになりながら扉を閉める。

臣くんの言っていた通り、壱馬の腕はそこら辺のやつとは一線を画している。本人もそのプライドはあるし、加えて臣くんに心酔して忠誠を誓っている。
私達がヘタを打ったところで、名前に傷がつくのは臣くんだ。ああしているけれど、こいつの情報を上手く集めることができなくて内心落ち込んでいるだろう。

さっさと片付けで、飲みにでも誘ってやろう。
そんなことを考えながら写真をもう一度見てポケットにしまった。