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彼女の最初の印象は、なんと言うか、よく分からない子だな、といった感じだった。

顔も体も整った造形をしているのに、光を取り込みやすそうな大きな瞳にはまるで感情が写っていなかった。
俺を追いかけてくるのに、好意に似たものを感じるのに、彼女にはいつも見えない壁を感じていた。



『先輩、彼女さんのどこを好きになったんですか?』



だから、彼女、ユリが俺に珍しく質問をしてきたと思えばそんな内容だったのも、意図が読めなくて妙に思った。



「彼女?」


『この前迎えに来てた』


「あぁ…。アイツ彼氏居るよ。」


『は?』


「俺たち幼馴染なの。」


『…でも先輩はあの人の事、好きでしょ』



ああ、嫌だなあ。
愛しくて堪らなくて、大嫌いなアイツの顔が過って、いや、ずっと頭から離れてなかった事に気が付いて、イライラする。

俺とエリは、小さい頃から一緒に居た。いつから好きだったのか分からないくらい俺の世界はエリだけで、エリもそうだと思っていた。
だけど違った。俺にとってのエリと、エリにとっての俺は、あまりにも違いすぎた。それが分かってからも俺はずっとエリの事が好きで、どうしようもないくらいに好きで、それはもうホント、誰かに助けてほしいくらいには。



『どんな気持ちなんですか、彼氏居るのにあんなのって』


「そんなの俺が知りたいよ」



幼馴染は、カウントされないんだってさ。そういうのに。

そう続けると、少し離れたところに座る彼女は綺麗な形の眉を顰めた。そう言う顔、するんだ。



『…良いように繋ぎ止められてるだけじゃないですか』


「まあね。でも別に良いよ。」



そんなのとっくに分かってる。こんなのだってもう何度目かで、それでも諦めきれないんだから、もう仕方がない。
エリの居ない人生は、無理だから。良いようにでも関われるならそれで良いと、ずっと前に心に落とし込んだ。

まっすぐにこちらを見てくるユリの視線が嫌に気まずくてギターに顔を向けたままでいると、近付いてくる気配に顔を上げた。



「…、」


『私、ウォンビン先輩の事が好きです。』


「…だから?」


『…私で、あの人の事忘れてください。』



何もかもが意外だった。
ユリがこんな大胆な行動をするヤツだとは考えた事もなくて、だから、彼女から重ねられた唇も、現実味が無くて。



「人の気持ち利用するとか、無理だよ俺。」


『先輩だって利用されて、』


「だからだよ。そっち側の気持ち、分かるから。」



だから、ごめん。
そう言うと、静かに目を伏せて笑った顔が忘れられない。



なあ、あの時、俺がお前の気持ちに応えてたら、どうなってたの?
お前は本当にそれでも良かったのかよ。お前が好きだって思う人間にまで搾取されて、その方が幸せだった?
多分あの時の俺が、既にギリギリのところに立ってたお前を崖から突き落としたんだろ。

ごめん、ユリ。
ちゃんと考える事が出来てたら、分かってたはずなのに。

俺もお前の事が好きだって。